この初冬 宮本百合子

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今日は宮本百合子の「この初冬」を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
これはごく短い随筆です。宮本百合子がこれを書いた時期に何をしていたかというのを調べたのですが、「獄中への手紙」というのを12年かけて書いているんです。獄中への手紙が、どういうものだったかを、明確に記している文章がwikipediaに掲載されているので引用します。
 
 
  百合子は獄中の顕治を獄外から支えたが、自らもたびたび検挙され、1936年には懲役2年・執行猶予4年の判決を受けた。その後も検挙や執筆禁止などを繰り返し経験し、体調を害する事もあったが、粘り強く文学活動を続けた。顕治は1944年に無期懲役の判決を受け、網走刑務所で服役することになったが、日本の敗戦後に連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)が国内全政治犯の即時釈放を指令した事で、1945年10月に顕治も12年ぶりに出獄した。夫とかわした約900通の書簡はのちに二人の選択をへて、百合子の没後『十二年の手紙』として刊行された。
 
 
「獄中への手紙」を、こんど自分も読んでみたいと思います。夫が投獄されてから4年以上が経っている時期に、宮本百合子は、おもに幼子と教育に関する文章をいくつか執筆しています。
 
 
このころの新聞を探しだして読んでみたんですけど、驚くべき内容なんです。ぼくは新聞とかNHKとかが普通に好きなんですけど、1939年の第二次大戦の始まるころの、戦時中の新聞はもう目まいがするような構成なんです。すべてのページが戦争翼賛に費やされているんです。軍への批判が縮小するのはやむを得ないにしても、論説や表現の、多様性くらいはあっても良いはずなのに、あらゆるページが、帝国の戦争を翼賛している。幼児用ミルクや、花嫁衣装や、お醤油の広告にまで、戦争を美化する図画や枕詞が貼りついている。ウソでしょう、と言いたくなるような紙面構成なんです。ジョージオーウェルの「1984」に描かれた悪夢は、戦争への一極化をあまりにも極端に表現したもので、現実はそこまで完全には傾かないんだろうと思ってたんですけど、1939年の大手新聞社の文章はもう、オーウェルの1984を越えて一極化している。現実のほうが極端だったのか、と驚いたんです。
 
 
当時の新聞に比べると、戦前戦中の文学者の言葉は多岐にわたるものごとを描きだしているのが魅力だと思いました。宮本百合子の「この初冬」は、ちょっとした日常を描いた随筆で、重大なことが書いてあるわけでは無いんですが、やっぱり時代のおもしろさというのを感じました。自動車の運転と自家用飛行機の運転が、ほとんどまったく同じような特別な存在として、同列に描かれているのが、すっごく不思議な感じでした。宮本百合子は未来志向で文章を書いていて、SFっぽい記述になっている気がしました。
 
 
菊畑や米屋の話しが書かれているのですが、以下の文章が、当時の緊張した時代性を描きだしているように思いました。
 
 
  米のことが皆の心配の種になって、来月から七分搗と云われていた時、この米屋の前を通ると夜十二時頃でも煌々と電燈の光を狭い往来に溢らせていた。モーターが唸って、小僧は真白けになって疲れた動作で黙りこくって働いていた。ズックの袋に入れて札をつけた白米が店の奥に山とつまれた。馬力で米俵が運ばれて来たりした。東京市内だけでも一日に何軒とかの割合で米屋が倒れて行く。そういう話がある折であったから通りすがりに見るこの米屋の大活況は何となし感じに来るものがあるのであった。そこは朝夕郊外からの勤人が夥しく通る往来でもあったから、そういう男の人たちはどんな感情でこの米屋の店の有様を見て通るのだろうか。そんなことも思った。…………
 
 

 
 
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 幼かった頃の夢想のことを、ゲーテは「黄金の空想よ」と記します。ゲーテの詩には、神話的なものと理知的なものが混在していて、これが魅力のように思います。ゲーテはゲルマン神話と、とくにギリシャ神話の影響が色濃いようです。
 この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。

  

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