今日は夏目漱石の『門』その18を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
宗助がついに、旧友と再会するのか、と思ったらまったく違っていました。ここに来て急に、雰囲気を変えて、題名通りの「門」が登場したんです。かなり強引な展開で、のちの批評家からおおむね不評だった、という評判通りの、なんだか唐突な展開でした。菜根譚という本を知ってから、急に宗助は、禅寺の山門をくぐりたくなった、とかいう展開なんです。
なんですけど、ここから漱石は、難解な文学世界に立ち入っていった、ような気がしました。なんだかこう、ダンテ神曲の「地獄の門」をくぐったようなつもりで、書いたのかもしんないと、勝手に空想しました。
漱石は、この18章であいかわらず、簡素で乾いた描写をしています。静かな物語なんです。宗助は禅寺に泊まりに来たのだが、大きな寺には人一人居なかった、という描写がなんだか雅でした。
宗助は、寺で坐禅をする。それで、こういうことを考えるんです。本文、こうです。
…………彼は考えながら、自分は非常に迂濶な真似をしているのではなかろうかと疑った。火事見舞に行く間際に、細かい地図を出して、仔細に町名や番地を調べているよりも、ずっと飛び離れた見当違の所作を演じているごとく感じた。
文章がやっぱり美しいんです。この声で、18章のこの末尾を聞きたいと思いました。
日は懊悩と困憊の裡に傾むいた。障子に映る時の影がしだいに遠くへ立ち退くにつれて、寺の空気が床の下から冷え出した。風は朝から枝を吹かなかった。縁側に出て、高い庇を仰ぐと、黒い瓦の小口だけが揃って、長く一列に見える外に、穏かな空が、蒼い光をわが底の方に沈めつつ、自分と薄くなって行くところであった。
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ここからは新サイトの「ゲーテ詩集」を紹介します。縦書き表示で読めますよ。
幼かった頃の夢想のことを、ゲーテは「黄金の空想よ」と記します。ゲーテの詩には、神話的なものと理知的なものが混在していて、これが魅力のように思います。ゲーテはゲルマン神話と、とくにギリシャ神話の影響が色濃いようです。
この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。
(総ページ数/約10頁 ロード時間/約10秒)
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