万葉びとの生活 折口信夫

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今日は折口信夫の「万葉びとの生活」を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
折口信夫の本は難しくて細部まで読み込むことが困難なんですが、理解できる箇所もあって、読んでみると興味深かったです。「思想史よりは生活史を重く見る私共には、民間の生活が、政権の移動と足並みを揃へるものとする考へは、極めて無意味に見える。」という指摘は、元号の変わる時に、現代の評論家が指摘していた問題にも関係しているように思えました。近代の本を読んでいると、今の時代に分からないなと思うことがらが、なんだか遠回りして氷解することがある気がします。むつかしい言葉をやさしい現代語で書いてくれる人が居たら良いんだけどなあと思いました。本文では、記紀や古事記のことがいろいろ記されています。こういうのです。
 

(略)……すくなひこなとの競走に、糞ではかまを汚した童話風な話があり、あめのひほことの国争ひに、蛮人でもし相な、足縄投げの物語りを残してゐる。醜悪であり幼稚であることが、此神の性格に破綻を起さないのである。普通人其儘の生活を持つことが理想にもとるものではない。
 
 
『夫に対して嫉妬心を抱くな、感情的にならず冷静に話し合う事』という「女大学」の教えに対して折口信夫が、いやそうじゃない、嫉妬は必要なもので愛情と深い関わりがあって「愛の葛藤の道徳を認めてゐた」万葉人の時代には、理想的な生活には必ず存在していたのが、まさに嫉みだったと書いています。正確な記述はこうです。
 
……多くの女の愛情を、身一つに納める一面には、必、後妻ウハナリ嫉みが伴うてゐる。万葉人の理想の生活には、此意味から、女の嫉妬をうける事を条件とした様に見える。

妻敵メガタキうちは近世まで、武士の間に行はれてゐ」て「これを面晴れと考へる武士」がいたんですけど「教養あるものは、笑うてゐた」……復讐のためなら相手の家を「大ぜいで攻めかけて壊して来る。其が悪事とは、考へられてゐなかつたのである」という話しに、おどろきました。
 
 
現代の学者の話ならば、普通はえげつないことを書かないと思うんですけど、折口信夫の話を読むと、ホラー映画かサスペンス映画を見ているかのように、えぐい箇所があるんです。それでこの折口の批評としては、女大学をはじめとした多くの文献に嫉妬への関心が無い理由は「家庭生活に対してすこぶるる冷淡であつた」からだと指摘している。古事記や日本書紀には、嫉妬が記されていると、いわのひめのみことを見なさいと言うてはります。wikipediaで確認してみただけでも、そうとう面白かったです。
 
 
おおくにぬしは、実在したのか、しなかったのかという問題で、折口はこう指摘しています。

おほくにぬしの肉体は、或は一度も此世に形を現さなかつたかも知れぬ。併し、拒む事の出来ないのは、世々の出雲人が伝承し、醞醸して来た、其優れたたましひである。

古事記のオオクニヌシのことを中心に書いていました。wikipediaと同時に読んでみました。
 
 
折口信夫はオオクニヌシのことを大変重大視してるんですけど、そのオオクニヌシの性格を「愚かなること猫の子の如く」と書いたりもする。折口信夫のものの考え方はなんというか柔和なところがあるんだなあと思いました。オオクニヌシの危機に直面する技術のこと、長く生き残ってゆくことを書いています。
 
択ばれた人ばかりでなく、凡俗も機会次第に永久の齢を享ける事が出来るもの、と思ひもし、望みもした。此はおほくにぬしの生活を、人々の上に持ち来たさうとする考へが、外来思想によつて大いに育てられたものと見てよからう。
 併し初めには不死の自信がなかつた為に、生に執著もし、復活をも信じたのである。
 
ところで、現代ではオオクニノヌシ(だいこくさま)は、こういうように語られていました。このページも面白かったです。

 
 

 
 
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 幼かった頃の夢想のことを、ゲーテは「黄金の空想よ」と記します。ゲーテの詩には、神話的なものと理知的なものが混在していて、これが魅力のように思います。ゲーテはゲルマン神話と、とくにギリシャ神話の影響が色濃いようです。
 この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。

  
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