白痴(19) ドストエフスキー

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今日はフョードル・ドストエフスキーの「白痴」その19を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 

この訪問は彼にとっては危険を帯びたものであった。
 
といった文章で始まる今回の物語なんですけど、主人公のムイシュキン公爵はついに、暴漢ロゴージンの邸宅を訪れます。公爵は、冒険者みたいな役割も担っていて、その無垢な性格で、どんなところにも入ってゆくという印象があります。小説といえば、探偵とか刑事とかが居て、そのおかげで、いろんなところに潜入できて物語が奥深くなってゆくんですけど、ムイシュキンは無垢であるからこそ、どこでも勝手に歩けるわけで、特別なところまで入ってゆける。
 
 
ムイシュキンは、ほんらい見つけられないはずのロゴージンの住み家を一瞬で見つけてしまう。そういう超越した知力を彼は持っている。
 
 
暴君ロゴージンとナスターシャは結婚する可能性が高いんですが、非常にややこしい状態になっていて、この2人の間に立っているのが、異人のような存在のムイシュキン公爵です。彼は、ナスターシャがとても混乱をしているから、無理やり急いで結婚をするのは勧めず、彼女はいったん外国で保養をしたほうが良いと考えている。公爵は、結婚の邪魔はしないのですが「君といっしょになるのはあの人の破滅だ」と……「君にとってもまた破滅なんだ」と何度も忠告をしている。ふつうは……考察をせずにただ邪魔をするっていうことが現実には多いと思うんですけど、公爵はまるで逆で、普通じゃ無い。公爵の知力は、飛躍しているところがあって、予言的なことを急に言うんです。
 
 
「おまえを引っつかまえ何か毒でもくらわして殺してやりたかった」とさえ言うような暴君ロゴージンの前で、公爵はこう述べます。

僕はあのひとを『恋で愛しているんじゃなくて憐憫れんびんの情から愛している』んだよ。
 
結婚寸前の男女の間に入って、非常に危険なことを言っています。ムイシュキン公爵は、保身ということを考えないで、大事だと思うことをはっきり言う人なんです。だからこそ、あらゆる人から好まれているわけですけど……読んでいるだけでおっかない。
 
 
ロゴージンの凶暴さは、ものの考え方からにじみ出しているように思うんです。「おれはあの女に憐憫なんて少しも感じないんだ。それにあの女は何よりもひどくおれを憎んでいるんだ」と述べるんですが、混乱をしているフィアンセに対して、あり得ない心情です。普通なら、婚約を解消して無縁にならなきゃいけない。けれどもロゴージンは大金をかき集めるように、憎しみを自分の手元に集めてゆくんです……。話しを聞いていると、もう既に、ナスターシャに対する暴力が行われていた。
 
 
ドストエフスキーの父は、村人たちとの諍いの末に身罷った……ということを考えながら読むと、ロゴージンの人格の異様さにどうして自分たち読者が引き込まれてゆくのか、その理由が判るような気がしました。
 
 
次回に続きます。
 
 

 
 
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 この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。

  
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