神曲 浄火(20) ダンテ

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今日はダンテの「神曲 浄火篇」第二十曲を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
貪欲の罪をあがなうこの環道では、さまざまな人々がかつての罪を浄化しているのであります。今回、翻訳が難しくてちょっと何だろうなと思った箇所があって、現代的な平川訳と山川訳とで読み比べてみました。山川訳ではこう書いているんですよ。
 
 
  禍ひなるかな汝年へし牝の狼よ、汝ははてしなき饑ゑのために獲物をとらふること凡ての獸の上にいづ
 
平川訳ではこうなっています。

  呪われてあれ、古狼よ、おまえは際限なく欲が深く/あらゆる獣にもまして多くの餌に喰らいついている!

 
平川訳では、この老いた狼が男であるか女であるかを限定していないのが現代的だなと思いました。この古狼というのが、どうも人々を追いつめて、現世での悪行に至らせてしまったわけなんであります。ダンテも神曲地獄篇のいちばんはじめで、この古狼に追い回されて、人生に惑い、迷いの森に入りこんで地獄に立ち入ることになったわけです。現実のダンテも、さまざまな政治的争いにモロに巻きこまれて、故郷を永遠に去ることになったわけですから、その彼をほんとうに追いつめた悪というのを表現するときに、古狼、という言葉が書き綴られたんだろうと思いました。
 
 
判らないのは、じゃあこの「呪われるがいい」とダンテが言った古狼というのがいったいどういう存在なのかさっぱり理解できなくて、解説にもここのことはとくに記されていないし、どうも古狼というのは、ダンテ神曲の冒頭でダンテをしつように追いかけた牝狼と同じものであるというのは判ったんですが、牝狼とはいったいなんなのか、なぜ呪われるべき存在なのか、ここが判らないと思って、解説や読解本を読んでいると、詩人のエリオットがこの冒頭の牝狼について、「そうしたものの意味に気をかける必要はないと思う。初めは、そんなことは考えない方が良いのである」と記しているのを発見し、なるほど。この謎は詩人によれば、こだわっても無意味なんだなと、いたく納得しました。
 
 
そうして、このおそろしい古狼によって悪の世界へと追いつめられた人々への描写がじつに秀逸でした。山川訳はこうです。
 
 
片側には、全世界にはびこる罪を一滴(しづく)また一滴、目より注ぎいだす民、あまりに縁(ふち)近くゐたればなり
 
 
物語の中盤、地震に見舞われて地面に腹ばいとなりながら祈りの声をあげる人々があまたにおり、その地震が止み、ダンテはその地面に伏す人々に、あなたはどのように悩んでいられるのですか、と一人一人聞いて、そのわけをはっきりと知りたくてたまらなかったのですが、人生でもっともそのことを知りたかったのだ、とまで書くのですが、どうしてもそれを聞いてゆく時間が無く、その場を師と共に離れてゆくよりほか無かったのでした。
 
 

 
 
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 この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。

  

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