海野十三敗戦日記

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今日は海野十三の「敗戦日記」を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
海野十三は若者向けの冒険小説やSF小説を書く作家で、戦前から戦後にかけての時代に活躍した、未来予測が上手くておもしろい作家なんですが、これは現実のことを書いたものです。
 
 
昭和二十年(1945年)の八月九日〜十五日までの記述が印象に残りました。終戦直前の日記を読んでいると、おそろしいほど情報が錯綜していたんだろうと感じました。海野十三はこう記しているんです。
 
 
  新兵器は一応恐るべき力を発揮するが、それは出現の最初の時期だけと、それについての宣伝力の及ぶ或る期間だけのことである。その対策がとられ、人々が用心深くなり、その結果被害がだんだん減少して来ると、その新兵器の実力以下に評価される時代が必ず出てくる。
 
 
  それと正面から取組み、それぞれの工夫において被害を最小限度化すべきである。
 
 
これは原爆が投下されたのかどうかまだ判らない状態で記された日記です。終戦から十四日後の八月二十九日、海野十三は正気に返って冷静になり、こう記しています。
 
 
  広島の原子爆弾の惨害は、日と共に拡大、深刻となる模様である。その日は別に何でもなかった人が、何でもないままに東京に戻って来た。するとだんだん具合がわるくなり、食事がのどにとおらなくなることから始まって変になり、医師にかかった。医師がしらべてみると白血球が十分の一位に減り、赤血球は三分の二に減じていた。そのうちに毛髪がぬけ始め、背中にあったちょっとした傷が急に悪化し、そして十九日目に死んでしまった。解剖してみると、造血臓器がたいへん荒されており、骨髄、膵臓、腎臓などがいけなかった。これは放射物質による害そのものであり、原子爆弾は単に爆風と火傷のみならず、放射物質による害も加えるものであることが証明された。
 
 
その後、食糧難と喀血という事態がありながらも、家族が少しずつ幸福をつかんでゆく描写があって打たれました。海野十三は戦中から長らく肺結核で苦しんでいて、後半にそのことが記されています。海野十三は、広島の危機を他の人びとよりもよく理解していながら、家族が爆心地からは数十キロほど遠い広島に移り住むことを見守り、敗戦から一年後の八月にこう記しています。
 
 
  八月二十七日
  ◯徹郎、朝子、育郎の三名、広島へ出立す。同宿の中川夫人と芳子ちゃんもいっしょなり。
  英も私も育郎坊やを放すこと別れる事が甚だつらいのだが、どうにもならぬ。坊やは、七月三日より本日まで約五十余日滞留し、その間にかなり身体は伸び体重は殖え、下歯二本生え、えんこが出来るようになり、人の顔が十分覚えられるようになり、いい顔が出来るようになりしなり。
  広島には、カゴシマより上り居らるるカゴシマのおじいさん在り、さぞよろこばるる事ならむ。この上は、広島にて新しき職業がうまく道にのらんことを祈るのみ。
 
  

 
 
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 幼かった頃の夢想のことを、ゲーテは「黄金の空想よ」と記します。ゲーテの詩には、神話的なものと理知的なものが混在していて、これが魅力のように思います。ゲーテはゲルマン神話と、とくにギリシャ神話の影響が色濃いようです。
 この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。

  

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