新藤兼人監督の100年

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 今日は、先月29日に老衰で亡くなられた新藤兼人監督の映画と本のいつくかを紹介します。ぼくは映画業界とまったく無縁な、たんなる創作志望者なのですが、今回は新藤兼人監督の芸術に関して紹介してみたいと思います。新藤兼人監督は生涯を芸術の制作に携わった方で、100歳まで映画と脚本制作を続けられました。

新藤兼人 100歳の流儀
新藤兼人 100歳の流儀


 

 新藤兼人監督がもう数十歳若ければ、震災後の生を描き出す芸術を創ったであろうことは想像に難くない、と思います。それは原爆投下後の広島でGHQからの言論統制がまだ厳しかった時代に原爆映画の構想を組み立て、GHQが日本を去ったと同時期に「原爆の子」という映画を公開した経歴を見ても明らかです。新藤兼人監督はつねにその時代時代の危機に正面から挑んで、個人の力強さや個人と社会とのぶつかり合いを映画化してゆきました。震災後の新藤兼人監督がその後も長く生きておられたなら、はたしてどのような方法で、なにを、どのように表現し時代に訴えかけていったのでしょうか。新藤監督は、大きな不和にぶつかっていって破れたり挫折したり生き残っていく人々を描いてゆきました。どうして当時盛んに作られた数多の映画独立プロが廃業していったのに、新藤監督の会社だけが生き残り続けられたのか。数多くの戦友が亡くなるという激戦の時代になんとか終戦まで生きた新藤兼人監督が、戦後どういうようにアメリカ型の資本主義とは異なるかたちで生きてゆけたのか。新藤兼人監督の映画創作人生を本や映画を通して追ってゆくと、謎であることや、学びたいことがたくさん残されているように感じます。
 
 
 新藤監督映画の特徴を紹介してみます。新藤監督は、松竹という大会社の映画創作をかなり知り尽くした後に独立し、いわゆる集団芸術をやってゆかれました。新藤監督の創作物とその創作秘話を読んでゆくと、新藤監督は「両立」というのをいつも力強く押し出しているように思えます。芸術をやるんだというのと興行をやるんだという、この本来なら相容れないはずのものの2つの両立。普通は一般人には認知されないような芸術か、商業主義になってしまって作家性なんか無いというような商売中心の制作かというような片寄った制作になってしまうところを、芸術と興行とを両立させています。それから個人の力と集団の力の和合というのが出来上がっていて、脚本は一人きりで自由に書いていって、映像制作は皆と出来るだけ距離を詰めて一緒にやってゆく。個人の力と集団の力が両輪になっていて力強い作用が起きている。深刻ということとユーモアということの両立も、新藤兼人映画の特徴だと思います。
 
 
新藤兼人 一枚のハガキ
 
 新藤兼人監督の最後の作品となった「一枚のハガキ」は、自分のすぐそばに居て、死んでしまった人に対する六十数年の思いが込められている映画です。機会があれば、ぜひご覧になってください。
 
 
 亡くなった人に対して一生礼儀を尽くしてゆく。上手くゆかないことをなるべく隠さない。というのが新藤監督の興味深い主義だと思います。長く活躍されたのには理由があるんだと、思えるのです。ぼくが活躍できないのにも理由があって、それは大きな力を持つ人々の創作物を借り受けてごまかしの自己表現をしてしまっているからで、そういうのを改めないと先に進めない。ぼくは自分自身の小さな創作物と、声をかけてもらった出版社との方針とがまるで噛みあわず、なかなかうまく創作環境を作れないということで悩んでいた時期に新藤兼人監督の映画と本とに出会ってそれを読み込んでいったのですが、新藤兼人監督の創作物はとても読み応えがありました。ぼくが知りたいと思っていることの、一つの答えのかたちが指し示されていました。戦中を生きて戦後に文化人として活躍した方というのは、個人的にも社会的にも大きな問題を克服してきたわけで、つまり大きな挫折に直面した人にとっては、もっとも参考になる時代の人々だと思うのです。
 
 
 新藤兼人映画監督は生前の取材にて、このように述べておられます。
「僕が若い人に言いたいのは、駄目だと言われたときに、自分で自分を負けに追い込むようなことを思わないでほしい」
 そうして新藤兼人監督が文化勲章を受章された時には、取材陣に対してこのように述べています。「文化勲章を受賞したからといってお客さんが入ってくるとは思えないんですが。ぼくは社会の底辺を支えている人たちのですね、哀歓を描いていきたいと思っているんです」
 
 
 戦中を生きて戦後文化を担った方々は、「なにを得たか」よりも「なにを克服したか」ということを重視しておられるように思います。「挫折に直面した」という経験をした人にとって参考になるのは、戦後すぐを生きてゆかれた人々である、ということが言えると思います。
 
 
 新藤兼人監督の本と映画とに学んでみると、新しい発見があると思います。

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 幼かった頃の夢想のことを、ゲーテは「黄金の空想よ」と記します。ゲーテの詩には、神話的なものと理知的なものが混在していて、これが魅力のように思います。ゲーテはゲルマン神話と、とくにギリシャ神話の影響が色濃いようです。
 この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。

  

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