今日はフョードル・ドストエフスキーの「白痴」その17を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
ナスターシャは危険な男ロゴージンの根城に転がり込んだ。いっぽうで善良で貧しい男ムイシュキン公爵は、なぜだか遺産を譲り受けてお金持ちになってしまった。
だいぶ状況が変わってきたところで全体の25%が完結しいよいよ第2編が今回、始まったわけなんですけど、前回から六ヶ月間もムイシュキンは別のところに行ってるんです。これがなにか重大なことに思えました。
ムイシュキンはそもそも旅人的な存在だった。それが問題に深く関わるうちに、ペテルブルグの人々と無関係ではなくなっていった。
ですが第2編の冒頭で、無欲なムイシュキン公爵が遺産を手にしたことによって、人と人が結びつくお金の関係がまず無効化され、そうして半年の別離があって、ふたたびムイシュキン公爵は旅人のような、人々の通常の文脈とは異なる存在に戻ったように思えました。本文こうです。
公爵はただの一度、それもほんのちょっとの間、顔を出したにすぎなかったにもかかわらず、とにもかくにも、特殊な印象をエパンチン家の人たちに残して去った
ところでガーニャは、wikipeidaの「白痴」人物紹介には「腹黒く欲張りで、癇癪持ちの羨望家。7万5000ルーブルを手にするためナスターシャと政略結婚をしようとしている。」と書かれていて、本文にもひどいことがいろいろ書いてあるんですけれど……真面目で人間的なところもある。本文こうです。
ガーニャは公爵の部屋にはいって、その前のテーブルに半焼けの紙包みを置いた。それは彼が気絶して倒れていたとき、ナスターシャが贈った十万ルーブルの金であった。彼はこの贈り物をできるだけ早く、ナスターシャ・フィリッポヴナに返してくれるようにと、くれぐれも公爵に頼むのであった。
悲劇のヒロインナスターシャはこういう噂が広まっている状況です。
最初モスクワで姿を隠し、すぐそのあとで同じくモスクワでロゴージンに捜し出されたかと思うと、またどこかへ行方を隠して、またまた彼に捜し出されたナスターシャ・フィリッポヴナが、ついに彼と結婚しようという固いことばを与えた。ところが、それからほんの二週間きりたたないうちに、ナスターシャ・フィリッポヴナが三度目に、ほとんど結婚の瀬戸際になって逃げ出し、今度はどこか地方の県下に行方をくらました。
今回も、登場人物表と照らし合わせながら読みすすめました。
善人のムイシュキン公爵は、けっきょく遺産を引き継ぐんですけど、それをちゃんと調べもせずに、いろんな関係者に分配してしまった。それでけっきょくは資産が手元にほとんど残らなかった。本文と関係無いですけど、こういうところが哲学者ウィトゲンシュタインの実人生に似ているように思います。はい。
ドストエフスキーの小説では、大金が動いたり、異様な金の使い方をして監獄に入れられる男が登場したり、お金の概念がすごく印象的なんですけど……作者はじつは1863年ごろから10年間くらいルーレット賭博というギャンブルでムチャクチャをしていて、ちょうどそういう時期にこの「白痴」(1868年)という長編小説を書き継いでいったらしく、そのために、お金の扱いがムチャクチャで、そこもドストエフスキー文学の魅力のうちの一つになっているんだと思います。
ムイシュキンは、エパンチン一家のアグラーヤに、ちょっとした手紙を送った。……次回に続きます。
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幼かった頃の夢想のことを、ゲーテは「黄金の空想よ」と記します。ゲーテの詩には、神話的なものと理知的なものが混在していて、これが魅力のように思います。ゲーテはゲルマン神話と、とくにギリシャ神話の影響が色濃いようです。
この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。
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