彼岸過迄(1)序文 夏目漱石

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今日は夏目漱石の「彼岸過迄(1)序文」を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
今日から、「彼岸過迄ひがんすぎまで」という漱石の代表作を読んでゆこうと思います。今回は、その序文です。
 
 
三四郎それから というのが漱石の前期三部作なんですが、この彼岸過迄というのは後期三部作の作品で、なんだか読むのが楽しみです。漱石は、「修善寺の大患」以降、内容の重い文学作品を描くようになったわけで、ぼくはどうも前期の作品「それから」あたりがいちばん好きなんですけど……、後期の作品の中でかなり代表的な作品がこの「彼岸過迄」なので、これはすごい小説なんじゃなかろうかと思いながら、今読みはじめているところです。
 
 
漱石は、大病をしたあとに二ヶ月間ゆっくり休んだのだと記しています。それでようやっと本格的に、この彼岸過迄を書きはじめることにした、ということを読者に対して、率直に記しています。体調や環境が整って、やっとちゃんとした小説を書けるようになってきた。本文にこう書いています。
 
 
  いよいよ事始める緒口いとぐちを開くように事がきまった時は、長い間おさえられたものが伸びる時のたのしみよりは、背中に背負しょわされた義務を片づける時機が来たという意味でまず何よりもうれしかった。
 
 
漱石は、後期に於いても、書くことが喜びであったのだと判って、なんだかとても嬉しくなりました。ぼくは漱石の小説を読むのがおもしろくてしょうがないところなんですが、後期作品はどうも重々しくてむつかしい。漱石は今回「久しぶりだからなるべく面白いものを書かなければすまないという気がいくらかある。」と書いています。これは楽しんで読めるんじゃないかなと思っているところです。また、漱石はこの序文に、ちょっとした創作論を書いているんです。本文こうです。
 
 
  ……ただ自分らしいものが書きたいだけである。手腕が足りなくて自分以下のものができたり、衒気げんきがあって自分以上をよそおうようなものができたりして、読者にすまない結果をもたらすのを恐れるだけである。
 
 
漱石は、素朴に自分らしい作品を書いて、読者に見せたいんだという。漱石は自分の読者はこういう人だろうと、考えている。本文こうです。
 
 
  ……自分の作物さくぶつを読んでくれる人は何人あるか知らないが、その何人かの大部分はおそらく文壇の裏通りも露路ろじのぞいた経験はあるまい。全くただの人間として大自然の空気を真率しんそつに呼吸しつつ穏当に生息しているだけだろうと思う。自分はこれらの教育あるかつ尋常なる士人の前にわが作物をおおやけにし得る自分を幸福と信じている。
 
 

 
 
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 幼かった頃の夢想のことを、ゲーテは「黄金の空想よ」と記します。ゲーテの詩には、神話的なものと理知的なものが混在していて、これが魅力のように思います。ゲーテはゲルマン神話と、とくにギリシャ神話の影響が色濃いようです。
 この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。

  

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