白痴(42) ドストエフスキー

FavoriteLoadingお気に入りに追加

今日はフョードル・ドストエフスキーの「白痴」その42を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
将軍は重大な話しを主人公にはじめるのでした。ドストエフスキーは人の最後の生き方を描きだすことが多くて、そこがいちばんの魅力でもあると思うんです。将軍のことをこう書いています。

最初のうちから彼は、いくぶんへり下ったような様子を見せて、公爵と応対していた。——それはまぎれもなく、ある種の気位の高い、しかも、不当な侮辱を受けている人たちが、時として、上品なくつろぎを見せる時のような態度であった。声の調子に、なんとなく悲痛な感じがないではなかったが、それでも、優しい物の言い方をしていた。

将軍は、こう発言します。

わしがレーベジェフの家を出て行くのは、ねえ、公爵、実はあの男と絶交したからです。もっと早くすればよかったと後悔しながら、ゆうべ絶交しました。

将軍は自分でも戦場での出来事に関して明確な嘘を言ってしまっていたんですが、その親友だったレーベジェフも同じように戦場での武勇伝を、かんぜんにウソだと検証できてしまう状況で言ってしまう、大ウソを言う将軍は、仲間の大ウソにどうしてもガマンができなかった、ということを述べるんです。他人のウソについてはちゃんと判断できるのに、自分のウソについてはどうも理解できていないように思えて、こういうことはだれにでも起きてしまうような気がしました。
 
 
じつに幼い頃にナポレオンと戦って、ナポレオンに敵ながらあっぱれと言わせたというような……シンプルなホラ話も飛び出します。純粋無垢なこうウソなんですけど、将軍は流暢に話すんです。「子供として、わしは奥の奥まで、いわば、あの『豪傑』の寝室にまではいりこんだのですから」と将軍は言うのです。これらの100%のホラ話はおそらくもう、彼の中で事実として定着してしまったんだろうなと思いました。

ナポレオンの眼がわしのほうへ向くのです。不思議な考えがその眼をちらついている。やがて、『子供!』といきなりわしに言うじゃありませんか、『おまえはどう思う、もしわしが正教を採用して、おまえたちの国の奴隷を自由にしてやったら、ロシア人はわしに従うだろうか、どうだろう?』で、わしは『けっしてそんなことはありません!』と憤慨して叫んだのです。ナポレオンはびっくりして、こう言いました『愛国心に輝くこの子供の眼に、わしはロシア全国民の意見を読むことができた。……
 
ナポレオンは、パリに帰っていった……ここだけは史実なんですけど。それで「ゆめゆめいつわりごとを言うなかれナポレオン 敬白」というナポレオンからの短い手紙を受け取ったそうです。これがイヴォルギン将軍のいちばん大事な話だったようです。将軍は自分の大ウソのために住処を失って、行くところが無くなってさ迷っている。
 
 
おそらく将軍は理想的ななにかを求めてしまってその結果、ウソばかりを言うことになってしまったんだと思うんです。将軍は息子コーリャのすぐそばで倒れてしまった。とてつもない量のウソの中で、ここだけは誠があって本心なんだろう、と思うところもあるんです。読んでいると、そこで感情を動かされました。
 
 
次回に続きます。
 
 

 
 
以下の「シンプル表示の縦書きテキスト」をご利用ください。白痴は第50回で完結します。縦書きブラウザの使い方はこちら
https://akarinohon.com/migration/dostoevskii_hakuchi42.html
(約30頁 / ロード時間約30秒)
★シンプル表示の縦書きテキストはこちら
 
 
登場人物表はこちら 
 
★ドストエフスキー「白痴」をはじめから全巻よむ(※無料)
 
 


ヨコ書き1     ヨコ書き2     ヨコ書き3     ヨコ書き4

2
 
3
 
4



 
★ドストエフスキーの本を買う
 
 
 
 
 
 









明かりの本は新サイトに移行しました!

URLの登録変更をよろしくお願いいたします。



明かりの本 新サイトURL

https://akarinohon.com

(Windowsでも、なめらかな縦書き表示になるように改善しました!)

appleのmacやタブレットやスマートフォンなど、これまで縦書き表示がむずかしかった端末でも、ほぼ99%縦書き表示に対応し、よみやすいページ構成を実現しました。ぜひ新しいサイトで読書をお楽しみください。











 ここからは新サイトの「ゲーテ詩集」を紹介します。縦書き表示で読めますよ。
 幼かった頃の夢想のことを、ゲーテは「黄金の空想よ」と記します。ゲーテの詩には、神話的なものと理知的なものが混在していて、これが魅力のように思います。ゲーテはゲルマン神話と、とくにギリシャ神話の影響が色濃いようです。
 この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。

  
縦書き文庫の装画
装画をクリックするか、ここから全文を読んでください。 (使い方はこちら) (無料オーディオブックの解説)
(総ページ数/約10頁 ロード時間/約10秒)
 
『ゲーテ詩集』全文を読むにはこちらをクリックしてください













top page ・本屋map ・図書館link ★おすすめ本 ★書籍&グッズ購入 





 


Similar Posts:

    None Found