智恵子抄(10) 高村光太郎

今日は高村光太郎の『智恵子抄』その10を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
今回のは、「深夜の雪」という詩です。良いんですよこれ、2回読みました。ぼくはどうも防寒が万全でなくて、それでやっと冬の暮らし方に慣れてきた頃に、冬が終わってしまうんですが、この詩は寒い季節の、しずかな暮らしを描いています。
 
 

 
 
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 幼かった頃の夢想のことを、ゲーテは「黄金の空想よ」と記します。ゲーテの詩には、神話的なものと理知的なものが混在していて、これが魅力のように思います。ゲーテはゲルマン神話と、とくにギリシャ神話の影響が色濃いようです。
 この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。

  

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破戒(14) 島崎藤村

今日は島崎藤村の『破戒』その(14)を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
またも学校の校長が悪だくみをしているというのが、描写されております。藤村は、非常に特徴的な配役をするんです。最近気付いたんですが、藤村は、手足の動いている人々を熱心に描くんですよ。風間敬之進の家族の農作業とか、晩年に牛飼いをやっておった父のエピソードであるとか。
 
 
それの反例のように、机上の空論ばかりを言う人々を、悪しき人々としてこう描いているんです。モニターの前に座ってまさにこればっかりやっている自分が言うのもなんなんですが……。とにかく藤村はじっさいに苦労をして生活している人々を、くりかえし丁寧に描きだしています。
 
 
そのー、えー。戦国時代から江戸から明治にかけて、武士の生きざまは、その時代ごとにひどく両極端に片寄っていたように思います。まさに手足を酷使して生きる畜産や農をなりわいとする人々へのまなざしも、この3つの時代に変転しています。現代であっても世界中の富の半分以上を牛耳っている人々はたったの50人ほどだそうで、今も極端に片側へ向かいすぎて釣り合いがとれていない、という時代の只中にあるように思うんです。
 
 
それで、悪しき集団の代表者として描かれている、校長たちはどういうことをやっているかというと、丑松の人生がメチャクチャになるような生まれの秘密を掴みましたよ、死刑宣告だそれは、そりゃ大スキャンダルだ……というようなことを話している。
 
 
丑松は、子どもたちの世話にいそがしい。それから、休み時間に、尊敬する猪子先生に関する新聞記事を読んだ。原文はこうです。
 
 
  漠然ばくぜんとした恐怖おそれの情は絶えず丑松の心を刺激して、先輩に就いての記事を読み乍らも、唯もう自分の一生のことばかり考へつゞけたのであつた。其から其へと辿つて反省すると、丑松は今、容易ならぬ位置に立つて居るといふことを感ずる。さしかゝつた斯の大きな問題を何とか為なければ――左様さうだ、何とか思想かんがへを纏めなければ、一切の他の事は手にも着かないやうに思はれた。
『さて――奈何どうする。』
斯う自分で自分に尋ねた時は、丑松はもう茫然ばうぜんとしてしまつて、其答を考へることが出来なかつた。
 
 

 
 
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「破戒」登場人物表
 

 






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笑い 寺田寅彦

今日は寺田寅彦の「笑い」を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
これは寺田寅彦が、幼い頃の笑いの経験をいくつかひもとき、とくに体がくすぐったかったり緊張と緩和の位置関係がおかしいときに、笑うところを描写しつつ、それをもとに、どういう現象が起きると笑うのかを、論理的に思索している随筆です。
 
 
寺田寅彦はそもそも東大(旧帝大)の物理学者で、随筆は副業のようなものだったわけなんですが、小説家の文体とは明らかに異なる簡潔な筆記でありながら、その観察眼の鋭さはもう、歴史的作家を凌ぐこの、徹底ぶりがあって、感覚の再現度とでもいうんでしょうか、リアリティーというか、文章に引き込む力がとんでもないわけなんですけど、今回の随筆の前半部分を読んでいて、言葉だけで、こんなにリアルにものごとを書けるのか! と衝撃を受けました。後半はそれを元に、笑いの仕組みを検討しています。
 
 
寺田寅彦が伝えようとしていることよりも、その文章力の秀逸さに舌を巻きました。私小説とか、随筆が好きだという方は、ぜひちょっと読んでみてください。
 
 

 
 
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破戒(13) 島崎藤村

今日は島崎藤村の『破戒』その(13)を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
仕事場のある村に帰りついて、元の暮らしが始まる。同じ暮らしなんだけれども、なにか新しい感じがします。
 
 
主人公丑松が住んでいるところに、ある紳士がやって来るわけなんですが……。それがなんと、尊敬する猪子先生がこき下ろしていた、あの高柳なのであります。
 
 
これが、どうもおそろしい相手で、妻から丑松の家の暗い秘密を知ったんだと、主人公丑松に告白する。ついては選挙に協力しろと強要してくる。高柳の妻と、丑松と猪子連太郎先生の3者は、みな同じ出自を持っているんですが、ちょうど猪子先生の話がその場で持ちあがったときに、高柳が暗い目を光らせるのでした。原文はこうです。
 
 
  蓮太郎のうはさが出たので、急に高柳は鋭いひとみを銀之助の方へ注いだ。丑松は無言であつた。
 
 
丑松は、暗い過去を隠しているわけで、そこで沈み込んでしまう。こう書いています。
 
 
  遽然にはかに丑松は黙つて了つた。丁度、喪心した人のやうに成つた。丁度、身体中の機関だうぐが一時に動作はたらきを止めて、斯うして生きて居ることすら忘れたかのやうであつた。
 
 
今回、同じ出自を持つ同朋どうしで、厳しい対立が起きているんです。政治に絡む啀み合いに、丑松は巻きこまれるんです。高柳は、政治は汚い、と言うんですよ。原文はこうです。
 
 
  政事屋なんてものは皆なきたない商売人ですからなあ――まあ、其道のもので無ければ、可厭いやな内幕もく解りますまいけれど。

  これほど表面が華麗で、裏面うらの悲惨な生涯しやうがいは他に有ませうか。
 
 
高柳の提案というのは、暗い出自はお互いに、けっして他言せずにおこう、というものなんです……。丑松の情けないのは、相手の勢いに押されて、自分がいちばん大切にしていることを曲げてしまったり隠してしまったりする所なんですよ。今回も、私は猪子先生を尊敬している、とはっきり言えば良いのに、逆のことを言ってしまう。さらに丑松は、出自についてもとくに何も問題が無く、誤解にすぎないんだと言う。これは困るなあーと思いながら読んでいました。
 
 

 
 
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智恵子抄(9) 高村光太郎

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ヨルダンの凍る川。北極で海水浴するくらい、謎めいた美しい言葉です。調べてみると、たしかにヨルダンには雪が降るんです。幻想的な風景と、愛する人への言葉とが溶けあっていて、とても印象に残る詩です。
 
 
わが愛人は今くろき眼をきたらむ
をさな児のごとく手を伸ばし
朝の光りを喜び
小鳥の声を笑ふならむ
 
 
 

 
 
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破戒(12) 島崎藤村

今日は島崎藤村の『破戒』その(12)を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
この章で、ちょうど中間地点を越えたあたりになります。冒頭、叔父の一家と別れるときに、このようなシーンがありました。
 
 
 叔母が汲んで出す別離の茶――其色も濃く香も好いのを飲下した時は、どんなにか丑松も暖い血縁のなさけを感じたらう。
 
 
今回、元の暮らしへ戻るその旅路が描かれていて、あ、ここを書くのか、すごいなと思いました。ふつう、テレビのドキュメンタリー番組でも、取材を終えたあとの、その帰りの旅路は書かないですし、映画でもここはかなり省略すると思うんです。しかし、どうも藤村は、この移行するところを、かなり意識的に物語の中心に据えています。物語前半の引っ越しの時も、家財や荷物が町なかを移動しているところを印象深く描いています。
 
 
丑松が、暗い過去を隠して結婚した男女の、その隠蔽をはかっているところを目撃するところは、なんとも淋しい描写でした。
 
 
この古い物語が、なぜだか現代にも、強く共鳴してくるというのが、たいへんに不思議なんですよ。竹の皮に巻いたおむすびを持って、わらじをはいて旅をしている時代なんですよ。それなのに、ですね……。えー、この一文が印象に残りました。
 
 
  丑松は隅の方に両足を投出して、独り寂しさうに巻煙草を燻し乍ら、深い深い思に沈んで居た。
 
 
このあとの旅路に於ける自然界の描写がすこぶる良いんですよ。丑松は、仕事場のある飯山の村に帰りついたのでした。
 
 

 
 
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藤村の文学にうつる自然 宮本百合子

今日は宮本百合子の「藤村の文学にうつる自然」を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
藤村の「破戒」を今読んでいて、どうもぼくは作者の人生と、作品とを同時に見てゆきたいというふうに思うことが多いので、評論や解説を読みながら、作家藤村の姿を空想しているんですが、この宮本百合子が読み解いた藤村はじつに魅力的です。
 
 
かなりどうでもいいところなんですが、藤村の父は長髪で、紫の帯でそれを結わえていたそうです。なんか、すごいです。武士の姿とも異なるし、藤村の情景豊かで鮮やかな色彩の若菜集は、父ゆずりの性質から生まれたのかなあーと思いました。
 
 
原文はこうです。
 
  父というひとは、「それは厳格で」「家族のものに対しては絶対の主権者で、私達に対しては又、熱心な教育者で」あった。髪なども長くして、それを紫の紐で束ねて後へ下げ、古い枝ぶりの好い松の樹が見える部屋で、幼い藤村に「大学」や「論語」の素読を教えた。その父の案で、藤村は僅か九歳のとき、兄と一緒に東京の姉の家へ、勉強によこされたのであった。
 
またこう書いています。

  「生い立ちの記」をよんで見ると、国を出る迄末息子としての藤村が、お牧という専属の下女にかしずかれ、情愛の深い太助爺を遊び対手とし、いかにも旧本陣の格にふさわしい育ち方をしている姿がまざまざと浮んで来る。それが急に言葉から食物まで違う東京、母も姉もお祖母さんも傍にはいないよその家での明暮となり、小さい藤村が、故郷の景色を懐しく思い出し、故郷でたべた焼米や椋葉飯やを恋うた心の切なさはまことに想像される。


藤村の父は、息子に論語を教えつつ「行ひは必ず篤敬とっけい」であるように、ということを教えた。篤敬、ってこういう意味です
 
 
それから藤村は、ダンテの詩集と、芭蕉の句を愛読していたそうです。宮本百合子は、「若菜集」と「落梅集」を比較して、自然界への眼差しが、小諸の農民から見た世界観に近づいていって、幻想性を制限してリアルなとらえ方に変化していっている、と指摘しています。これは、小説「破戒」での農村の描写にも通底しています。藤村の文学上の歩みの確かさは、宮本百合子によれば「千曲川のスケッチ」のところに、その要点が刻まれている、と言うんです。原文はこうです。
 
  ……この時代、藤村の自然の見かたは、どこまでも人間の日常生活との連関に発足している。抽象的な自然の観念で、憧れ、愁い、或はおどるこころの対象として天然の風景に身を投げかけることは、もうやめている。人間がそこで生れ、育ち、働き、老い、而して生涯を終る環境、地方風土としての自然をこまかく観察し、描いている。雪の降りよう、作物の育ちよう、そこに生える雑草や虫の生活を眺めることは、そこで暮している人々の生活にある様々の風俗・習慣等の観察からのびて行った目なのである。
 
 
藤村の後期文学を読み解いた、以下の文章が印象に残りました。

  ……その花の色、濃い緑、枝もたわわな実の美しさだけに目をうばわれず、寧ろ、日夜を貫いて営まれている生命の流れ、その多様な変貌、永遠性などを感じるのは当然のことであろう。花の咲き乱れた樹より、冬枯れの梢の枝の美しさを愛し、そこに秘められている若さを鋭く感じる老境の敏感さは、私共に……
  ……

 
 
藤村に興味のある方は、ぜひこの「藤村の文学にうつる自然」を読んでみてください。



 
 
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