今日は芥川龍之介の「永久に不愉快な二重生活」を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
二という数字で思いつくのは、「二心」とかちょっと危うい意味のものだったり、あるいは井伏鱒二とか、小林多喜二といった文豪の名前とかを思い浮かべるんですが、芥川龍之介は芸術と人生の二面性について、この短い手紙で論じています。
これは……どういう状況で書かれたものかちょっとよく判らないんですけど、ずいぶん率直に、手短に論じています。後学の知人からの質問に対する答えとして、芥川はこれを書いているようです。
芥川龍之介の経歴を改めて調べてみると、英語に携わりながら文学に入っていって、英語教師をしてから新聞社に入るという、漱石と同じ道のりを辿っていて、一つ異なっているのは、結婚相手も就職先も、海軍と関わりが深かった、という点なんです。森鴎外のように完全な軍人というわけではないんですが、芥川龍之介は軍(とくに海軍)と深い関わりにありながら、このことについてはあまり論じていないように思えるんです。ただ、漱石がいちばん好きだったからには、漱石と同じように、戦争を忌避しようという思いが強かったはずだと思うんです。この短い随筆でも、不愉快の理由が軍国にあるなどとは、芥川龍之介は一言も言っていません。
この随筆を読んでいて、井伏鱒二の言葉を思いだしました。こういうのです。
僕は、はっきり口に出して云った。
荷物を川のなかへ放りこんでやろうかと思った。戦争はいやだ。勝敗はどちらでもいい。早く済みさえすればいい。いわゆる正義の戦争よりも不正義の平和の方がいい。
(井伏鱒二著「黒い雨」より)
これは、キケロの言葉から着想を得た文章なんだそうです。ちょっともはや芥川の随筆と無関係なはなしになってしまいました……。
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月別アーカイブ: 2016年10月
門(23) 夏目漱石
今日は夏目漱石の『門』その23を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
22章の最終ページで、漱石は、天という言葉を用います。この漱石三部作の最後の小説では、森田草平からもらった「門」という簡素で謎めいた題名から刺激を受けたのか、この門をどう物語に入れ込むかに苦悶しているところで、一文字にこだわって、文体を作る、という漱石の筆致が鮮やかに映える物語が誕生したのではないかと思いました。
13章で鏡の中に登場した「影」という独特な言葉づかいや、16章で登場する「春」という文字の記述に特別な印象があったんですが、最後、漱石は三部作の仕上げとして、天、という言葉を慎重に配置しています。すこしおどけたような使い方の箇所もあるんですが、くわしくは本文を読んでみてください。
漱石の流麗で鮮やかな文章から、徐々に装飾を廃した静謐な文体に変化してゆくところで、一文字に深い印象を残すという、漱石の独自の文学性に到達したのかなと思いました。「門」を描き終えてから、則天去私、という思いが漱石の内部で生じはじめたのではないだろうかと空想しました。
物語は緩やかに、結ばれています。妻は苦が去っていってやっと春が来たと言うんですが、宗助は、じき冬が来ると考えます。やはり100年前は現代人よりももっと自然界と深い関わりがあったように思いました。じつにすがすがしい最終章です。
この小説をこれから、全文読んでみたいという方は、こちらのページをお気に入りに追加してみてください。あと、12章と17章だけを読んでみるのもオススメだと思います。
「三四郎」「それから」「門」と、漱石の三部作を読んできました。これ以降に書いた、漱石の後期三部作というのが有名で、またいつか読んでみたいと思います。あと道草や、虞美人草や、絶筆の明暗などもぜひ読みたいです。それと、次回から海外文学をこんな感じで読んでゆこうと思います。
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山羊の歌(2) 中原中也
今日は中原中也の「山羊の歌」その2を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
作中に出てくる「鑵」というのは「缶」の旧字で、錆びた缶のタバコケースのことです。
男らしい内容の詩で、月が煙草を吸うという、豪儀な表現が印象に残りました。スモッグであたりがけぶっているのかもしれません。煙草には、錆と、汚辱と、悲しさが刻みこまれているように思いました。本文こうです。
あゝ忘られた運河の岸堤
胸に残つた戦車の地音
銹びつく鑵の煙草とりいで
月は懶く喫つてゐる。
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二つの正月 寺田寅彦
今日は寺田寅彦の「二つの正月」を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
寺田寅彦の随筆はもうしょっぱなから面白いんですけど、東大の物理学者でも、やっぱり記憶の混同ってあるんだなと思いました。
寺田寅彦は高校生の頃体験した正月と、ナポリで過ごした正月が、密接に結びついて記憶されているのだ、と記します。寺田寅彦が高校生だった頃、長崎から佐世保に旅をしたそうです。関係無いんですけど、ぼくは10年くらい前に、佐世保を一人旅して山を登り、展望台から九十九島を見て、佐世保バーガーを食べて、それから駅の近くにある大きな図書館で読書した記憶があります。
明治30年(1897年)と現代とでは印象がかなり違うと思うんですが、しかし長崎は港町であって、国際都市になっている部分は、同じなんですね。当時の長崎には、ロシア艦隊とロシア文字の看板が町に溢れかえっていた、と記されています。
遊郭に居るロシア人の女たちから話しかけられた、という幻想的な記憶を書いています。その旅でひと目見た、おばあさんの姿が忘れがたいと書いているんですけど……なんで科学者なのにこんなに文章が美しいんだろうかと、読んでいて溜息がもれました。
長崎から佐世保への旅路と、ドイツからイタリアそしてヴェスヴィオ火山への旅路が、二重写しとなって描きだされます。みごとな随筆でした。
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門(22) 夏目漱石
今日は夏目漱石の『門』その22を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
第22章に記されている、保養という言葉が印象に残りました。保養と言えば、現代のチェルノブイリでは、もう十年以上も前から、内部被曝の数値を下げるために、遠く離れた地へデトックスの旅に出かけるという活動がずっと行われていて、日本でもこの保養活動は、お寺やNPOを中心にして行われている。
今回、「門」の主人公、宗助の場合はそれとはまたまったく異なっていて、家庭崩壊につながりかねない過去の対人関係に於ける痛苦の問題で、心が病んでしまった。修行をして悩みから抜けだそうとお寺さんをうかがう保養の旅に出かけたわけですが……。問題が解決したわけでは無い。本文にこう書いています。
せっかく保養に行った転地先から今帰って来たばかりの夫に、行かない前よりかえって健康が悪くなったらしいとは、気の毒で露骨に話し悪かった。わざと活溌に、
「いくら保養でも、家へ帰ると、少しは気疲が出るものよ。……
こんな状態で、傷つけてしまった旧友と、住み家の近くで鉢合わせするようなことになってしまって良いのだろうかと、宗助はたいへんに悩んでいるので、ありました。
宗助は偶然にも、なんとか因縁の深い旧友と出会わずに済んだ。この章の最後の一文が、ものすごい迫力でした。抜き出すとその魅力が半減すると思うんですが、本文こうです。
彼の頭を掠めんとした雨雲は、辛うじて、頭に触れずに過ぎたらしかった。けれども、これに似た不安はこれから先何度でも、いろいろな程度において、繰り返さなければすまないような虫の知らせがどこかにあった。それを繰り返させるのは天の事であった。それを逃げて回るのは宗助の事であった。
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山羊の歌(1) 中原中也
今日は中原中也の「山羊の歌」その1を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
今回から、30数回かけて、中原中也の詩をひとつひとつ、読んでみたいと思います。
ほんの1ページだけの詩なので、ちょっと読んでみてください。やはり一番はじめが印象深いです。
トタンがセンベイ食べて
春の日の夕暮は穏かです
アンダースローされた灰が蒼ざめて
春の日の夕暮は静かです
吁! 案山子はないか――あるまい
馬嘶くか――嘶きもしまい
ただただ月の光のヌメランとするまゝに
……
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牧野信一 歌へる日まで
今日は牧野信一の「歌へる日まで」を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
ものすごいミーハーな話しなんですけど、最近ノーベル文学賞がやたら楽しみで、「今年もぜひ、旬の世界文学を読んでみたい! 誰なんだ」と思っていたら、どうも音楽家のボブディランが受賞したようで、昔聴いたことあるし、もっかい聴いてみようと思ったんですけど、どうも自分の脳では音だけ聴いちゃうので文学としてどこに魅力あるのか、謎のまま、ぼんやりしてしまいました。
あと調べてみるとですね、イギリス政府公認のブックメーカーのひとつである「ラドブロークス」というのが、ノーベル賞発表の数日前に公表していた順位表では、ボブディランが8位にランクインしていたんですよ。こういう順位だったんです。
1位 Ngugi Wa Thiong’o
2位 Haruki Murakami
3位 Adunis
4位 Don DeLillo
5位 Philip Roth
6位 Jon Fosse
7位 Ko Un
8位 Bob Dylan ← ココです★
9位 Javier Marias
いがいと正確に予測していたというか、選考内容がちょっと外部に漏れていたのかもしれないですし、あるいは他の文学賞の影響を受けているので、予測が当たりやすくなっているのかもしれないですね。
それで、youtubeで聴いてみたり、歌詞をよく読んでみたり、和訳サイトをいろいろまわって、とくにLike a Rolling Stoneの歌詞は辛辣というかちょうど今ぼく、住み家の問題でいろいろ悩んでいるところで「今どんな気持ちだ?」とか歌われると自分が批判されてるみたいで聴いてられないんですけど、なるほど、たしかに音楽家の中ではいちばん詩人らしいんだろうと言うことは理解できたんですが、やっぱりこれは音楽だからこそ良いんじゃないのかと疑問が残りました。
専門家の真面目な評によると、どうも、吟遊詩人なんだと。吟遊詩人という文学の源流のほうを、審査委員たちは見つめるようになってきたんじゃないかという指摘があって、はあー、そういうもんなのか、じゃあ吟遊詩人って、日本近代文学ではどう描かれたんだろうかと、小説を探してみたら、牧野信一の「歌へる日まで」という作品を発見しました。
牧野信一の作品を読んでいると、ゲーテのファウストの、酒場で魔法を見せるところの描写に相通じていて、ゲーテの詩劇はそういえば、吟遊詩人の世界観が色濃いんだなと思いました。
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