今日はフョードル・ドストエフスキーの「白痴」その25を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
悪いことばっかり考えていたはずのガーニャが今回、まともなんです。ガヴリーラ・アルダリオノヴィチ・イヴォルギン (ガーニャ)は、新たな遺産相続者らしき人物が登場した事件にかんして、その謎を解いていた。
やっぱり主人公ムイシュキン公爵が一目見て予想したとおり、遺産を相続できるはずだと思い込んだブルドフスキイは、状況を誤認させられていた。ブルドフスキイの発言はこうです。
僕はあなたを信じますから、これであきらめることにします……一万ルーブルもお断わりします……さようなら……
それで、真相はこういうことだった。ガーニャの演説はこうです。
ブルドフスキイ君、君のお母さんがパヴリシチェフさんにいろいろめんどうを見ていただいたのは、実はお母さんが、パヴリシチェフさんのかなり若かったころに恋せられた小間使の妹だったからです。(略)君のお母さんはまだ十くらいの子供のころ、親代わりに、パヴリシチェフ氏に引き取られて、養育され、持参金をどっさり分けてもらったりした
遠い昔の出来事なので、P氏の親戚なんだと誤認してしまった。P氏はブルドフスキイの母にずっと援助をしつづけたんです。それで親戚なんだと思い込んでしまった。ガーニャは探偵みたいにそういうことを既に調べ終えていたのでした。
ガーニャって脇役中の脇役なんですけど、この人の人格がとってもおもしろい。彼は悪漢たちにさえ、図々しく、どうどうと正論を垂れるんですよ。そういう性格のお陰で、収拾のつかないような問題をさらっと解決してしまう。ヘビに対して毒ガエルみたいな、ジョーカーっぽい存在なんです。ガーニャは、相手からこのように叫ばれてしまうんですけど……
「なんて、けがらわしいことだ、無礼な話だ!」とイッポリットは激しく身を打ち震わせ…………
ガーニャはそういうことに慣れていて、正論を言えてしまう。
ブルドフスキイ君はすでに、パヴリシチェフ氏が自分を可愛がってくれたのは博愛のためであって、けっして息として愛したのではないということを、おそらく十二分に納得されたことでしょう。
さらにガーニャの推理では、今回の遺産相続事件は、関係者のほとんどが、詐欺をする意識が無かったと指摘している。そのためにかえって、事実とは異なる主張をする人々の論調が激しくなってしまって、ぶつかり合いが生じてしまった。悪行をやろうと思って悪行をするような事件と、かなり種類が違うわけです。両者ともに、自分の考えが事実に近いと思い込んでしまっていた。両方とも正論で、パラドックスが成立したみたいになってしまう。物語にはほとんど影響の無い些末な話しなんですが、ことを難しくしてしまった男はチェバーロフだったそうです。
このあとの、主人公の発言が、ほんと素晴らしかったです。ドストエフスキーは、もっとも人間的な人間であるムイシュキンを本作に描きだそうとしたと宣言しているわけで、主人公の考えと行動はどうにも破綻しているんですが、読者に強い印象を残すんです。どう書けば良いのかさっぱり判らないんですが、いやー、ほんとに良いんですよ、ムイシュキンの発言が。これぞ文学だと思いながら読んでいました。
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幼かった頃の夢想のことを、ゲーテは「黄金の空想よ」と記します。ゲーテの詩には、神話的なものと理知的なものが混在していて、これが魅力のように思います。ゲーテはゲルマン神話と、とくにギリシャ神話の影響が色濃いようです。
この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。
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