ドストエフスキーに就いて 片上伸

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今日は片上伸の「ドストエフスキーに就いて」を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
片上伸は、トルストイと比較しつつ、ドストエフスキーの特徴をこう記しています。

彼の性格の欠陥は随分人並外れたものである。彼は随分いろんな意味で底抜けである。その為に随分苦しんだり困ったりしている。それでいて彼はその苦しみや、それを招いた自分の性格の欠陥を真向から相手取って闘つてはいない。彼には自分の性格の矛盾というようなことを問題にして心を苦しめているようなところがない。特別にその矛盾や欠陥をどうかしようとしたりしているところがない。

それでドストエフスキーの謎めいた魅力のことをこう書いています。
 
ドストエフスキーは実にどういう意味に於いても「猫のようなエナジー」を有った人であった。
 
ぼくは哲学者ウィトゲンシュタインの生き方を、ずっと調べて追いかけているんですけど、このドストエフスキー論で述べられているsimplicityという言葉に面白さを感じました。ウィトゲンシュタインはその初期哲学に於いても、複雑に入り組んだ哲学問題を論じるにあたって、「人の知ることはすべて三語で語られうる」というキュルンベルガーの考えを述べ、さらに多くの哲学問題は、語りえぬことを記したにすぎず、それは沈黙するより他なく、すべての哲学問題は解決したと述べていて、極めてシンプルに全体を捉えた。ところがウィトゲンシュタイン本人とその周辺環境は複雑に入り組んでいて、単純では無い問題が堆積していた。片上伸はドストエフスキーについてこう記しています。

彼は寧ろ珍しく幸福な人だと言わねばならぬ。彼の性格の複雑深刻を一貫するシムプリシテイーの力を解する人ならば、必ず彼を幸福だということに同意するであろう。
 
ドストエフスキーについて論じられた「彼の性格の複雑深刻を一貫するシムプリシテイーの力」という指摘は、これはウィトゲンシュタインにもある箇所で当てはまる考えだなと思いました。ドストエフスキーの善悪の描き方は、非常に独特なんです。ヒーローものの映画や、悪辣な小説とは完全に異なっていて、一枚岩では無い、すごいリアリティーを感じるんですけど、今回の片上伸の文末の指摘がドストエフスキーをみごとに言い表しているように思いました。
 
 

 
 
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 この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。

  
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