白痴(15) ドストエフスキー

今日はフョードル・ドストエフスキーの「白痴」その15を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
ついにナスターシャの家に、強欲で野蛮なロゴージンたちがやってくる。
 
 
ナスターシャがハデに動き回るのには、なにかこう、ちゃんと証人がいるところで、事態を見てもらいたいという意識があるようなんです。生きものってそういうところあるよなと思いました。外敵に見つかる危険性は度外視して、仲間を魅了するために、孔雀とかの鳥は鮮やかな色彩になっているものが生き残ったりするわけですし。本文こうです。
 

皆さんがこの最後の幕の証人となってくださるようにお願い申したいのでございます。もちろん、皆さんの御都合次第でございますけれど……
 
ドストエフスキーの上手いのは、読者を巻きこんで、読み手の感情を、登場人物の誰かが代弁して、臨場感を出すところなんです。


ロゴージンはヒロインのナスターシャに、約束通り10万ルーブルという大金を持ってきた。ところで、ヒロインのナスターシャは、じつは将来的には、不気味なガーニャの家のところに嫁ぐつもりでいるようなんです。ほんとかどうかは判らないけど、本文で彼女はこう言っています。

……このことはいっさい、今日ガーニャの所で起こったんです。わたしが、あの人のお母さんの所を、つまり私の未来の家庭を訪問しますと、あのかたの妹さんが私の目の前で『この恥知らずの女をここから追い出す人はいないんですか!』っておっしゃるんです、そしてガーネチカ、自分の兄さんの顔に唾をひっかけたのですの。なかなか気の強いお嬢さんですわ!
 
こうまでひどいことが起きていて、はたしてガーニャと結婚できるのかはなはだ謎なんですけどガーニャの家のことを「私の未来の家庭」と言っているので、どうもガーニャと結婚をするつもりのようです。そこにロゴージンがやって来て大金でナスターシャを買い取ると言いはじめている。主人公は、この時にこう述べます。

「あなたがロゴージンのものだと言いはしませんでした、あなたはロゴージンのものじゃありません」と公爵は震え声で言いだした。
 
 
ナスターシャはじつは、ロゴージンやガーニャ以外の男とも結婚しようと思っていた。「だけどそれもまた、とてもいやになったの」と彼女は言います。どうしても良い結婚というのが思い浮かべられない。作中で彼女はこう言うんですよ。

四年ほど前にはわたしときどき考えたのよ、いっそアファナシイ・イワーノヴィッチと結婚しようかってねえ。(略)自分からずいぶん頼んだのよ、あなた本気にするかしら? ところが本当は嘘を言っていたのよ。

なるほど、恋愛をしているだけのはずがひどいことになる事件が繰り返し起きているわけですけれども、こういうような心理によって生じるんだなといたく納得しました。ナスターシャは自暴自棄になって「わたし自分のものは何一つ持たないんだもの。」という。


主人公は彼女をかわいそうに思って、誰とも結婚できないなら私が娶ることが出来ると発言する。ここから先の主人公ムイシュキンの言葉が、すごかったです。

あなたは苦労なされました、そしてその地獄の中から純潔な人として出て来られたのです。

ムイシュキンはみんなから愚者だと思われている。それは働いたことが無いから金を持ってない、それで馬鹿にされてしまっているわけです。資産があると無いとで、対応がまったく変わってしまう。そう考えてみると、金は恐ろしい。彼は働けたことが無いし稼いだことの無い男です。それなのに家庭をもうけることができると皆の前でいうんです。夏目漱石の「それから」がぼくは近代小説でいちばん好きなんですけれど、それと共通した問題を、ドストエフスキーが書いていますよ。
 
 

 
 
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 幼かった頃の夢想のことを、ゲーテは「黄金の空想よ」と記します。ゲーテの詩には、神話的なものと理知的なものが混在していて、これが魅力のように思います。ゲーテはゲルマン神話と、とくにギリシャ神話の影響が色濃いようです。
 この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。

  
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