白痴(31) ドストエフスキー

今日はフョードル・ドストエフスキーの「白痴」その31を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 

アグラーヤは偶然にも、ふたたび公爵に出逢います。そこで、作家プーシキンの決闘について語りあったりします。
 
 
銃に関する話が妙に面白いんです。ドストエフスキーは娯楽小説を書いても凄いだろうなと思いました。アグラーヤは銃撃のやり方にみょうに関心があるんです。技術的なことには詳しいのに、銃撃がなにを引きおこすかについてはほとんどまったく考えていない。
 
 
破天荒な物語を、今ここで読んでるわけなんですけど、これは完全な空想話では無くって、じっさいにプーシキンやドストエフスキーは派手でドラマチックな人生を歩んでいて、その結果が物語に投影されている。
 
 
ナスターシャの起こした事件を振り返りつつ、アグラーヤの暴れぶりについて話し合われるんですけど、主人公ムイシュキンとしては、もはやナスターシャは理解のおよばぬ危機的な人間として認識されている。もはや彼女について語ることが出来ない。いっぽうでアグラーヤには理解できる人間性がある。語ることの出来なくなった事物の、代わりのものというのが、ドストエフスキーの文学では特徴的に出現するように思えました。ドストエフスキーが語ることが出来ない、じつの父殺しの問題や、検閲と死刑の過酷な国家に対する、それらの記すことの不可能な言葉の代わりこそが、ドストエフスキー文学なんだと思えました。アグラーヤに対する父の思いが記された記述は、こうです。

でも、僕は、ねえ、君、あの子が可愛い、笑うのがかえって可愛いくらいだ。そして、どうもあの子は、鬼の子はそのために僕を特に好いてるような気がする。つまり、ほかの誰よりも好いてるらしい。これは賭をしてもいいくらいなんだが、あの子はもう何かのことで君のことを嘲弄したに相違ない。

アグラーヤは、主人公を秘密のベンチにいざないます。そこで……再び奇妙な話しをするのでした。主人公はこう考えています。

アグラーヤが一同の者、わけても彼、公爵をばかにしているということは、彼も全く信じて疑わなかった。しかも、いささかの屈辱をも彼は感じなかった。彼のつもりではむしろそうあるべきはずのものであった。明日の朝早く、また彼女に会えるということ、緑色のベンチに彼女と並んで腰をかけ、ピストルの装填法を聞かしてもらって、彼女の顔をしみじみと見ることができるという、ただそれだけのことが、彼にとっての最も重大なこととなっていた。


ナスターシャはじつは、アグラーヤと主人公ムイシュキンを結婚させようと思って、そのための邪魔になるエヴゲニイを追い出そうとして狂態を演じた、らしいんです。それはどうもほんとにそういうことらしい。
 
 
今回の章で、とつぜん暴漢ロゴージンとムイシュキン公爵が出逢うんですけど、それ以前に出逢ったのは、公爵が持病で倒れる寸前に、彼を襲おうと待ちかまえていたロゴージンだったんですけど、それがなんというか、事態や感情と齟齬を来していて、違和感があります。作者もこのシーンをどう描いたらいいのか戸惑っている感じがしました。公爵の言い分はこうでした。

実は君は僕の命をとろうとした、だから、それがため君の恨みが残っているんだ。はっきり言うけど、僕はただ一人の、あの日、十字架をやり取りした、あのパルフェン・ロゴージンを覚えているだけだ。…………(略)…………ようく言っておくけど、あの時のことは何もかも、ただ、いやなたわごとだと僕は思うんだ。

「十字架の兄弟ロゴージンを覚えていて、どすを振り上げたロゴージンを覚えていないと、こう手紙には書いてあった」とロゴージンは述べるんです。非常にむずかしいシーンのように思いました。ロゴージンとムイシュキン公爵は、ナスターシャについて再び話し合う。


ナスターシャは自己を犠牲にして、幸福や資産を譲りたいという思いがあるようです。それを理解した上で、公爵はナスターシャが既に正気を失っていると判断しているんです。ナスターシャの行動は結果的に幸福をもたらさないように思えるのですが……ロゴージンと結婚をしようというナスターシャはもしかすると、女の姿をしたキリストとして描かれているのではないのか、というような空想をしました。そうじゃない証拠は、作中に山ほど見つかるんですけれども。
 
 

 
 
以下の「シンプル表示の縦書きテキスト」をご利用ください。白痴は第50回で完結します。縦書きブラウザの使い方はこちら
https://akarinohon.com/migration/dostoevskii_hakuchi31.html
(約30頁 / ロード時間約30秒)
★シンプル表示の縦書きテキストはこちら
 
 
登場人物表はこちら 
 
★ドストエフスキー「白痴」をはじめから全巻よむ(※無料)
 
 


ヨコ書き1     ヨコ書き2     ヨコ書き3     ヨコ書き4

2
 
3
 
4



 
★ドストエフスキーの本を買う






明かりの本は新サイトに移行しました!

URLの登録変更をよろしくお願いいたします。



明かりの本 新サイトURL

https://akarinohon.com

(Windowsでも、なめらかな縦書き表示になるように改善しました!)

appleのmacやタブレットやスマートフォンなど、これまで縦書き表示がむずかしかった端末でも、ほぼ99%縦書き表示に対応し、よみやすいページ構成を実現しました。ぜひ新しいサイトで読書をお楽しみください。











 ここからは新サイトの「ゲーテ詩集」を紹介します。縦書き表示で読めますよ。
 幼かった頃の夢想のことを、ゲーテは「黄金の空想よ」と記します。ゲーテの詩には、神話的なものと理知的なものが混在していて、これが魅力のように思います。ゲーテはゲルマン神話と、とくにギリシャ神話の影響が色濃いようです。
 この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。

  
縦書き文庫の装画
装画をクリックするか、ここから全文を読んでください。 (使い方はこちら) (無料オーディオブックの解説)
(総ページ数/約10頁 ロード時間/約10秒)
 
『ゲーテ詩集』全文を読むにはこちらをクリックしてください













top page ・本屋map ・図書館link ★おすすめ本 ★書籍&グッズ購入 





 


笑わない娘 小川未明

今日は小川未明の「笑わない娘」を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
小川未明は児童文学の王道だと思うんですけど、はじめに題名どおりの謎があって、それと共にヒロインの魅力があって、謎を深める世事があって……と、分かりやすいけど飽きさせない工夫が凝らされているなあ、と思いました。
 
 
それから美しいむすめに笑ってもらうために、さまざまな挑戦をする。作者がやろうとしていることと、作中人物がやろうとしていることが共鳴していて、そこが魅力になっているように思えました。
 
 
謎の種明かしが壮大すぎて、ハッとしました。小川未明は小さいことを書いているようで、世界全体を捉えるのが凄く上手いんだなと思います……。
 

 
 
以下の「シンプル表示の縦書きテキスト」をご利用ください。(縦書きブラウザの使い方はこちら
https://akarinohon.com/migration/warawanai_musume.html
(約10頁 / ロード時間約30秒)
★シンプル表示の縦書きテキストはこちら
 
 
 
 






明かりの本は新サイトに移行しました!

URLの登録変更をよろしくお願いいたします。



明かりの本 新サイトURL

https://akarinohon.com

(Windowsでも、なめらかな縦書き表示になるように改善しました!)

appleのmacやタブレットやスマートフォンなど、これまで縦書き表示がむずかしかった端末でも、ほぼ99%縦書き表示に対応し、よみやすいページ構成を実現しました。ぜひ新しいサイトで読書をお楽しみください。











 ここからは新サイトの「ゲーテ詩集」を紹介します。縦書き表示で読めますよ。
 幼かった頃の夢想のことを、ゲーテは「黄金の空想よ」と記します。ゲーテの詩には、神話的なものと理知的なものが混在していて、これが魅力のように思います。ゲーテはゲルマン神話と、とくにギリシャ神話の影響が色濃いようです。
 この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。

  

縦書き文庫の装画
装画をクリックするか、ここから全文を読んでください。 (使い方はこちら) (無料オーディオブックの解説)
(総ページ数/約10頁 ロード時間/約10秒)
 
『ゲーテ詩集』全文を読むにはこちらをクリックしてください













top page ・本屋map ・図書館link ★おすすめ本 ★書籍&グッズ購入 





 


与謝野晶子詩歌集(22)

今日は「与謝野晶子詩歌集」その22を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
   
人と鳥を描いた歌が美しかったです。鳥を描いた作品というと「王と鳥」とか「幸福な王子」というのを思いだしました。
 

ゆるされし朝よそほひのしばらくを君に歌へな山の鶯
 

 
 
以下の「シンプル表示の縦書きテキスト」をご利用ください。(縦書きブラウザの使い方はこちら
https://akarinohon.com/migration/yosanoakiko022.html
(約10頁 / ロード時間約30秒)
★シンプル表示の縦書きテキストはこちら
 
 


よこ1   よこ2   よこ3


その1   その2   その3










明かりの本は新サイトに移行しました!

URLの登録変更をよろしくお願いいたします。



明かりの本 新サイトURL

https://akarinohon.com

(Windowsでも、なめらかな縦書き表示になるように改善しました!)

appleのmacやタブレットやスマートフォンなど、これまで縦書き表示がむずかしかった端末でも、ほぼ99%縦書き表示に対応し、よみやすいページ構成を実現しました。ぜひ新しいサイトで読書をお楽しみください。











 ここからは新サイトの「ゲーテ詩集」を紹介します。縦書き表示で読めますよ。
 幼かった頃の夢想のことを、ゲーテは「黄金の空想よ」と記します。ゲーテの詩には、神話的なものと理知的なものが混在していて、これが魅力のように思います。ゲーテはゲルマン神話と、とくにギリシャ神話の影響が色濃いようです。
 この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。

  
縦書き文庫の装画
装画をクリックするか、ここから全文を読んでください。 (使い方はこちら) (無料オーディオブックの解説)
(総ページ数/約10頁 ロード時間/約10秒)
 
『ゲーテ詩集』全文を読むにはこちらをクリックしてください













top page ・本屋map ・図書館link ★おすすめ本 ★書籍&グッズ購入 





 


白痴(30) ドストエフスキー

今日はフョードル・ドストエフスキーの「白痴」その30を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
主人公の公爵は、賢いのか愚かなのかよくわからない。人によっては賢者だと判断するんですが、たいていは愚かな人だと思ってしまうんです。本人はこう言っています。

僕が口に出してはいけないような理想、高遠な理想があることを申し上げたかったのです。なぜ、口に出してはいけないかというと、僕が話をすると必ず、みんなを笑わしてしまうからです。

その公爵に対して、アグラーヤが急に怒りはじめるんです。激怒するんですけど、どうもおかしい。本文こうです。
 
ここにいる人はみんなあなたの小指ほどの値打ちもないんですよ、あなたの知恵、あなたのお心は、こんな人たちにはもったいなさすぎるのですよ!あなたは誰よりも潔白で、誰よりも高尚で、誰よりもおきれいで、誰よりも善良で、聰明なおかたなんです!

ドストエフスキーの登場人物は、好意がありあまってしまって、ひどい暴言の応報になることがよくあるんですけど、今回のも奇妙でした。ムイシュキンの独特な愚かさが、他の登場人物に伝播してゆくんですよ。
 
 
アグラーヤと、序盤に登場したヒロインナスターシャは、公爵を目の前にして、かなり共通したことを言うんですよ。重要なことは幾度か繰り返す、というのが文学の技法だと思うんですけど、ドストエフスキーの小説のこの重ね合わせ、重奏というのは、みごとで毎回うなるんです。
 
 
主人公はどうも、自身の抱える空白によって、他人にも真っ白な意識が伝播してゆくようなんです。日本語訳で白痴のこの白、というのがどうもムイシュキンを如実に言い表しているように思えました。潔白で、頭の中が真っ白になる、そういう公爵なんです。急に考えごとにふけって、問いかけにもまったく反応しなかったりする。美人のアグラーヤとその母から、必然的にいじめられるんです。けれども、どうもみんな公爵が好きでしょうがないようなんです。アグラーヤが怒ったり泣いたりしてから、急にみんな笑い始める、という描写に迫力がありました。アグラーヤは主人公に、公園に秘密のベンチがあることを教える。これがちょっと謎めいていました。
 
 
それからついに、もっとも重大な女性が登場するのですが、そこで作者も主人公も、いったん名前が出てこないんですよ。その文体にしびれました。そういえば源氏物語でも重要な時ほど、主人公の名前が明記されないんです。
 
今にしてようやく、あの女が忽然こつぜんとして姿を現わした刹那せつなに、彼は、おそらく第六感によってであろう、ロゴージンに語った自分のことばに何が不足していたかを、はっきりと理解したのである。恐怖、まぎれもない恐怖を言い表わすのには、ことばが足りなかったのだ!彼は今、この瞬間に、それを完全に直覚した。

ここから先の記述が凄かったです。「ナスターシャ・フィリッポヴナのことばは雷のように彼をたたきのめしたのである」という記述通り、ヒロインが開口した途端の言葉がショックで、恐ろしい小説だと思いました。
 
 
ナスターシャと見知らぬ青年士官との血塗れの諍い。これに思わず割って入ったムイシュキン公爵は、全身を震わせながらナスターシャの危険性を訴えていたのでした。次回に続きます。
 
 

 
 
以下の「シンプル表示の縦書きテキスト」をご利用ください。白痴は第50回で完結します。縦書きブラウザの使い方はこちら
https://akarinohon.com/migration/dostoevskii_hakuchi30.html
(約30頁 / ロード時間約30秒)
★シンプル表示の縦書きテキストはこちら
 
 
登場人物表はこちら 
 
★ドストエフスキー「白痴」をはじめから全巻よむ(※無料)
 
 


ヨコ書き1     ヨコ書き2     ヨコ書き3     ヨコ書き4

2
 
3
 
4



 
★ドストエフスキーの本を買う






明かりの本は新サイトに移行しました!

URLの登録変更をよろしくお願いいたします。



明かりの本 新サイトURL

https://akarinohon.com

(Windowsでも、なめらかな縦書き表示になるように改善しました!)

appleのmacやタブレットやスマートフォンなど、これまで縦書き表示がむずかしかった端末でも、ほぼ99%縦書き表示に対応し、よみやすいページ構成を実現しました。ぜひ新しいサイトで読書をお楽しみください。











 ここからは新サイトの「ゲーテ詩集」を紹介します。縦書き表示で読めますよ。
 幼かった頃の夢想のことを、ゲーテは「黄金の空想よ」と記します。ゲーテの詩には、神話的なものと理知的なものが混在していて、これが魅力のように思います。ゲーテはゲルマン神話と、とくにギリシャ神話の影響が色濃いようです。
 この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。

  
縦書き文庫の装画
装画をクリックするか、ここから全文を読んでください。 (使い方はこちら) (無料オーディオブックの解説)
(総ページ数/約10頁 ロード時間/約10秒)
 
『ゲーテ詩集』全文を読むにはこちらをクリックしてください













top page ・本屋map ・図書館link ★おすすめ本 ★書籍&グッズ購入 





 


万葉びとの生活 折口信夫

今日は折口信夫の「万葉びとの生活」を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
折口信夫の本は難しくて細部まで読み込むことが困難なんですが、理解できる箇所もあって、読んでみると興味深かったです。「思想史よりは生活史を重く見る私共には、民間の生活が、政権の移動と足並みを揃へるものとする考へは、極めて無意味に見える。」という指摘は、元号の変わる時に、現代の評論家が指摘していた問題にも関係しているように思えました。近代の本を読んでいると、今の時代に分からないなと思うことがらが、なんだか遠回りして氷解することがある気がします。むつかしい言葉をやさしい現代語で書いてくれる人が居たら良いんだけどなあと思いました。本文では、記紀や古事記のことがいろいろ記されています。こういうのです。
 

(略)……すくなひこなとの競走に、糞ではかまを汚した童話風な話があり、あめのひほことの国争ひに、蛮人でもし相な、足縄投げの物語りを残してゐる。醜悪であり幼稚であることが、此神の性格に破綻を起さないのである。普通人其儘の生活を持つことが理想にもとるものではない。
 
 
『夫に対して嫉妬心を抱くな、感情的にならず冷静に話し合う事』という「女大学」の教えに対して折口信夫が、いやそうじゃない、嫉妬は必要なもので愛情と深い関わりがあって「愛の葛藤の道徳を認めてゐた」万葉人の時代には、理想的な生活には必ず存在していたのが、まさに嫉みだったと書いています。正確な記述はこうです。
 
……多くの女の愛情を、身一つに納める一面には、必、後妻ウハナリ嫉みが伴うてゐる。万葉人の理想の生活には、此意味から、女の嫉妬をうける事を条件とした様に見える。

妻敵メガタキうちは近世まで、武士の間に行はれてゐ」て「これを面晴れと考へる武士」がいたんですけど「教養あるものは、笑うてゐた」……復讐のためなら相手の家を「大ぜいで攻めかけて壊して来る。其が悪事とは、考へられてゐなかつたのである」という話しに、おどろきました。
 
 
現代の学者の話ならば、普通はえげつないことを書かないと思うんですけど、折口信夫の話を読むと、ホラー映画かサスペンス映画を見ているかのように、えぐい箇所があるんです。それでこの折口の批評としては、女大学をはじめとした多くの文献に嫉妬への関心が無い理由は「家庭生活に対してすこぶるる冷淡であつた」からだと指摘している。古事記や日本書紀には、嫉妬が記されていると、いわのひめのみことを見なさいと言うてはります。wikipediaで確認してみただけでも、そうとう面白かったです。
 
 
おおくにぬしは、実在したのか、しなかったのかという問題で、折口はこう指摘しています。

おほくにぬしの肉体は、或は一度も此世に形を現さなかつたかも知れぬ。併し、拒む事の出来ないのは、世々の出雲人が伝承し、醞醸して来た、其優れたたましひである。

古事記のオオクニヌシのことを中心に書いていました。wikipediaと同時に読んでみました。
 
 
折口信夫はオオクニヌシのことを大変重大視してるんですけど、そのオオクニヌシの性格を「愚かなること猫の子の如く」と書いたりもする。折口信夫のものの考え方はなんというか柔和なところがあるんだなあと思いました。オオクニヌシの危機に直面する技術のこと、長く生き残ってゆくことを書いています。
 
択ばれた人ばかりでなく、凡俗も機会次第に永久の齢を享ける事が出来るもの、と思ひもし、望みもした。此はおほくにぬしの生活を、人々の上に持ち来たさうとする考へが、外来思想によつて大いに育てられたものと見てよからう。
 併し初めには不死の自信がなかつた為に、生に執著もし、復活をも信じたのである。
 
ところで、現代ではオオクニノヌシ(だいこくさま)は、こういうように語られていました。このページも面白かったです。

 
 

 
 
以下の「シンプル表示の縦書きテキスト」をご利用ください。(縦書きブラウザの使い方はこちら
https://akarinohon.com/migration/manyobitono_seikatsu.html
(約10頁 / ロード時間約30秒)
★シンプル表示の縦書きテキストはこちら
 
 
 
 






明かりの本は新サイトに移行しました!

URLの登録変更をよろしくお願いいたします。



明かりの本 新サイトURL

https://akarinohon.com

(Windowsでも、なめらかな縦書き表示になるように改善しました!)

appleのmacやタブレットやスマートフォンなど、これまで縦書き表示がむずかしかった端末でも、ほぼ99%縦書き表示に対応し、よみやすいページ構成を実現しました。ぜひ新しいサイトで読書をお楽しみください。











 ここからは新サイトの「ゲーテ詩集」を紹介します。縦書き表示で読めますよ。
 幼かった頃の夢想のことを、ゲーテは「黄金の空想よ」と記します。ゲーテの詩には、神話的なものと理知的なものが混在していて、これが魅力のように思います。ゲーテはゲルマン神話と、とくにギリシャ神話の影響が色濃いようです。
 この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。

  
縦書き文庫の装画
装画をクリックするか、ここから全文を読んでください。 (使い方はこちら) (無料オーディオブックの解説)
(総ページ数/約10頁 ロード時間/約10秒)
 
『ゲーテ詩集』全文を読むにはこちらをクリックしてください













top page ・本屋map ・図書館link ★おすすめ本 ★書籍&グッズ購入 





 


与謝野晶子詩歌集(21)

今日は「与謝野晶子詩歌集」その21を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
  
 
与謝野晶子が歌に記す、神という文字は、どういう神だろうと思ってwikipediaを見ていたら、日本は八百万の神といわれるだけあって、その一覧が凄いことになっていました。
 
 
「うつくしき命を惜しと神のいひぬ」……美しい命が惜しいと神がいった、というのは唯一神はけっして言わないです。与謝野晶子が描く神は、人間的だったり、悩む存在だったりするように思いました。
 
 

 
 
以下の「シンプル表示の縦書きテキスト」をご利用ください。(縦書きブラウザの使い方はこちら
https://akarinohon.com/migration/yosanoakiko021.html
(約10頁 / ロード時間約30秒)
★シンプル表示の縦書きテキストはこちら
 
 


よこ1   よこ2   よこ3


その1   その2   その3










明かりの本は新サイトに移行しました!

URLの登録変更をよろしくお願いいたします。



明かりの本 新サイトURL

https://akarinohon.com

(Windowsでも、なめらかな縦書き表示になるように改善しました!)

appleのmacやタブレットやスマートフォンなど、これまで縦書き表示がむずかしかった端末でも、ほぼ99%縦書き表示に対応し、よみやすいページ構成を実現しました。ぜひ新しいサイトで読書をお楽しみください。











 ここからは新サイトの「ゲーテ詩集」を紹介します。縦書き表示で読めますよ。
 幼かった頃の夢想のことを、ゲーテは「黄金の空想よ」と記します。ゲーテの詩には、神話的なものと理知的なものが混在していて、これが魅力のように思います。ゲーテはゲルマン神話と、とくにギリシャ神話の影響が色濃いようです。
 この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。

  

縦書き文庫の装画
装画をクリックするか、ここから全文を読んでください。 (使い方はこちら) (無料オーディオブックの解説)
(総ページ数/約10頁 ロード時間/約10秒)
 
『ゲーテ詩集』全文を読むにはこちらをクリックしてください













top page ・本屋map ・図書館link ★おすすめ本 ★書籍&グッズ購入 





 


白痴(29) ドストエフスキー

今日はフョードル・ドストエフスキーの「白痴」その29を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
この物語はおおよそ200年くらい前のことが描かれているんですけど、本文にこう記されています。
 

この国には実際的な人がいない。たとえば政治的な人は多く、将軍などといったような人もかなりに多い。また、支配的な位置に立つ人も、どんなに必要が起ころうとも、すぐにあつらえむきの人がいくらでも見つかるのである。しかし実際的な人となるといっこういないのである。
 
 
今回の章を読んでいると、ほとんどのロシア人が個性を持たないのに、権力欲がある、みたいなことが描かれています。ロシアならではの権力欲があった、ように思えてきます。すくなくとも果実の豊かな南国には権力欲という概念が生じにくい。鴻大で寒冷な大地に生きるロシア人には権力への意思があって、それが20世紀ソ連という世界最大の共産主義を支えたのかもなあーとか、デタラメな感想を抱きました。

わが国の乳母たちにさえも将軍の位がロシア人の幸福の絶頂と思われているのであり、したがって、これは静かな美しい幸福というものの最も普遍的な国民的な理想であったのだ。
 
エパンチン一家は、物語の序盤から出てきていたんですけど、この一家の雰囲気を端的に言い表している一文はこういうのです。
 
 
……(略)……毎日毎日、寝ても覚めても口論していたのである。しかも同時に夫や娘たちを、身をも忘れて、ほとんど煩悩ぼんのうといってもいいくらいに愛していた。(略)リザヴェータ・プロコフィエヴナがあらゆる不安をのがれて、本当に心を安めることができたのは、生まれてこのかたわずかにこの一か月ばかりの間であった。いよいよ差し迫ったアデライーダの婚礼を機縁として、アグラーヤの噂も上流社会に立つようになってきた。
 
 
エパンチン一家はムイシュキン公爵と遠い親戚関係なんですけど、どうもこの「白痴」と呼ばれる公爵と、どう付きあえば良いのか判らない。本文はこうなっています。リザヴェータの抱く、娘アデライーダと公爵への思惑です。


あの子は急にすばらしい娘になった——なんていうきれいな子だろう、ああ、なんてきれいなんだろう、日ましにきれいになってゆく!ところがどうだろう!ところが、ここにけがらわしい公爵めが、よくよくの白痴ばかものが現われるやいなや、何もかもがまたもやごちゃごちゃになってしまって、家のなかが、がらりとひっくり返ってしまったのだ!
 
 
ドストエフスキーは自分の人格をみごとに腑分けして、さまざまな人間性を描きだしているんですけど、今回は主人公のムイシュキン公爵というのが結婚できない男になっている。ドストエフスキーにもそういう、結婚の出来ない時期はあったようなんです。そういう感性を描きだしている。けれどもドストエフスキーは、ムイシュキン公爵のように完全に孤高というか単身者というような男では無い。家族との密な関係性を、第一編と第三編の初めに、エパンチン一家として描きだしている。そうすることによって、ただ一人の人間として生きるムイシュキン公爵の人格が浮き彫りになってゆくように思われました。
 
 
今回の終盤の文学論がみごとなんです。ロシアの文学では「ロモノーソフプゥシキン、それとゴォゴリ」だけが「ただこの三人だけが、それぞれ、何かしら本当に自分のもの自分独得ヽヽヽヽのものを語ることができた」と言うんです。「何か自分のもの」という表現が迫力ありました。借りものばっかりでいつも済ませてしまおうとするだけの自分としては、この批評的表現が響きました。
 
 
ぼくは世界史に疎いんですけど、以下のドストエフスキーの考察が、百数十年後のソ連共産主義国家誕生の歴史に繋がっているというのは、なんとなく理解できました。
 
 
ロシアリベラリズムなるものは現存せる社会の秩序に対する攻撃ではなくて、わが国の社会の本質に対する攻撃であり、ただ単に秩序、ロシアの秩序に対する攻撃であるばかりでなく、ロシアそのものに対する攻撃でもある。

主人公はこの問いかけに対してこう返答している。

あなたのおっしゃられたロシアリベラリズムは、実際のところ、単にわが国の社会の秩序ばかりではなしに、ロシアそのものをも憎んでいるような傾向があるようですね、いくぶん。
 
 
主人公へのこの問いかけが印象に残りました。

地上の楽園というものはむずかしいものです。ねえ、公爵、あなたの美しいお心で考えていらっしゃるものよりは、ずっとずっとむずかしいものです。
 
 
いま第30回あたりに差しかかっていますけど、第50回で「白痴」は完結します。
 
 

 
 
以下の「シンプル表示の縦書きテキスト」をご利用ください。(縦書きブラウザの使い方はこちら
https://akarinohon.com/migration/dostoevskii_hakuchi29.html
(約30頁 / ロード時間約30秒)
★シンプル表示の縦書きテキストはこちら
 
 
登場人物表はこちら 
 
★ドストエフスキー「白痴」をはじめから全巻よむ(※無料)
 
 


ヨコ書き1     ヨコ書き2     ヨコ書き3     ヨコ書き4

2
 
3
 
4



 
★ドストエフスキーの本を買う






明かりの本は新サイトに移行しました!

URLの登録変更をよろしくお願いいたします。



明かりの本 新サイトURL

https://akarinohon.com

(Windowsでも、なめらかな縦書き表示になるように改善しました!)

appleのmacやタブレットやスマートフォンなど、これまで縦書き表示がむずかしかった端末でも、ほぼ99%縦書き表示に対応し、よみやすいページ構成を実現しました。ぜひ新しいサイトで読書をお楽しみください。











 ここからは新サイトの「ゲーテ詩集」を紹介します。縦書き表示で読めますよ。
 幼かった頃の夢想のことを、ゲーテは「黄金の空想よ」と記します。ゲーテの詩には、神話的なものと理知的なものが混在していて、これが魅力のように思います。ゲーテはゲルマン神話と、とくにギリシャ神話の影響が色濃いようです。
 この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。

  
縦書き文庫の装画
装画をクリックするか、ここから全文を読んでください。 (使い方はこちら) (無料オーディオブックの解説)
(総ページ数/約10頁 ロード時間/約10秒)
 
『ゲーテ詩集』全文を読むにはこちらをクリックしてください













top page ・本屋map ・図書館link ★おすすめ本 ★書籍&グッズ購入