ゲーテ詩集(33) 生田春月訳

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今日は生田春月訳のゲーテ詩集(33)を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
今回の詩は、神々と善について描かれています。うわっと思うくらいこうごうしいことが書いてあるんですが、この詩を翻訳した生田春月が、ゲーテとはすごい距離感を感じた、と記していてですね、ではその生田春月がどういう詩を書いていたかというと、こういう詩を残しているんですよ。一部を紹介します。

阿呆の反逆
 —反逆者ピエロオのとんぼがえり— (生田春月詩集3 P.408)  生田春月
 
 
おれは苦痛を味はひに生れて来た男だ、
おれが受ければ、快楽も苦痛に変る、
どんな善いものもおれの手に入れば悪くなる。
ゲエテの西東詩集を見て、生活的宦官に
生れた自分を哀んだといふその人も、
おれにくらべれば遥かに善く生きた人だ。
おれは生きる力ある時に生きるを忘れ、
恋してはならない時に恋をしたのだ。

おれはドン・ファンでなかった、
カサノヴァでもなかった。
彼等の生涯を嫉み讃へる
みぢめな失恋の詩人にすぎないのだ。
むなしく無花果の葉につつまれて
おれの生涯は葬られるだらう。
エデンの園の初熟(はつなり)の無花果、
時おくれに摘み味ははうとして、
忽ち追放の鞭を受ける、
ジャズの世界に於ける末世のアダムであらう。
 
 
ほかにも、まるでドンキホーテが書いたような詩も残しています。こんなのです。
 
 
世界一周
して来たら、
お嫁になって
あげますと
女に云はれて、
ぐるぐると
地球の上を
ひとめぐり。

てくてくてくてく
てッくッて
アメリカボオイの
膝栗毛
  
それで、主人公が世界を旅しながら奇妙な恋をしてですね、最後こう書いています。
 
てくてくてッくり
てくる路、
通ふ恋路も
なんのその、
長いわ、長いわ、
世界一
地獄と天堂のあひだほど。

やァイ、やァイ、
アメリカボオイ、
長いな、長いな
鼻の下、
さすがアメリカ、
世界一、
日本はダメだよ、
おれもダメ。
 
 
生田春月って、ニーチェやゲーテの作品を原文で読んで翻訳して、かなり賢い人だったんですが、愚について非常に大きな興味を持っていたんだなあということが詩集を読んでいると判るんですよ。自分の書いた詩集のことを、禁断の書だと名付けたりしているんです。また、芥川龍之介について黙考しているようで、そのこともいくつか詩に記しています。生田春月は、詩集のはじめにこう書いているんです。一部を紹介します。
 
 
禁断の書に

禁断の書、不許他見(たけんをゆるさず)と表紙に書きて、さびしく笑ふ。
つひに人には見せぬ詩を
われも書きしが、生きのびて。

ひとり書きつけ、ひとり歌ひ、
涙ぐみつつ、くりかえす。
禁断の詩人となりて、
われもかへりぬ、いにしへに________




ゲーテは記します。

見よ、自然は
無感覚だ
太陽は悪をも
善をも照らす
また月も星も
善人とおなじく
悪人にも照る
 

 
 
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 ここからは新サイトの「ゲーテ詩集」を紹介します。縦書き表示で読めますよ。
 幼かった頃の夢想のことを、ゲーテは「黄金の空想よ」と記します。ゲーテの詩には、神話的なものと理知的なものが混在していて、これが魅力のように思います。ゲーテはゲルマン神話と、とくにギリシャ神話の影響が色濃いようです。
 この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。

  

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