運 芥川龍之介

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今日は芥川龍之介の「運」を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
海外の古典を日本人に読ませることの得意だった芥川龍之介が、今回は神道の不可思議について短編小説にしています。お参りの御利益というのはあるものかどうなのかと、ゲスなことを聞きたがる青侍。お参りをして運が巡ってくるのかどうか、そういうことについて何となく話しているうちに、京都は清水寺で起きた出来事を聞くことになる。
 
 
貧しくて食うことにさえ困る娘が、清水寺で願をかけていた。どうか普通に暮らしてゆけますように、と。すると夢の中に、清水の観音様があらわれて、娘にこんなことを言ったそうだ。「清水寺から帰る路で、そなたに云いよる男があらわれるだろう。その男の言うことを聞くがよい」はたして、じっさいに夕暮れ時の五条坂で、娘は男に抱きつかれて言い寄られた。しかしたそがれ時であったために、かんじんの顔が見えない。男は娘を北へ北へ連れてゆきます。ついに八坂神社の中にあるひとつの寺に連れ込まれた。一晩の逢瀬とあいなって、二人は結ばれた。……ここからが奇妙で、男は結婚してくれ、と単刀直入に申し入れた。男はどうも裕福なようで、高価な絹のプレゼントまでして、なぜかいそぎあしで仕事に出かけた。
 
 
男の家に一人とり残された女は、夢のお告げを信じてしまっているので、この男がじつに裕福で、私に幸せを分け与えてくれるとのだと思い込んでしまった。ところがどうもおかしい。男の家には、個人の財宝と言うにはあまりにも破格の品々が所狭しと並べられている。これはいくらなんでもあり得ない。どうかんがえても盗賊にちがいあるまいと、女は気がついた。驚いたことに、財宝の部屋の中に、一人の老いた尼がいた。
 
 
老いた尼法師は、長年この謎の男の世話をしてきたらしい。男の話しをいろいろと聞いてみるのだが、彼女はいかんせん耳がとおい。かんじんの男の仕事についてがよく判らない。おばあさんはやがていねむりをはじめた。すきをみて女は逃げようとしたのだが、ついうっかり、プレゼントの絹を取りに帰ってしまった。逃亡を企てたことに気づいた尼法師は、彼女にかじりついた。逃げる娘と、つかまえるおばあさんで、はげしい格闘がはじまってしまった。娘はいきおいあまって、おばあさんをてにかけてしまった。それは不慮の事故なのか、悪意の犯罪だったのか。
 
 
女は息も切れ切れになってやっと逃げ切ると、こんどはあたりがさわがしい。盗賊の男が復讐にやって来たのか。あるいは娘が犯罪者として警察(検非違使)に捕まってしまうのか。
 
 
娘は息をのんで人だかりを見ます。すると昨晩、逢瀬をかわしたあの男が縄にまかれて検非違使に捕まっていたのでありました。すんでのところで難を逃れた娘。「神社でお祈りをするのも、考え物だな」ということなんですが、たしかに観音様の言うとおり、娘はその後、盗賊からもらった絹を売って食いつなぎ、なんとか暮らしてゆけるようになったそうです。
 
 
最後に、芥川龍之介はすごいことを青侍に言わせます。下町生まれの竹を割ったような性格だなあと思いました。こう書いています。
 
 
人を殺したって、物盗りの女房になったって、する気でしたんでなければ仕方がないやね。
 
 

 
 
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 ここからは新サイトの「ゲーテ詩集」を紹介します。縦書き表示で読めますよ。
 幼かった頃の夢想のことを、ゲーテは「黄金の空想よ」と記します。ゲーテの詩には、神話的なものと理知的なものが混在していて、これが魅力のように思います。ゲーテはゲルマン神話と、とくにギリシャ神話の影響が色濃いようです。
 この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。

  

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