白痴(23) ドストエフスキー

今日はフョードル・ドストエフスキーの「白痴」その23を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
今回、アグラーヤという美人が、プーシキンの詩を朗読するんですけど、これがどうも替え歌みたいにちょっと変更してふざけた風に朗読している。
 
 
ドストエフスキーは小説の執筆を口述筆記で手伝ってくれた若い女性と、結婚をした、という事実をふまえつつ、今回の詩の朗読会と文学論議を読んでゆくと、なんだか文章やストーリーから、人が見えてくるような気がしました。この作品は、作家の随筆を楽しむようにも、読めるところがあると思いました。

 
ドストエフスキーの重大な特徴は、伏線を幾重にも張り巡らせ、事態を何重にも畳みかけて物語を織り込んでゆく、というのがあると思うんです。このような小説的技法によって、伝記や一般的文章では感じることがない迫力が生じていて……ドストエフスキーは自身の経験を異なる側面から繰り返し描写して、人間を描きあげている。
 
 
江戸川乱歩に「鏡地獄」という小説があって全面、鏡だけで一人の人間のみが全天球を覆いつくすという描写がありますけど、ちょうどそういうかんじで、ドストエフスキーの人生と心情を、万華鏡の内部から全方位で覗いているような感じがしました。
 
 
「ケーレル」という名前の……悪漢ロゴージンの取り巻きの退役中尉や、肺病に冒され余命幾ばくもないイッポリートなどの謎めいた4人が、療養を終えようとしていた主人公のムイシュキン公爵のところに現れて、一騒動が起きそうな予感がする。次回に続きます。
 
 

 
 
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 幼かった頃の夢想のことを、ゲーテは「黄金の空想よ」と記します。ゲーテの詩には、神話的なものと理知的なものが混在していて、これが魅力のように思います。ゲーテはゲルマン神話と、とくにギリシャ神話の影響が色濃いようです。
 この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。

  

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家のあるじとして気になること フランツ・カフカ

今日はフランツ・カフカの「家のあるじとして気になること」を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
カフカといえば「変身」が有名で、他に「城」という未完の大長編や、魅力的な短編の数々があるんですけど、今回の掌編は、カフカのいちばんすてきなところというか、意味不明な生物のことだけが、描かれています。言葉ってこういう魔法みたいなことができるんだなーと、思いました。オチの、わけの判らない悩みの吐露が、まさにカフカの文学で……楽しめました。
 
 
オドラデクという名の生きものが居るんですけど「やつは見た感じ、ぺちゃっとした星形の糸巻きみたいだ。しかも本当に糸が巻き付いているように見える」……。どういう特徴があるかというと「オドラデクはめちゃくちゃすばしっこいやつなので、どうにもつかまえられな」い、謎の生きものなんです。続きは本文をご覧ください。
 
 

 
 
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与謝野晶子詩歌集(14)

今日は「与謝野晶子詩歌集」その14を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
「春よ老いな」……春よ老いるな、とは不思議なことを言うもんだと、なんどか読み返していました。「春よ」と「子らよ」が重ね合わされていて美しい歌でした。


むつかしい文字を調べてみました。
 
 
善悪よしあしふも慵し
 
 

 
 
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白痴(22) ドストエフスキー

今日はフョードル・ドストエフスキーの「白痴」その22を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 

ムイシュキン公爵が引きおこした発作は、じつは作者のドストエフスキーも患っていた病と似ていて、この本を書く以前にムイシュキン公爵とそっくりな体験をしていた。
 
 
このダイナミックな物語が、ノンフィクションのような側面も色濃かったということをついこのあいだ知って、かなりおろどきました。どうりでリアリティーがあると思いました。実話を空想の中に、みごとに混ぜ込んでいるので、いわく言いがたい迫力が生じるんだなあーと思います。本文こういう描写です。
 

発作の起こった日から三日目に、公爵は胸の中では今なおなおりきらないように感じていたが、見たところの様子では健康人とほとんど変わりがなくなっていた。この三日の間に身のまわりに来てくれた人は誰もが彼を喜ばせた。ほとんど傍を離れずにいてくれたコォリャがうれしかった。
 
ムイシュキン公爵を見舞いに来る人々がいっぱい居て、やがて公爵は元どおりに暮らせるようになる。彼はロゴージンに殺されそうになる寸前に、病で倒れてしまって、逆に難を逃れた。動物の世界で言えば、擬死反射みたいなことが起きたわけなんです。実話から文学への跳躍が、ドストエフスキーの魅力なんだろうなあと思います。
 
 
レーベジェフの看病はなかなか奇妙なもので、病人のムイシュキンを軟禁して独占しておきたい。このありがた迷惑について、主人公が苦情を申し立てるシーンが面白かったです。今回は談笑の場面が積み重ねられるんです。
 
 

 
 
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一つの境涯 中原中也

今日は中原中也の「一つの境涯 世の母びと達に捧ぐ」を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
詩人の書いた随筆が好きなんです。文章が美しいし、意味も分かりやすい。今回の、中原中也の随筆を読んでいて、詩人と小説家の感覚の違いが見えたように思いました。たまに思うんですけど小説家よりも詩人のほうが、なぜか小説の謎を解き明かしてくれるように思うんです。
 
 
小説はほとんど書かなかった中原中也が絵画の問題について……「人の心の奥底を動かすものは、却て人が毎日いやといふ程見てゐるもの、恐らくは人々称んで退屈となす所のものの中にあるのだ。」という文章を引用して指摘しています。なぜ小説のある描写に感動したか判らない、と思ってたところをみごとに指摘しているようにも思えます。
 
 
中原中也が小説を書いたらすごいのかというと、この随筆の中盤の描写を見ていても、やっぱり中原中也は文章を短くすることでその力を発揮する、詩の専門家だと思いました。文章を重ねるほどその魅力が増すドストエフスキーと、短く凝縮するほど文学性が現れてくる中原中也とで、考え方や地の文から、ちがうんだなと思いました。「一つの境涯」のさいご二行が印象に残りました。
 
 
むつかしい言葉を調べてみました。




 
 

 
 
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与謝野晶子詩歌集(13)

今日は「与謝野晶子詩歌集」その13を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 

「唯一の問」という詩が気になって考えてしまいました。「民衆の中に在るのか」と与謝野晶子が問いをかけています。与謝野晶子といえば、民衆の行動と違うことをして、民衆の声と異なることを書いた文学者で、1000年ほど前に生きた紫式部に私淑していたわけですし、民衆の外に居るように思えます。このNHKのページを見ても、与謝野晶子は戦中の民衆が、言えないことを詩で表現したように思えます。
 
 
しかしそういえば、小説家や詩人は、時流に乗ることがもっとも重大だっていう話しをどこかで聞いたことがあります。だからカフカの小説をほんとに理解できるのは、カフカが生きた国の当時の民衆の生き方を知っていないと判らないところが多いのだとか、そういう話しを聞いたこともあります。民衆がどういう心情を持っているのかを判っていないといけない。この与謝野晶子の問いは、不思議なものだなあと思いました。問いそのものが詩なのか、と思いました。
 
 

 
 
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白痴(21) ドストエフスキー

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文学の展開には「待ち時間」や「移動時間」というのが重要であって、すぐに問題が解決する環境では文学的な物語が生じにくい、ってはなしを聞いたことがあるんです。この物語では、人が人を追いかけていって、しかし目的地に相手が居なくって会えない、ってことが繰り返し積み重ねられるんです。移動時間と待ち時間だらけです。「公爵が行ってみるとエパンチンは留守であった」とか「コォリャはやって来ない。公爵は表へ出て」とかそういうのばっかりです。そこで公爵は、さまざまな葛藤と逡巡をくり返すんです。
 
 
ドストエフスキーは、たった1日を圧倒的な濃度で何百頁と書きつくすことで有名なんですが、今回は、たった1秒ということを掘り下げて描きだしていました。その伏線の忍ばせ方と、事態の連鎖がほんとにみごとなんです。主人公ムイシュキンには持病がある。それでほんの1秒間の間に起きる、生命の危機と回復と、意識的な覚醒のことを『至高の刹那』と名づけて、黙考を繰り広げています。

『この瞬間には、光陰再び至らずという格言が、なんとはなしにわかってくるものだよ。きっと』

この「光陰」の格言は、僕が調べてみたかぎりでは、もしかするとヴィヨンという15世紀フランスの詩人の言葉なのかもしれません……確証は無いですけど。ヴィヨンは「光陰は矢のごとく、とりかえすすべもなく、風にさらわれるように去ってしまう。」と言っているそうです。
 
 
それで……未知の未来について、直感してしまうような、不思議な知性を持ったムイシュキン公爵なんですけど、彼は殺人事件について人並み以上に、興味を持ってきた。その描写が妙なんです。

噂に噂を生んだ奇々怪々たる殺人事件のことが思い返された。ところがそれを思い出すと同時に、彼の身の上にはまたもや何かしら特別なことが起こってきた。なみなみならぬ押さえきれない、ほとんど誘惑ともいうべきほどの欲望がにわかに彼の意志を麻痺させてしまったのである。

公爵はロゴージンがなにか事件を起こしてしまいそうだと予感している。この一文がこの物語で重要かと思いました。「ロゴージンは今もなおあの女の発狂に気がつかないでいるのかしら?」ということを、ムイシュキン公爵は考えるんです。

ロゴージンは決して単なる情欲の走狗そうくではない。やはり、なんといっても闘士なのだ。あの男はしゃにむに、失われた自分の信仰を取り戻そうとしているのだ……いま彼には苦しいほど信仰が必要なのだ……そうだ! なんでもいいから信仰するものが欲しいのだ!それにしても、あのホルバインの絵はなんていう奇妙なものか、…………
 
 

キリスト教では偶像を禁じている、って話しを聞いたことがあります。けれどもキリスト教の聖画やイコンは尊ばれているし、教会には像さえ存在している。仏教は仏像を大事に保護していますけど、キリスト教も少しだけ像というのがある。でも基本的には偶像を否定する宗派が多い。どういう状況でどんな心情かなあと思っていたんですが。前回の「白痴」第二編四では、銀時計を盗む男が1ページだけ登場します。ここで、形だけキリストに縋っていてキリストの生き方を重んじない、という宗教上の悪が立ち現れるんです。
 
 
ムイシュキン公爵はナスターシャの心境を慮って哀れんでいる。ところがロゴージンが女性に対して抱く思いは、この「形だけ縋っているのか、人間的か」という問題を抱えているように思うんです。ロゴージンはナスターシャに異様な執着心を持っていますが、彼女の内面については一つも考えていない。憐れみの情は無いんだと言うんです。今回の物語を読んでいて、聖画が尊ばれているのに偶像崇拝禁止というこの謎は「偶像崇拝的なのか人間的なのか」というように考えてみれば良いのではないかと、ちょっと謎が解けたような気がしました。
 

公爵はナスターシャの家に辿りついたのでした。ところが彼女は出かけていた。
 
 
ここからは……あまりにもネタバレすぎるので未読の方はぜひ、読まずにいてもらいたいんですが。ついに悪漢ロゴージンの正体が明らかになります。ロゴージンは、ムイシュキン公爵を傷つけようと画策していて、刃物をムイシュキンに振りあげた。本文はこうです。
 
 
ロゴージンをその場に立ちすくませてしまったればこそ、あわや頭上に下らんとしていた避くべからざる白刃の下から公爵を救ったものと考えるのが至当である。で、ロゴージンはさすが発作ということには思いもよらず、公爵がよろよろと傍を離れ、いきなり仰向けに倒れたかと思うと、頸をひどく石の階段に打ちつけながら、まっさかさまに階段をころがり落ちるのを見て、いちもくさんに下へ駆けおり、倒れている相手を避けるようにして、無我夢中で旅館を飛び出してしまった。
 
 
ムイシュキン公爵は、こんかいこの事件が起きる少し前に、このように黙考しているんです。「同情というものこそ、全人類の生活に対する最も重大な、おそらくは唯一無二の規範であろう。」これが他の文脈とどのように共鳴しているのか、ぼくには解析しがたかったんですけど、読んでいてすごく響いてきました。おそらくロゴージンの無謀さとの対比が鮮やかだったんだと思うんです。
 
 
次回に続きます。

 

 
 
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