彼岸過迄(6)報告(前編)夏目漱石

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今日は夏目漱石の「彼岸過迄ひがんすぎまで(6)報告(前編)」を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
章と章の繋がりが興味深いんです。漱石は作品ごとにまったく異なる文体や新しい展開を作り出す場合が多いんですけど、今回は、あっさりと前回の内容を引き継いでいる。「停車場」という謎の物語に対して、その事態の「報告」が今回の物語なんです。
 
 
今回の物語の転がりかたが、敬太郎だけを残して他すべて通りすぎて行ってしまう、敬太郎だけを残して他はすべてごそっと入れかわるところに、作者の漱石だけが同一人物で、物語の登場人物がすっかり入れ替わっているような、漱石の心の旅路を見ているような不思議さがあってすてきなんです。
 
 
この、章と章や、作品と作品の間にある、真っ白な空間が、漱石のは特別にいいんだと、いわばピカソの展覧会の、青の時代の部屋とキュビスムの時代の部屋とのあいだにある空間を移動している時の、あの特別な感じが、漱石には、やっぱりあるんだと。
 
 
その作品同士の協和音が顕著なのはやっぱり、「三四郎」から「それから」の間の完璧な空白地点こそこれだと思うんですけど漱石は絶対に、作品と作品の姉妹関係に関して意識的だったと思うんですが、本作では、前回の章をふり返る意識が軽妙に記されているんですよ。
 
 
探偵としてどこまで事実を報告したものか、という問題に、主人公敬太郎は迷うんですよ。これ現代でもありえる悩みだなと思いました。これから一般人に対して警察が共謀罪を用いた捜査をする可能性が高まっているわけで、そこである若手の刑事が、これは憲法違反の可能性があると、憲法の19条21条に違反するかもしれないと、憲法と照らしあわせて行動をすることになる。だが、上司や政府からは憲法とは異なる命令が来る。
 
 
敬太郎は不法なことはしておらず、ただ公共の場で普通に見ることが出来るところだけを見ていったわけですが、ただ対象者では無い相手まで細部まで調べてしまっている。さらには、調査の報告をもっともらしくするために、憶測で人物像を伝える工夫までしはじめてしまう。Xと女が恋愛関係なのかどうかさえ、印象から判定して答えなきゃいけなくなったりする。こうなると事実の報告とは言いがたくなってしまう。
 
 
敬太郎は悩んだ末に、恋愛の関係はあるようにも思えるが、無いかもしれない、と述べている。確定させず、あいまいに言わざるを得なかったところを、雇い主の田口は、それは正直だと誉めるんです。敬太郎は、ほんとなら、直に逢って直接話を聞くのがまっとうなはずだと、そう言うんです。
 
 
すると雇い主の田口はもっともだと思って、紹介状を書いて、Xと敬太郎とが話し合うように用意すると言った。就職先も用立ててくれる可能性もあった。Xの名は松本恒三で、敬太郎は彼と逢うことにした。松本の家では、雨の日には逢えないという、奇妙なことを言われた。敬太郎は、晴れの日に出直すことにした。次回に続きます。
 
 

 
 
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 幼かった頃の夢想のことを、ゲーテは「黄金の空想よ」と記します。ゲーテの詩には、神話的なものと理知的なものが混在していて、これが魅力のように思います。ゲーテはゲルマン神話と、とくにギリシャ神話の影響が色濃いようです。
 この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。

  

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