彼岸過迄(5)停留所(後編)夏目漱石

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今日は夏目漱石の「彼岸過迄ひがんすぎまで(5)停留所(後編)」を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
主人公敬太郎は、ついに就職先が見つかりそうだということで、期待に胸を膨らませている。それで仕事の詳細が手紙でやって来るんですが、なんと探偵として、ある男を尾行してくれ、という内容だった。主人公はこれをいたく喜ぶんですよ。
 
 
漱石は、謎めいた移動を描きだす作家だ、とずっと思ってたんですけど、やっぱりそれは意識的にやってたんだなと、思いました。なんだかカフカの「城」の序盤とか、カミュの「異邦人」とか、移動する行為自体が謎めいた行動になっている、というのが描きだされているんです。「草枕」の時に、どうも漱石の移動の描写がスリリングだと、鉄道の描写や、舟からの情景や、温泉で垣間見た美しい女の描写を見て思っていたんですけど、今回は主人公が探偵として謎そのものを追って行動していて、行動がそのまま謎に結びついている。
 
 
そういえば漱石自身の移動も、けっこう文学的な謎に満ちている気がするんです。仕事がたくさんあって裕福なんだから、はじめから最後まで東京にずっと居たら良いようなもんなんですが、東京から松山へそして熊本へそれからロンドンへ東大へそして新聞社へ京都へ、とさまざまに移動し続けている。ラフカディオ・ハーンくらい四方八方へ飛びまわっている。当時のロンドン行きは、まさに世界一周旅行みたいにたいへんなことですよ。船旅に次ぐ船旅で。月に行くくらいたいへん。
 
 
前回、占い師にいろんな謎めいた予言を受けていた主人公は、夕方4時から5時の間に現れるという、追跡対象者Xを停留所で探しつづける。
 
 
主人公敬太郎は、指定された場所で「黒の中折なかおれ霜降しもふり外套がいとうを着て、顔の面長おもながい背の高い、せぎすの紳士で、まゆと眉の間に大きな黒子ほくろがある」男を、電車の停留所で探すんですが、人が多すぎてまったく見つからない。そうして関係の無い女が変に気になってくる。
 
 
敬太郎は、尾行の仕事を完全に失敗してしまう。ああ、初仕事がいっさい仕事にならない、というのはほんとによくあることで、敬太郎は占いなんて信じておかしな行動をとってしまった自分を恨むんです。
 
 
しかし敬太郎は運良く、目的の人物Xを発見することが出来て、男とその連れの女を尾行することに成功した。彼らはとくに変わったこともせず、珊瑚樹さんごじゅたまか何かをプレゼントして欲しいとか、レストランで鳥の料理を食べたりだとかして、それぞれ帰路についた。敬太郎は追えるだけ追って、素人にしては充分な働きをしたわけだが、これがはたして仕事として成立しているのかどうかは、判らない。物語は次回に続きます。
 
 

 
 
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 幼かった頃の夢想のことを、ゲーテは「黄金の空想よ」と記します。ゲーテの詩には、神話的なものと理知的なものが混在していて、これが魅力のように思います。ゲーテはゲルマン神話と、とくにギリシャ神話の影響が色濃いようです。
 この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。

  

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