猫又先生 南部修太郎

今日は南部修太郎の「猫又先生」を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
新しくやって来た、赤毛でヒゲの先生が、どんな人なのか……というところから物語が始まるんです。けっこうふざけた話しなんですけど、100年前のこう、楽しい学校の風景、みたいなものが垣間見られました。じっさいはどうだったんでしょうか。なにか特別な空間だったように思います。
 
 
ちょうどこう、漱石の「坊っちゃん」から現代の純文学へ向かう中間のところの、小説だという印象でした。「偶像化」という言葉は漱石はほとんどまったく使わなかった。小説では唯一『幻影の盾』という作品でこれを1回だけ用いている。いっぽうで三田文学の南部修太郎は今回の「猫又先生」でこの「偶像」という言葉を繰り返し用いている。南部は小説家と言うよりも編集者の仕事をたくさんやっていたようで、小説の方もそういう経歴が出てしまっていて、ちょっとメタ化した作品になっている。
 
 
子供の眼が見た、皮肉な世界がなんともいえず、生徒が先生に人生論をさとすところで、笑いました。ふだん編集をしている人が作品を書いて、ふだん読んでいる人が書く方にまわって、という転倒した感じのおもしろさがありました。
 

「だが、先生はやつぱり先生をやつてられるのか知ら……」「さ、それが確にさうなんだ。その時、二人が擦れ違つた途端にひよいと振り向くと、先生の少し猫背になつた肩の處にチョオクの粉が白く降り掛かつてゐるぢやないか。それが、先生が相變らず先生であることを證據立ててる……」
 

 
 
こちらのリンクから全文読めます。(縦書きブラウザの使い方はこちら
https://akarinohon.com/letters/nekomata_sensei.html
(約10頁 / ロード時間約30秒)
iPadやノートPCなどに対応した、シンプル表示の縦書きテキストはこちら
 
 
 
 




top page ・本屋map ・図書館link ★おすすめ本 ・本を購入する


見えざる敵 海野十三

今日は海野十三の「見えざる敵」を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
これは古典的なSF小説なんですけど、上海が舞台の1945年以前に発表された科学小説ってなんか独特な雰囲気あるなあと思いました。海野十三は未来のことを見据えつつ書いていて、読者としては過去の世界観を見つめようとしてこれを読んでいるわけで、時間軸が交差していて、そこが絶妙な気配を生じさせているように思うんです。
 
 
透明化する新技術と、失踪事件というのが混在した状況が描きだされていて、オチが見えてくる寸前のところで謎が生じている。謎が謎のまま存在している時間に、物語の魅力があるなあ、と思いました。
 
 
なんだか現代にも共通したことが描かれていて、100年経っても起きていることはそんなに変わらないのかもしれない、と思いました。
 
 

 
 
こちらのリンクから全文読めます。(縦書きブラウザの使い方はこちら
https://akarinohon.com/letters/miezaruteki.html
(約10頁 / ロード時間約30秒)
iPadやノートPCなどに対応した、シンプル表示の縦書きテキストはこちら
 
 
 
 




top page ・本屋map ・図書館link ★おすすめ本 ・本を購入する


人間椅子 江戸川乱歩

今日は江戸川乱歩の「人間椅子」を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
高級官僚と結婚して裕福な暮らしを営んでいる、佳子という小説家の元に、奇妙な手紙が舞い込んできた。「醜貌のやるせなさ」にさいなまれているストーカー男の懺悔録が、書き記されてゆくんですけど、これがすごい。
 
 
ちょうどこの小説自体が、懺悔室のようになっている構成で、なんともいかがわしい「悪魔の様な生活」が記されてゆく。不倫と、貧富の差と、境遇と、善悪を越えてこう、女に迫ろうとするこのストーカーまるだしの欲望が……。すごいとしか言いようが無いというか。
 
 
お金持ちが顧客である、オーダーメイドの椅子職人というのが絶妙な設定で、この「気高い貴公子に」なったような「フーワリとした紫の夢」を下支えしているように思います。子どもの頃すごいとおもった小説ですけど、大人になって読んでもやっぱりすごいです、これ。
 

…………私は考えました。これこそ、この椅子の中の世界こそ、私に与えられた、本当のすみかではないかと。私の様な醜い、そして気の弱い男は、明るい、光明の世界では、いつもひけ目を感じながら、恥かしい、みじめな生活を続けて行く外に、能のない身体でございます。それが、一度ひとたび、住む世界を換えて、こうして椅子の中で、窮屈な辛抱しんぼうをしていさえすれば、明るい世界では、口を利くことは勿論、側へよることさえ許されなかった、美しい人に接近して、その声を聞き肌に触れることも出来るのでございます。
…………
 
(※脱字を修正しました。2018年6月14日)
 

 
 
こちらのリンクから全文読めます。(縦書きブラウザの使い方はこちら
https://akarinohon.com/letters/ningen_isu.html
(約50頁 / ロード時間約30秒)
iPadやノートPCなどに対応した、シンプル表示の縦書きテキストはこちら
 
 
 
 




top page ・本屋map ・図書館link ★おすすめ本 ・本を購入する


火星の運河 江戸川乱歩

今日は江戸川乱歩の「火星の運河」を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
少年探偵小説で有名な江戸川乱歩はじつは、ハワード・フィリップス・ラヴクラフトの暗黒SFみたいな、謎の小説を書いていたわけで、今回は火星の物語です。
 
 
文体がかっこいいです。
 

頭の上には夕立雲の様に、まっくらに層をなした木の葉が、音もなくしずまり返って、そこからは巨大な黒褐色くろかっしょくの樹幹が、滝をなして地上に降り注ぎ…………
 
火星をこんなに豊穣に描いた小説家は、はたして他にいるんだろうかと思いました。まだ火星がどういうものか、その正体がよく判らない時代だからこそ、かえって魅惑的な空間になったのだ、という感じがしました。果てなく続く、まっくらな密林と、油のようにトロリとした沼に覆いつくされた火星……。
 
 

 
 
こちらのリンクから全文読めます。(縦書きブラウザの使い方はこちら
https://akarinohon.com/letters/kaseino_unga.html
(約10頁 / ロード時間約30秒)
iPadやノートPCなどに対応した、シンプル表示の縦書きテキストはこちら
 
 
 
 




top page ・本屋map ・図書館link ★おすすめ本 ・本を購入する


赤いカブトムシ 江戸川乱歩

今日は江戸川乱歩の「赤いカブトムシ」を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
これはもう完全に、小学校の3年生向けに書かれた、ひらがな中心の児童文学というか、子ども用の探偵小説なんですけれども、読んでみると面白かったです。
 
 
怪しい「黒マント」という男があらわれて、子どもたちがこれを、追いかけまくるんですけど……ハリウッドのテレビドラマみたいに、第1章のオチと次章の始まりが印象的なんですよ。2章の始まりがこうなんです。
 

森の中の、ふるいせいようかんのまどから、小さい女の子が、たすけをもとめてなきさけんでいた、そのあくる日のこと。
 
「たんてい七つどうぐ」とか「どこかに、かくし戸があるにちがいない。どこだろう。」とか「ちかしつへのおとしあな」とか「まっくらなほらあなのおく」とか「せいどうのまじん」とか……現代の最新ゲームでもしょっちゅう出てくるモチーフが描きだされていて、するすると読めました。
 
 
「まほうはかせ」と少年たちの闘いがおもしろかったです。
 
 

 
 
こちらのリンクから全文読めます。(縦書きブラウザの使い方はこちら
https://akarinohon.com/letters/akai_kabutomushi.html
(約10頁 / ロード時間約30秒)
iPadやノートPCなどに対応した、シンプル表示の縦書きテキストはこちら
 
 
 
 




top page ・本屋map ・図書館link ★おすすめ本 ・本を購入する


死のなかの風景 原民喜

今日は原民喜の「死のなかの風景」を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
これは「原爆小景」という詩集の作者原民喜が、戦後の1951年に発表した短編小説です。
 
 
原民喜の初期作品と後期の翻訳を見ていて、いちばん印象に残ったのは、氏はそもそも童話作家からスタートして、最後まで童話について考え続けていた、ということを知ったことです。原民喜はスウィフトの『ガリバー旅行記』のように優れた童話を、いつかみずから描きだして、子どもたちに読ませたかったのだ、と思いました。
 
 
「死のなかの風景」の作中に「彼は」という記述がいくつも出てきます。それから「映画会社」という言葉も。戦争中の人々の生を描きだしているんですが、童話作家として長年培ってきた三人称の物語描写と、日記や随筆とも通底している平易な文章とが入り混じった文体で、物語に引き込まれました。

 
この物語には、「彼」「妻」「母」「友」という記述がほとんどで、固有人名が書かれていないんです。誰からも語られなくなった、誰も思いだすことが出来ない死者について、原民喜が描こうとしたから……なのかもしれない、と思いました。
 
 
作中に描かれるブリューゲルの『死の勝利』という絵画については、野間宏が戦後すぐにこれを描きだしていました。終章も『暗い絵』と通底している物語構成でした。
 
 

 
 
こちらのリンクから全文読めます。(縦書きブラウザの使い方はこちら
https://akarinohon.com/letters/shino_nakano_fukei.html
(約10頁 / ロード時間約30秒)
iPadやノートPCなどに対応した、シンプル表示の縦書きテキストはこちら
 
 
 
 




top page ・本屋map ・図書館link ★おすすめ本 ・本を購入する


泡盛物語 佐藤垢石

今日は佐藤垢石の「泡盛物語」を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
家族のために厳しい肉体労働をしている男の、実話を記していった物語なんですけど、あまりに貧乏で、かまどに火を入れるための薪さえろくに手に入れられず、実家に帰る金さえ無い。20世紀末では、知識のある人は裕福だったわけなんですけど、昭和初期には貧困を描きだす文筆家が居て、そういう人が「天知る、地知る、我知る、人知る」という後漢書の言葉を言ってみたりする。
 
 
母が危篤となったという電報が届いたのに、貧しさのために母の家に帰ることが出来ない。肉親へ詫びの手紙を送ると、友人からこういう手紙がとどいた。この手紙の前文が印象に残りました。
 

前略、御健勝の由慶賀に存じ候。さりながら自今御窮迫との御事、それしきの境遇苦慮するに足らずと、遠方より御声援申上げたく候。
 
友人は、仕事を用意したから、母や妹の暮らす街へ帰って来いと言うんです。
 
 

 
 
こちらのリンクから全文読めます。(縦書きブラウザの使い方はこちら
https://akarinohon.com/letters/awamorimonogatari.html
(約10頁 / ロード時間約30秒)
iPadやノートPCなどに対応した、シンプル表示の縦書きテキストはこちら
 
 
 
 




top page ・本屋map ・図書館link ★おすすめ本 ・本を購入する