死者の書 折口信夫

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今日は折口信夫の「死者の書」を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
折口信夫は、民俗学や国文学を研究した学者なのです。学者でありながら文学者としても活躍したという特別な作家です。怪作というか傑作というか、とにかく問答無用で面白い本です。
 
 
暗闇の中で蠢いている一人の死者が、はたして自分が何者だったのかを思い出そうとしている。自分は殺された。もはや服さえも朽ちるほどの時間が経っていた。主人公は、二上山に祀られる大津皇子(滋賀津彦)の霊なのですが……。
 
 
この小説にはさまざまな音が書き記されています。そのおどろおどろしいオノマトペは他に例を見ないほど強い印象に残ります。これはかなり恐ろしい小説だと思います。民族と歴史の暗部が生々しく描き出されている本です。
 
 

    巌ばかりであった。壁も、牀も、梁も、巌であった。自身のからだすらが、既に、巌になって居たのだ。
 

 
という表現は、たしかに神道の気配が色濃い山をゆくと実感できる、古代の気配そのものだと思います。民俗学を、頭では無く肌で直接実感できる書なんじゃないでしょうか。暗澹たる想像力と、民俗学研究の成果が結合した重厚な文学になっています。wikipediaに記されている「死者の書」のあらすじを少し紹介します。
 
 
平城京の都の栄える頃のことである。春の彼岸の中日、二上山に日が落ちたとき中将姫は尊い俤びとの姿を見た。 千部写経の成就に導かれ、非業の死を遂げた大津皇子の亡霊とまみえ、尊い俤びとと重なるその姿を蓮糸で曼荼羅に織り上げた姫は……。続きは本文をお読みください。1章からはじまり20章で終わる中編です。
  
滋賀津彦は暗黒へ向けて叫びます。
  
    おれは、此世に居なかったと同前の人間になって、現し身の人間どもには、忘れ了されて居るのだ。

    外の世界が知りたい。世の中の様子が見たい。

    耳面刀自(みみものとじ)。おれには、子がない。子がなくなった。おれは、その栄えている世の中には、跡を胎して来なかった。子を生んでくれ。おれの子を。おれの名を語り伝える子どもを――。
 
 
これが発表されたのは1939年で、その当時の時代性もこの物語に映し込まれているように思えました。また一方で、民俗学者が描く平城京の春の描写がじつに優雅で、さまざまな魅力が封じこまれた物語だと思います。前半は巌の峻険さと死者となった男の恐ろしさ。中盤からは、嫋女(たわやめ)と、中国から伝来し日本独自の発展を遂げた仏教を描いていてこの対比が美しいです。万葉集を編纂した大伴家持も登場するんです。オールスターキャストという感じですね。
 
 
はた はた ちょう ちょう と、美しい織物をおる姫の姿が印象に残ります。
 
 


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 ここからは新サイトの「ゲーテ詩集」を紹介します。縦書き表示で読めますよ。
 幼かった頃の夢想のことを、ゲーテは「黄金の空想よ」と記します。ゲーテの詩には、神話的なものと理知的なものが混在していて、これが魅力のように思います。ゲーテはゲルマン神話と、とくにギリシャ神話の影響が色濃いようです。
 この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。

  
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