白痴(6) ドストエフスキー

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今日はフョードル・ドストエフスキーの「白痴」その6を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
近代の魅力の1つに、システム化されていない部分が色濃くあって、そこにおもしろさが宿っている、というのがあると思うんです。現代ではいろんなルールがはっきり決まっていて、どっちつかずの人とか、トリックスター的な人物の居場所が乏しい。ところがドストエフスキーの白痴の主人公は、小学校というようないかにもシステム化されているはずのところに、特別枠としてすっかり入りこんでいる描写があったりする。本文こうです。
 

いつも僕は、あちらでは子供とばかり、ただ子供とばかりいっしょになっていました。それは、みんな僕のいた村の子供たちで、連中はいずれも小学校へ行っていました。僕が教えていたわけじゃないんです。違います。教えるのには、ちゃんと学校の先生でジュール・ティボーという人がついていました。もっとも、僕も教えることは教えたことになるかもしれませんが、どちらかというといっしょにいたというだけのものです。そうしてまる四年も過ごしたわけです。
 
それどういう状況? と思うんですけど、ムイシュキンは、なんだか普通なら入らないところに入りこんでしまう。むかしはあいまいなシステムで物事が運営されていたから、主人公は即座には追い出されないのかもなあ、と思いました。ムイシュキン公爵はこんなことを言うんです。

まだ小さいからとか、聞きわける年にはなっていないとかいう口実をつくって、何事によらず、子供に隠す必要はないことです。これこそ実に悲しむべき、不幸な物の考え方です! 子供は、親たちが自分たちをすっかり赤ん坊あつかいにして、なんにもわからないものと思い込んでいることを、実によく見抜いています。

若い頃にドストエフスキーに耽溺した男が父親になって、こういう教育方針を持ったりしたこと、あっただろうなあと思いました。ムイシュキン公爵は、大人たちからすごく警戒されたり、子どもたちから石を投げられたりもするんですけど、変なことだけを言うわけでは無いんです。うわっと思うことを言ってくる。もう、発言を読んでるだけで楽しいんです。公爵はこんなことを言う。

われわれはお互いに何一つ子供に物を教えることはできないのに、子供たちは僕たちに物を教えてくれる

「子供と暮らしていると、魂はなおるものです」とか言う。結婚できない男なのに。
 
 
公爵は哀れなマリイの話しをするのでありました。この短いマリイの物語が、どうもこの小説の全体像とも共鳴しているように思います。作中で「迫害があったために子供たちとはかえっていっそう親密になりました」という公爵の発言が妙に気になりました。そういうことってあるんだろうか……。それから、ドストエフスキーの書き記す「システム」という言葉。これがじつに不思議な表現なのでした。
 
 
ムイシュキンは、大人でもない子どもでもない、賢いような馬鹿なような、なにか特殊な存在として描かれてゆきます。あとドストエフスキーはじつの子どもへの愛があったわけで、作中の公爵は完全にひとり者の独身者で、その二重性が魅力になっているんじゃないだろうか、とか思いました。
 
 

 
 
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