白痴(35) ドストエフスキー

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今日はフョードル・ドストエフスキーの「白痴」その35を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
イッポリットは告白文を朗読し始めたわけなんですけど、じつはこれは非公開というか限定公開にするつもりだった。なによりも、公爵に自分のことを知ってほしかったようなんです。本文こうです。

私はこの原稿が公けにされないようにと念じている。なるべく公爵に写しの一部を手もとに保存し、さらに一部をアグラーヤ・エパンチナに渡していただきたいと思う。

イッポリットはかなり奇妙な持論を展開するんです。じつは法では裁くことが出来ない状態がいろいろある。イッポリットは残り少ない生を、どのように考えようかと、さまざまに想いをめぐらしている。
 
 
とにかく、これでイッポリットの告白は終わった。ここから騒動が起きる。イッポリットはピストルさえ持ちだそうとする。みなから醜態をあざ笑われてしまうんですけど、イッポリットはそういう状況でも、主人公ムイシュキン公爵を信じて彼とだけは関わろうとする。本文こうです。
 
「すぐに、すぐに、黙っていてください。もうなんにも言わないでください。じっと立っててください、……僕はあなたの眼を見たいんです、……そのとおり立っててください、僕は見るんですから。僕は人に別れるんです」彼はじっと立って、身じろぎもせずに公爵を見つめていた、口をつぐんで十秒間も。

この先のシーンが非常に鮮烈でした。未読の方はネタバレなので読まないでください。イッポリットは、キリストの復活も、あらゆることを信じなかった男なんですけど、なぜかムイシュキン公爵の眼差しだけは最後に見ておきたかった。不発弾、という想定外の展開が驚きでした。本人はもう死んだと思っていた。みなは笑うより他なかった。イッポリットはけっきょく、ベッドに寝かしつけられた。
 
 
このあとの、人々の議論を読んでいて、ドストエフスキーは、現代日本にさえ通底している社会問題を鋭く捉えているんだと思いました。引用するだけなら誰でもできるはずなんですけど、ちょっとぼくにはどうにも引用さえ出来ないむずかしい問題ですので、気になる方は本文を読んでみてください。ドストエフスキーは監獄で、皆と死刑執行を待っているとき、こういう心情だったのかもしれない、と思いました。
 
と、不意に小鳥が樹から飛び立った。その瞬間に、どうしたわけか彼の胸にはイッポリットの書いた『熱い日の光を浴びている一匹の蠅』、『この蠅すらも宇宙の饗宴に加わり、みずからの所を心得ているのに、この私ひとり見すてられているのだ』ということばが浮かんできた。その一句はさっきも彼の胸を打ったが、今もこのことが思い返されるのであった。
 
ムイシュキン公爵の夢の中に、あのヒロインが現れる。彼女は涙を流していた。本文こうです。
 
顔には悔悟と恐怖の色があふれて、たったいま恐るべき罪を犯した大罪人ではないかと思われるくらいであった。涙は青ざめた頬に震えていた。彼女は公爵を手招きして、あとからできるだけ静かについて来るようにといましめるかのように、唇に指を当てて見せた。彼の心臓は氷のようになった。たといいかなることがあろうとも、この女を罪人だと見なす気にはなれなかった。
 

 
 
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 この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。

  
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