今日はダンテの「神曲 天堂」第三十三曲を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
ついにダンテは、マリアへの祈りを成し遂げるのでありました。ダンテの眼はすみわたり、神をまのあたりにするのです。
神を見た……、という展開に衝撃を受けました。ダンテは三位一体となった、神と子(キリスト)と聖霊のもとへ辿りつき、これを見た、と記しているのであります。神を見た……、とぼくが書くとただのギャグにしかならないかと思うんですが、ダンテの詩を読むと、なるほど無信仰の自分であっても、ダンテの描こうとした、世界全体を動かしているその意識というのが伝わってくるなと思いました。ダンテの記す、人類愛の表現がすてきでした。
至上の存在をダンテはまのあたりにします。ダンテは、天堂のいちばん中心の、永遠の光の中になにがあったかをこう語っています。「言葉では及ばぬ言葉を越えた像(すがた)、記憶では及ばぬ記憶を越えた像(すがた)」(平川訳)
そうしてダンテはふたたび地上にもどり、この書を書いたのだ、と記しているのです。語りえぬことについて、ダンテがなんとか示そうとしている。哲学者のウィトゲンシュタインが半生をかけて研究した論理哲学論考という哲学書と同じ形式で、行ききるところまで行ききって、そうして現実の世界に帰ってきて、思考の限界が何処までであって、思考の限界の先がどうなっているのかを示そうとした、という構造と、同形であることに感銘を受けました。
ダンテは愛や、宇宙全体のことをも語っていてそこに感情移入して読んでいました。宇宙について語られた詩に於いて、ここまで念入りに記された詩は、僕は読んだことがありませんでした。完全なものを表現するときに、それを光として、中心に永遠の光があると、ダンテは描きます。そこに詩としての優れた描写がありました。ダンテのほんとうの最後の一文が、やはり完璧な詩だと思いました。
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ここからは新サイトの「ゲーテ詩集」を紹介します。縦書き表示で読めますよ。
幼かった頃の夢想のことを、ゲーテは「黄金の空想よ」と記します。ゲーテの詩には、神話的なものと理知的なものが混在していて、これが魅力のように思います。ゲーテはゲルマン神話と、とくにギリシャ神話の影響が色濃いようです。
この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。
(総ページ数/約10頁 ロード時間/約10秒)
『ゲーテ詩集』全文を読むにはこちらをクリックしてください
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こんばんは。
神曲についての感想を通読してきました。自分にない視点であったり自分の持っていない知識を交えた感想でとても面白く読み込めました。
神曲は色々な方が翻訳された物を読んできましたがここで主として触れられている山川さん訳のものが最も完成度は高いと思っています。ただ個人の好みとして繁野さん訳も内容は仔細に及ぶ精緻な訳ではないものの美文、梗概の発展形としての素晴らしい訳だと捉えています。
またその繁野さんはつい最近までwikiにも載っていない知名度の低さでしたが、他にも訳を手掛けていまして、代表的な物がミルトンの失楽園なのです。
この本では浄火の山のいただき、エデンの楽園も舞台として出てくるのですが、その楽園の自然描写が実に見事で、神曲の感想のいくつかで自然描写の巧みさに関心を寄せておられたakarinohon様の好みにも合うのではないでしょうか?
また上二冊に比べると無名ですが、シルマリル物語も神曲のような準世界の創造という圧倒的スケール感の文字表現に成功した作品だと考えています。
もし叶うものでしたらそれらのakarinohon様視点での知見いみじく私とは異なった良き視点での感想を伺えれば嬉しいのですが、いかがでしょうか?
参考URLです。
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/897043
http://jhnet.sakura.ne.jp/petit/plost-story.html
長々とすみません。目を通して頂きありがとうございます!
読みました。私は神曲 煉獄篇に感銘を受けました。ミルトンの『失楽園』もいつの日か読んでみたいです。
リンクの紹介ありがとうございました。