

今日は岡本綺堂の「穴」を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
岡本綺堂がおもしろい理由がなんとなく判ってきたんです。興味があるけれども、ちょっと現代からかけ離れている江戸時代の奇怪な風物、その名残を、コナンドイルを耽読した明治大正の作家が書くから、おもしろい。ちょうど現代から見て、岡本綺堂はみごとな中継地点になっているんだと思うんです。
古い時代劇だと書き割りのセットみたいな町並みが映り込むんですけど、岡本綺堂は荒れはてた町と屋敷の実体を事細かに書いたりする。
江戸時代から明治の初年にかけて高輪や伊皿子の山の手は、一種の寺町といってもいい位に、数多くの寺々がつづいていて、そのあいだに武家屋敷がある。といったら、そのさびしさは大抵想像されるであろう。殊に維新以後はその武家屋敷の取毀されたのもあり、あるいは住む人もない空屋敷となって荒れるがままに捨てて置かれるのもあるという始末で、さらに一層の寂寥を増していた。
家の庭内で毎晩がさがさという音が聞えるという
ここから先のハプニングが、すごい。展開をここに書くとせっかく原文を読んだ時に面白さが半減しちゃいそうでどう書いたら良いか困るんですけど、大正時代の小説ってみごとに娯楽性があるんだなと、驚きました。電気の無い夜の世界というのが、ぞくぞくする。
庭と荒れ地の間の空間。荒廃しているとか提灯ではどうにもならない闇夜だとか敷地が広すぎるという理由で、自分の空間というのが、自分の空間で無くなっているという……この暗い謎の状況が良いんですよ。
また謎の質が変容して、物語が二転三転するのも興味深かったです。暗い事件もちょっと書き記されている小説なんですけど、終盤「父」の事件に対する恬然とした態度に唸りました。

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