【書籍購入】白バラ

今日もネットで買える本をちょっと紹介します。
 
 
『白バラ Century Books 人と思想』という本で、これが戦時中にもっとも危険な反ナチ運動をした若者たちの記録を詳細に追った評論で、読んでいてヒリヒリする内容なんです。ゲーテやハイネを愛読していた青年たちで、当時ハイネはユダヤ人出身だという理由で禁書に指定されていた。
 

 
白バラは、当時ぜったいにやってはいけないナチス批判の活動を匿名で行っていったんですけど……。その活動はおもに、学生たちがビラを撒くという方法で行われていた。その白バラの中心人物たちの愛読書というのがなんだか衝撃で、老子とかハイネとかゲーテとか、自分がいま愛読しているものばかりで、けして反戦主義的傾向があるわけではない。
 
 
とくにゲーテは政治家でもあって戦争の勇ましさを描く著書も多い。ナチスは主戦か反戦かという概念を越えた人類史上最大に危険な、人種の絶滅を公言した組織なので、とうぜん反対をしなければならない。けれども、もうナチスが全権を掌握したのちの時代の話しなので、ナチスへの反対意見は即死刑に結びついた時代なんです。それを判った上で白バラは、匿名でナチス批判のビラを撒いていった。
 
 
ハンス・ショルはもともとはナチスの一員であって、反ナチ活動さえしなければナチスに殺されることはなかったんです。
 
 
Century Booksは思想書であり伝記であって、映画や劇のようにダイナミックな物語を書こうとはしないわけなんです。ところが実話自体が驚くべき事態の連続だったわけで、学術的で詳細な纏め方がかえってこの現代史をリアルで臨場感のある物語にしている。いっきに全文を読んでしまいました。史実を書いているから、結末がどうにも言えずもの悲しい。学者が書いた本なので、派手な演出が無いんです。それがかえって、そこに生身の人間が居るように感じられて、すごい本だと思いました。
 
 
この時代に、反ナチスの政治活動に挫折した人々があまたにいます。サルトルは、戦時中にナチスに抵抗しレジスタンス活動を行い、戦後にそのことを振り返って、「たった一言」なにかナチスについて批判しても「十人や百人の逮捕を引き起こすには十分だった」(立命館法学/2000年6号より)と当時の危機的状況を記しています。
 
 
哲学者ウィトゲンシュタインはヒトラーと同じ学校に通っていたことがあって、家族もユダヤ人だと言われてナチスにさんざん苦しめられてきたのに、日記にさえもほとんどまったくナチスについて書くことが出来なかった。唯一ナチス関連で残っているウィトゲンシュタインの記録には、虐殺が激しかった時代に、イギリスの大学の同僚に青い顔をして「ぼくはユダヤ人だったんだ」と告白した、という事実くらいしか見えてこない。哲学者も沈黙するしか無かった。そういう時代に、盛んに反ナチを訴えた白バラのリーダーは、いったいどういう青年だったんだろうかと思って読みました。
 
 
白バラについては、wikipediaにも記事が記されているので、興味のある方は読んでみてください。それで……こういう危険極まりない時代に、表現者ってどうやって生き残ったのだろうと思ったんですけど、なんとあのムーミンを描いた作者がですね、反ナチ運動をすると仲間も自分もことごとく死刑にされた時代に、ほとんど同じような反ナチのビラを作って飄飄とこの時代を生きていた。
 
 
ムーミンの作者もじつは、白バラみたいに、反ナチのポスターを作ってたんです。比べてみると白バラよりももっとナチスを具体的に根本的に批判している。ユーモラスな気配さえ漂っているポスターを見て「これって当時はとてつもなく危険な表現だったのでは」と思いました。すごいユーモアに溢れた、風刺絵なんです。じつはムーミンはナチスが猛威をふるっていた時代に処女作が記されている。見てみたい、という方は『ムーミンを生んだ芸術家トーヴェ・ヤンソン』という本をご覧ください。1ページだけ戦時中のナチス批判について書いていました。まじかーっ、と思いました。
 
 
どうもトーヴェ・ヤンソンの父は、ナチスが台頭する時代にこれを肯定的に捉えていた。それに対する反発として、父親への反発も含めて、反ナチ思想を自ら育んでいったようなんです。
 
  
白バラが危険だったのは、なんといっても、ナチスの拠点の中心に居ながらナチス批判を繰り広げたというのがあったと思うんです。ヤンソンはフィンランドに住んでいたし、チャップリンはアメリカに行ってからナチス批判をしたわけで、やはりナチスの中心でナチス批判を繰り広げた、というのが白バラの危機そのものだったんだと思います。
 
 
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 ここからは新サイトの「ゲーテ詩集」を紹介します。縦書き表示で読めますよ。
 幼かった頃の夢想のことを、ゲーテは「黄金の空想よ」と記します。ゲーテの詩には、神話的なものと理知的なものが混在していて、これが魅力のように思います。ゲーテはゲルマン神話と、とくにギリシャ神話の影響が色濃いようです。
 この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。

  

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