今日は伊丹万作の「戦争中止を望む」を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
いま、若い人たちが、戦争反対のデモをやっていて、ネットや都心で大変な盛り上がりがあって、さらには東大の教授や文化人が数多く賛同の声をあげていて、これはすごいなと思います。それで、自分でも戦争についての本を読もうと、第二次大戦中の書物を読んで戦争の時代を学んでみようと思って、青空文庫を調べていました。
戦前戦中の有名な本というと、太宰治の小説『薄明』『待つ』『たずねびと』『十二月八日』『未帰還の友に』などがあります。また1作1作読んでみようと思います。
あるいはその1つ前の時代の、漱石の『三四郎』で語られた国家観があり、与謝野晶子の晶子詩篇全集に収録された『君死にたまふことなかれ 旅順の攻囲軍にある弟宗七を歎きて』があり、それから黒島傳治がシベリア出兵を描いた「渦巻ける烏の群れ」は、これは戦争体験そのものを描いて、戦争の実態を伝えているものです。
戦中の時間軸については、wikipediaの『十五年戦争』という頁が、判りやすかったです。戦争の終局が近づく1945年の初頭に、伊丹万作はこの随筆を書いています。本文には、このように記されています。
現在の日本は政治、軍事、生産ともに行き当りばったりであり、万事が無為無策の一語に尽きる。
冷静に客観的に事態を注視せよ。我らには勝利に縁のある材料は何一つありはしない。
日は一日と状態を悪化せしめる。今ならばまだ外交工作の余地がある。明日になればそれももうどうなるかわからない。今ならば我方に多少の好条件を確保する可能性がある。
原発の崩壊後にも、日本から原発輸出計画を立て、安全は確保されていないまま再稼働に突き進む現代にも、読み直されるべき随筆だと思いました。『戦争責任者の問題/伊丹万作 著』も併せてお読みください。
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月別アーカイブ: 2015年6月
坊っちゃん(5) 夏目漱石
今日は夏目漱石の「坊っちゃん」その(5)を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
「坊っちゃん」は、子ども向きのストーリーもので、草枕のように評論調の文体にはなってゆかないんですが、それでも、おもしろい考え方というのが時々出てきます。
漱石が、子ども嫌いだったという話は良く聞くんですが、この「坊っちゃん」という本は明らかに、幼い読者に向けて書いているように思いました。子どもが突きあたる思考の問題というのを話題の中心に置いているんです。今回は、釣りって魚にとってどうなんだという話でした。現代ではキャッチアンドリリースとか、焼いて食べてゴミを持ち帰るなら自然の摂理なんだとか、あるていどマナーとして浸透してしまっているので話題にもならないと思うんですが。昔はそういうのが無かったようで、現代で言うところの「趣味の狩猟」はどう考えたら良いものか、というハナシになっていました。
むかし、といっても1980年代くらいなんですが『団地の野良猫にエサをあげるのは、善なのか悪なのか。どうしたらいいのか』という小学生の討論会が自然発生したことがあって、先生がちゃんと審判員をやっていたんですが、ちょうどこう、立場が2つに別れていて、「野良猫は嫌いだし不衛生だ」というのと「野良猫はかわいいしエサをやって良い」という立場で、まったく方針が一致せず「これは善悪で判断できない」というオチになっちゃったんです。そのころ小学生の脳みそで考えたのは「ノラネコを餓え死にさせろ、というのはいかにも冷たい」ということと、「猫が増えたら不衛生なんじゃ無くて、ゴミ収集のシステムに不備があるから不衛生になっているだけのはず」ということで、しかしゴミ収集が進歩した状況の事実例が無かったもんですから、誰をも説得できなかったのでした。
どうも21世紀にもなると、これもひとつのマナーができているようで「エサやりは直接否定しないけど、ちゃんとノラネコには不妊手術を受けさせてくださいね」ということを国が中心にやっているようなんです。「不妊手術を受けさせるくらいなら、私が飼う」という展開もありえそうな方針で、そんな解答例が現代にはあるのか、驚きだと思いました。
この主人公はとにかく、負けず嫌いなところがおもしろいです。釣りの話題になっても、バカにされてたまるか、というところに突っこんでいってしまう。後半で登場するマドンナ、という女の名が、この章で語られていました。赤シャツというのが女のようなキザな男で、その上ずいぶんガキ大将っぽくて、これで教頭先生なのが変なもんだと思いました。嫌味な相手も含めて、まさに童心が描かれていました。男は古里の、母代わりになって育ててくれたお婆さんのことを思い出すんです。おばあさんは、人の話をちゃんと最後まで聞いてくれた。
清おばあさんがどうして主人公を好きであったのか。おばあさんの言った言葉の意味が、いざこざの中で、だんだんと明らかになってくるんですよ。そこが良いんだと思いました。
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海潮音(19) 上田敏
今日は上田敏の海潮音その(19)を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
今回のジャン・モレアスの「賦」は、とくに難読で、迷宮のような詩でした。難しい詩は、3回くりかえして読んでみたら、だいたいの意味が判るんですけど、今回のはなんど読んでみても、言葉の意味がなかなか入ってきませんでした。しかたが無いので、一字一字意味を現代語で読み直してみて、メモしてゆくと何となく読めました。
花は散り、川は凍り、ああ歓楽よ、悲哀よ……。と、はっきりと判る部分から、判らないところを補完しつつジャン・モレアスの詩を読んでゆきました。
ごく普通の情景や感情を描いているはずなのに、どうしてこう、明らかにピンとこないところがあるのか、じつに謎だと思って調べていたら、ジャンモレアスというのは、象徴主義(サンボリスム)という概念をいちばんはじめに提唱した詩人で、どうも判りにくくて当然のようなのでした。
サンボリスムというのはどういうものかというと、artscapeによればこうです。
サンボリスムには19世紀末の科学や機械万能主義に対する反発が色濃く反映されている。(略)ルドンらサンボリスムの画家たちに共通しているのは、人間の内面的な苦悩や夢想を絵画によって象徴的に表現しようとした点にある。様式的に見れば、それはレアリスム(写実主義/自然主義)に対する反発であったと言えるが、その背後には同時代の実利的な価値観の下での芸術の卑俗化に対する懸念があったと言えよう。
象徴主義は、現代芸術や現代映画にだって応用されていて、芸術の方法のその核となった部分で興味深いものですが、ジャン・モレアスはその開祖なわけで、開祖はじつにややこしい詩の描き方をしている、のだ……ややこしくって当然だ……と理解しました。ジャン・モレアスの、以下の詩のことばが印象的でした。
この一切の無益なる世の煩累を振りすてゝ、
もの恐ろしく汚れたる都の憂あとにして、
終に分け入る森蔭の清しき宿求めえなば、
光も澄める湖の静けき岸にわれは悟らむ。
否、寧われはおほわだの波うちぎはに夢みむ。
幼年の日を養ひし大揺籃のわだつみよ、
ほだしも波の鴎鳥、呼びかふ声を耳にして、
磯根に近き岩枕汚れし眼、洗はばや。
興味のある方は、wikipediaに記された、象徴主義の解説も読んでみてください。
むずかしい言葉を調べてみました。
なじか
烏滸
わだつみ(わたつみ)
ネアイラ グラウコス プロオティウス(プロメーテウス)
和ぎ
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坊っちゃん(4) 夏目漱石
今日は夏目漱石の「坊っちゃん」その(4)を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
漱石が、上司に対する不満をこう、この章でぶちまけております。漱石はあまりこう、会社員が上司に苦しめられるような人生じゃ無かったので、どうもカラッとした表現で、そこがおもしろいように思います。
先輩たちは、宿直をしないで良いという特権がありながら、主人公は宿直をせねばならず、夜中も学校の中に居るはめになった。夕方にすることがないので、勝手に温泉に行ってしまった。主人公としては晩に学校に泊まればよかろう、くらいに考えている。
校長や先輩教師たちから「宿直が無暗に出てあるくなんて、不都合じゃないか」といわれて「ちっとも不都合なもんか、出てあるかない方が不都合だ」と言い返す。この切り返し、かっこいいなあ、漱石のケンカってかっこ良かっただろうなあ、と思いました。
江戸っ子だ、と思うところが多い小説で、宿直の部屋で寝るときの所作でさえ、変に特徴があるんです。原文はこうです。
なるべく勢いよく倒れないと寝たような心持ちがしない。ああ愉快だと足をうんと延ばすと………
そうすると、ふとんの中にバッタが何匹も居た。誰のいたずらだと言うんで、さわぎが起きる。バッタだバッタだと騒いでいると、学校の寮で寝ている生徒の一人から「そりゃイナゴぞなもし」と言われてしまう。
いたずらがあったら、とうぜん罰がなければハナシにならない。罰があるから、いたずらが楽しくできるのだ、ということを男が言いはじめます。
言葉が普通よりももう一段積みかさなって、新しい感覚になっていておもしろかったです。考え方の石段をぽんぽんと駈けあがっていって、さいご、清というおばあさんへの思いに通じてゆくのが、じつに気持ちの良い構図でした。本文はこうです。
考えてみると厄介な所へ来たもんだ。一体中学の先生なんて、どこへ行っても、こんなものを相手にするなら気の毒なものだ。よく先生が品切れにならない。よっぽど辛防強い朴念仁がなるんだろう。おれには到底やり切れない。それを思うと清なんてのは見上げたものだ。教育もない身分もない婆さんだが、人間としてはすこぶる尊とい。今まではあんなに世話になって別段難有いとも思わなかったが、こうして、一人で遠国へ来てみると、始めてあの親切がわかる。
ここから先の、男と子どもらとの対決の描写は、勢いがあって圧巻でした。
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老人 リルケ
今日は森林太郎訳でリルケの「老人」を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
このまえ「しわ」というアニメ映画をみて、この映画のファンになったんですけれどamazonのレビューも高評価で、やっぱり名作は誰が見ても、良いんだなあと思いました。それで自分は映画を見るのが好きなんですけれども、優れた小説を読むとたまに、ああこれだけは映画の表現ではどうやったって届かないな、という箇所を見つけることがあります。
中野重治という作家の随筆に、こういうことが記されています。
だいたい僕は世のなかで素樸というものが一番いいものだと思っている。こいつは一番美しくて一番立派だ。こいつは僕を感動させる。こいつさえつかまえればと、そう僕は年中考えている。僕が何か芸術的な仕事をするとすれば、僕はただこいつを目がける。もちろんたいていは目がけるだけだが。…………(中野重治/素樸ということ/ちくま日本文学全集39より)
それで、この素朴ということがはっきりと描かれた小説は、いったいどこにあるんだろうといつも思っていたんですけど、ぼくは、このリルケの短編小説こそ、これにあてはまる、と思いました。
リルケの短編「老人」では、老いて眼が衰えてきて、視野のぜんたいが、何もかもおぼろげになってきた、という箇所は、これはまさに映画でより深く表現されうるものだろうと思うんですが、どうも動けなくなってきた老翁の内心や感覚までは、映画では再現できないわけで、リルケはその状況における人の心情をみごとに言葉で描きだしています。
偶然、手に入った花を、じつに丁寧に扱っている2人のおじいさんの姿が美しかったです。
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坊っちゃん(3) 夏目漱石
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いよいよ主人公が、先生の仕事をはじめます。思うんですけど、やっぱり架空の小説とはいえ、作者の実体験に近いところのフィクションを描いたもののほうが、読んでいて迫力を感じます。漱石はじっさいに、四国に出かけていって先生をやったわけで、その時の初登校の緊張感というのが伝わってきて、読んでいておもしろかったです。
まったく意味の無い、細部のちょっとした描写がなんか良かったです。こんなのです。
それからうちへ帰ってくると、宿の亭主がお茶を入れましょうと云ってやって来る。お茶を入れると云うからご馳走をするのかと思うと、おれの茶を遠慮なく入れて自分が飲むのだ。この様子では留守中も勝手にお茶を入れましょうを一人で履行しているかも知れない。
ほとんど漫才みたいなことを書いているんですけど、漱石は友人の正岡子規のことも、随筆でこんなふうに記していたことがあって、じっさい漱石はこれに似た体験をしたのかもな、と思いました。虚構の小説から、作者の実態を空想してみるのが、なんとなくマイブームになっています。
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海潮音(18) 上田敏
今日は上田敏の「海潮音」その18を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
この海潮音は、あと3回で完結です。今回は、マラルメの仲間のフランシス ヴィエレ・グリファンの詩で、眠りについて描いたものでした。
寝る子は育つ……眠れよい子よ……うまし眠り……いねむり教……と、日本でもいろいろ眠りについて表現する言葉がありますが、この詩はじつに美しかったです。上田敏の翻訳がやっぱりすごく良くて、熟睡と書いて熟睡とルビをふるのが、じつにこう、かっこ良いなと思いました。
むつかしい言葉を調べてみました。
臈たし
労たし
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