与謝野晶子詩歌集(33)

今日は「与謝野晶子詩歌集」その33を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
今回もいくつかの歌と詩があるんですが、与謝野晶子は歌人であるだけでなく家族を支えた母なんだと、わかる詩がありました。与謝野晶子は子どもをおおく生み育てて、家事をつねに行って生きた人なのでした……。与謝野晶子は若い頃から批評の対象とされることが多かった歌人で、当人も自己批判として詩を書くことがあったのではないかと思いました。
 
 

 
 
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ノーベル小傳とノーベル賞 長岡半太郎

今日は長岡半太郎の「ノーベル小傳とノーベル賞」を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
ドストエフスキーが「白痴」作中にて、ノーベルについて言及していたので、今日はこれを読んでみました。えーとノーベルというと、スウェーデン生まれでパリやイタリアに住んだ人なのでドストエフスキーとぜんぜん関係なさそうに見えたんですけど、じつはノーベルの父は「ロシヤ政府の用達を勤め」て「兄は父の職を継いで」「ロシヤ」に出入りして、ロシア農民に貢献した。ノーベルの「兄がロシヤに盡した功勞は、甚大なものがあつた」と記しています。なるほど、だからドストエフスキーがノーベルについて非凡な天才なんだと作中でとつぜん書いたわけだと思いました。長岡半太郎の、この文章が印象に残りました。

アルフレッド・ノーベルは、その研究題目より推せば、恰も軍備擴張に努力した科學者でゝもあつたかと想像される。しかるに、その遺言を讀めば、心中大いに平和を熱望していた證據を發見するのである。
 
 
それから、湯川秀樹がノーベル賞を受賞したことについて、ノーベルの考え方のことを、こうも記していました。
 
 
特に著眼すべきは遺言に、賞を受くる人は國籍の如何を問わずと記してあり、その博愛の精神が言外に浮動している。彼は實に世界の人であつた。
 
 

 
 
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白痴(41) ドストエフスキー

今日はフョードル・ドストエフスキーの「白痴」その41を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
今回は、将軍の「不幸な最後」の前半部分の事件が描かれています。将軍はムイシュキン公爵にとつぜんこう話しかけた。

大事なことをお話しいたしたいんで。つまりですね、ムイシュキン公爵、態度にまごころがこもって、感情の気高いことを信頼し得る人として、あなたに打ち明けようと思い立った(略)大事なお話を聞いていただくのに、いつがよろしい

将軍は、話しが重大なので、今すぐには伝えられないのだと言うんです。
 
 
それからレーベジェフは、身近に大金を盗んだ泥棒が居ると宣言して、いろんな人を犯人扱いしたわけですけど、けっきょくは自分の過失で金を落としただけだった。本文こうです。

フロックを掛けておいた椅子の下にあったのです。してみると、紙入れがポケットから床の上へ滑り落ちた…………
 
ただの単純なミスなのに、レーベジェフはまだ、ポケットに穴が空いたのは隠謀で犯人に金を盗まれたのだと言いはじめる始末なのでした。
 
 
将軍は何かとても重大なことを、主人公のムイシュキン公爵に告白しようとしている。次回に続きます。
 
 

 
 
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与謝野晶子詩歌集(32)

今日は「与謝野晶子詩歌集」その32を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
「ゆあみして泉を出でし」という歌を読んでいて……与謝野晶子は、紫式部くらい高貴な人にも、それからとても貧しい人にも、どちらにも通ずる詩世界を作ったことが、最大の魅力なんだ、と思いました。
 
 
「うぐいす、そなたも雪の中」という詩を読んでいても感じるんですけど、近代は豊かさと貧しさの交わる中間地点でもあったので、自分たちが持っていて気が付かなくなった豊かさを再認識させてくれるところがあるんだと思うんです。薔薇の言葉も美しかったです。
 
 

 
 
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自然と人 有島武郎

今日は有島武郎の「自然と人」を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
これから有島武郎の文学を読んでゆきたいと思うのですが、とりあえずは随筆をいくつか載せていってみようと思います。
 
 
今ちょうどドストエフスキーの長編小説を読んでいるんですけど、ドストエフスキーは自然界をほとんどまったく描かなかった、にもかかわらず物語の中心に大地という概念を置いた。その謎を追っていたら、北海道の自然界を長らく見てきた有島武郎がこう書いていました。

人は自然を美しいといふ。然しそれよりも自然は美しい。人は自然を荘厳だといふ。然しそれよりも自然は荘厳だ。如何なる人が味到し色読したよりも以上に自然は美しく荘厳だ。
 
ロシアと言えば、ゴーゴリが「外套」で、厳しい自然界の内で生きる男を描いた。ドストエフスキーはそのゴーゴリの外套の中ということをずっと考えてきた。暖かい島国では田中一村のような自然界の豊かな描写が積み重ねられてゆく。いっぽうで冷害や凍土が農村に重大な問題をもたらす土地と時代なら、もっと自然界との厳しい対峙が物語の中心に置かれる。雪国と文学というのはどういうものだろうかと思いました。
 
 

 
 
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白痴(40) ドストエフスキー

今日はフョードル・ドストエフスキーの「白痴」その40を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 

ドストエフスキーは、人物の書き分けが明瞭なのにもかかわらず、作中で人物同士の対立と和解が繰り返し起きていて、心情が二転三転するところが、読んでいて引き込まれます。
 
  
ガーニャと療養中のイッポリットは、前回はげしい諍いをしたのに、和解の態度を示している。病者を見舞って、療養のために家を貸すという提案もした。イッポリットはどうも、死なずに済んだようである。
 
 
ドストエフスキーの登場人物は、悪態をつきまくるんですけど、それがなんだか、喧嘩するほど仲が良い、という感じで展開する。将軍は、イッポリットに妙な具合にぶつかっている。その悪口の言い方が変な調子なんです「この男はまるでネジクギだ!」とか言うんです。本文こうです。

そうだ、螺旋釘ねじくぎだ!わしは何の気なしに言ったんじゃが、これは——螺旋釘じゃ!なぜというて、こいつはわしの胸を螺旋釘でえぐるんじゃから、それに全く相手の見さかいもなしに……螺旋釘のように……
 
「こいつは螺旋釘だ!」と将軍は叫んだ、「こいつはわしの心や魂を、螺旋釘でえぐるんじゃ!こいつはわしに無神論を信じさせたくてしようがないんじゃ!やい、青二才!貴様なんぞが、生まれてもいない前に、わしはもう背負いきれぬほどの名誉をになっていたんだ。貴様は二つにぶっ切られた嫉妬やきもちの虫だ、……


将軍には周囲に居る人がぜんぶ敵に見える。実の息子とも対立している。ガーニャはついに怒りだした。原因は、将軍のはげしい虚言癖にあった。将軍は自分を良く見せかけようと、存在しない部下の話しをしつづけたんですが、そんな人はこの世に居ないでしょうと、イッポリットは事実に基づいて諌めたんですよ。そうしたらウソがバレたことが腹立たしくて、将軍はしきりに怒りはじめてしまった。本文こうです。

取るにも足らない侮辱が、彼をして憤激の極に達せしめる機縁とならなければならないようなことになったのである。
 
それで将軍は家を出ていった。じつは病者イッポリットは、将軍のことを頭がおかしくなったとは思っておらず、こう発言しています。

あの人は用心深く、疑い深くなってきて、何から何まで探りを入れて、実にことばをつつしんでいますよ……。

イッポリットの病状が回復してきて、あの恐ろしい悪夢も、彼の中からだいぶ消え去っていて、知的な人間に戻っている、その発言と描写がすてきでした。
 
 
彼はすでに新しい療養場所を見つけたので、ガーニャやワーリヤがいるところから出てゆく。対立していたガーニャと最後の会話を繰り広げる。本文と関係無いですけど、ぼくは立つ鳥跡を濁さず、という生き方をしたいんですけど、たいてい濁して逃げる感じになってしまう。
 
 
イッポリットはちゃんと人々と別れて新天地へ行きたい。最後の会話って、なんだか、そうか、うーむ、そういうのは誰でもあるわけで、ガーニャは悪いことばかり考えてる奴なんですけど、なんだか親近感がわくなあと思いました。前回、ガーニャとイッポリットでこういう対立があったんです。イッポリットの発言はこうです。
 
(※イッポリット)のほうから、できるだけ簡単に。僕は今日は、二度か三度、やっかい者だというおとがめを受けましたが、それは不公平ですよ。あなた(※ガーニャ)こそ、僕をここへび寄せて、僕を係蹄わなにかけたじゃありませんか。そして、僕が公爵に恨みを晴らそうとでもしているようにお考えになったのです。(※カッコ内は注釈)
 
イッポリットはガーニャに対して「あなたに良心を思いおこさせておいて、別れて行くということと、それに、僕たちが、今お互いに実によく理解し合っているということだけで十分なんです」と宣言する。ところが病床を用意してあげたガーニャの妹ワーリヤは怒りはじめる。イッポリットはこう、立場のことがどうもわかってない。困ってるところをちゃんと世話してくれた人々にたいして「大目に見てあげる」とか言うんですよ。上下関係の概念がないのか、と思って笑いました。イッポリットは異様な若者なんです。本文こうです。
 
僕はね、一生涯、僕をいじめ通して、こっちでもまた一生涯、憎んでいたあの無数の連中の代表者を、せめて一人だけでも愚弄ぐろうしてやって、もっともっと落ち着いて、天国へ行きたいと、こう思いましたよ。

愚弄をしない人だけが、天国に行けるんじゃないのかなとか、そういうことはイッポリットは考えない。ガーニャだけは愚弄してやろうと、そう考えている。
 
 
「あなたは傲慢な凡庸性そのものです。自己を疑うことのない、泰然自若たる凡庸性そのものです。あなたは月並み中の月並みです!」って彼の妹が居る前で言うんです。ムチャクチャなんです。もうすぐ死ぬっていうと美談にしますよねえ、普通は。ドストエフスキーは牢獄にいる連続殺人犯の最後を見ていて……こういう美化しない人間を書くようになっていったんだろうなあとか、空想しました。
 
 
一方で恩を仇で返されたかたちのガーニャとワーリヤなんですけど、べつの幸福の可能性が転がり込んできたことについて話しはじめた。美女アグラーヤから、ある謎めいたお願いごとをされた。その内容はまだ判らない。次回に続きます。
 
 

 
 
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与謝野晶子詩歌集(31)

今日は「与謝野晶子詩歌集」その31を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 

なにとなく君に待たるるここちして出でし花野の夕月夜かな

……というすてきな歌をよんでいて思ったんですけど、人生を確実に歩めた人はこう、空想がそのまま将来の現実にうまく繋がっていっている、ように見えます。ダメ人間が恋の歌を歌うと、ただのストーカーだと思われてしまう。心の内部の部分では、おそらく与謝野晶子のように美しくてウキウキするような世界がたいてい広がっていると思うんです。でも現実には上手くいかないから、内面もダメであぶない人なんだと誤認されてしまう。文学は作者の思いを読むこともできるわけで、その機能についてなんだか考えていました。「だやさしきは明日あすの時」という一文が印象的な詩も美しかったです。
 
 
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