からすうりの花と蛾 寺田寅彦

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今日は寺田寅彦の「からすうりの花と蛾」を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
寺田寅彦は、植物学者なんじゃないの、と思うくらい、仔細にカラスウリのことを記しています。グーグルで「からすうり」と「蛾」の画像検索をしてみたんですが、どちらも不気味なほど生命力に満ちている。それがじっさいにはどういう生態であるのかを、寺田寅彦は随筆に描いています。
 
 
寺田の植物に対する筆致は、静止画では無くて、完全に動画で、植物がどのように動くのかを多角的に描写しています。花は夜明け前いっせいに開くんだとか、つるの伸び方についてだとかを描いているんです。本文にこう書いています。
 
 
  からすうりの花は、言わば一種の光度計フォトメーターのようなものである。人間が光度計を発明するよりもおそらく何万年前からこんなものが天然にあったのである。
 
 
人の脳が解析し構築できたものごとよりも、生命全体が自然に実現してきたことのほうが、はるかに高度なんだなあと改めて思いました。そういえば、地球の生命のはじまりは、クマムシみたいに頑強な原始生物が、隕石の奥底に封入されていて、それが太古の地球上にみごと落下して、そうして水を得てから復活し、生きものとして栄えたのではないかという学説があるそうです。岩石パンスペルミア説とかいうやつです。
 
 
地球上の生命はすべて、かつて他の星でいちど栄えて、そうして滅び、最後の最後に岩石の最奥で生き残ったクマムシみたいな生きものが、何億年も仮死状態のまま宇宙を漂い、この大地で復活をとげた。この星の生きものはすべて、かつてどこかの星で滅んで、それからこの水の星で復活をした、そういう生きものかもしれないわけです!
 
 
本文と関係無いんですけど、ぼくが10年前に住んでいたマンションは高層にあって、生きものがまったく入り込めない部屋だったんですけど、あるとき鞍馬山を登山して、かなり奥地まで行ってから、靴底に土をたっぷりつけてマンションに帰ってきたんですけど、その土に百足の卵があったようで、それがマンション内部で孵化してしまい、あっと気づいた時には、外敵のまったく居ないベッドの片隅で繁殖しまくって、古本の紙を食いやぶりつづけ、部屋中でかい百足だらけになっちゃって、もうどうにもならなくなったことがあるんですよ。何匹退治しても無理でした。引っ越すまでずーっと百足天国になっちゃったんです。山の生命力って、えげつないなと思ったんです。
 
 
これは1932年に記されたものなんですが、寺田は蛾の群の行動原理や、米国の映画を紹介しつつ、大空襲が起こりうることをすでに予見しています。寺田は、画家たちの植物を見る目の無さを批判し、花鳥画や水墨画を記号としてしか認識できなくなった現代人を否定しつつ、自然界をこそ見ろ、と述べてから、こう記しています。
 
 
  花というものは植物の枝に偶然に気まぐれにくっついている紙片や糸くずのようなものでは決してない。われわれ人間の浅はかな知恵などでは到底いつまでたってもきわめ尽くせないほど不思議な真言しんごん秘密の小宇宙なのである。それが、どうしてこうも情けない、紙細工のようなものにしか描き現わされないであろう。
 
 
「花」という歌を思いだして、これをyoutubeで聴きながら、随筆を読み終えました。寺田は、植物たちに学ばない人間の未来は危うい、ということを仔細に描きだしているんです。
 
 

 
 
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 幼かった頃の夢想のことを、ゲーテは「黄金の空想よ」と記します。ゲーテの詩には、神話的なものと理知的なものが混在していて、これが魅力のように思います。ゲーテはゲルマン神話と、とくにギリシャ神話の影響が色濃いようです。
 この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。

  

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