善蔵を思う 太宰治

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今日は太宰治の「善蔵を思う」を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
これは3年くらい前に1回読んだんですけど、もういちど載せてみました。薔薇を売りに来た女性の話が印象的でした。そこで太宰が嘘について記しています。太宰は作中にこう書いています。

私はとうとう、本当の事をさえ、嘘みたいに語るようになってしまった。

照れ隠しのように冗談を言う……という感じで、太宰は嘘を記しているような気がしました。太宰治は、いっけん嘘じゃないように見える、事実を述べたいのに嘘に結びついてしまう、事実か嘘か分からない虚を描きだしています。生活上やむを得ず嘘が混じってしまう。作中にはこう記されています。

……私だって、つては、このように、見え透いた嘘を、見破られているのを知っていながらも一生懸命に言い張ったことがあったのだ。その時も、やはり、あの不思議な涙で、瞼がひどく熱かったことを覚えている。

太宰治はよく、立場の弱い己を描きだしているんです。現実の太宰はもっとも愛読された近代作家ですし、著名人から絶賛されていて原稿料も出ていたわけだし、まったく立場は弱くないはずなんです。そのギャップが昔は理解できなかったんですけど、太宰の記す弱い心や立場というのはけっして嘘では無く、晩期まで一貫した心情だったように思えます。戦中戦後すぐは、検閲や労働環境が厳しく、小説家は未来の見えない暮らしをするしか無かったようにも思われます。ところで、太宰治がとくべつな服を着て訪れた西洋料理屋は、いまも営業しているようです。日比谷松本楼というお店です。

私は、その夜、やっとわかった。私は、出世する型では無いのである。諦めなければならぬ。

こういうことを書いているのに、戦中と戦後いちばん読まれた作家になったのが不思議だと、思いました。終盤の3行がすてきでした……。

 

 
 
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