変った話 寺田寅彦

 
今日は寺田寅彦の「変った話」を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
寺田寅彦が中学校で中国思想を学んだ時の話です。孔子と老子の話をしています。ぼくは老子が好きで。老子と荘子をもっと読んでゆきたいと思っています。明かりの本でも、老子の本を公開しているのでぜひ読んでみてください
 
 
寺田寅彦は、老子をこう評価しています。老子は、危険な虚無思想を説いたのでは無い。円満へ向かう虚無を説いたのだ。自然のままで作為なく生きる無為は、人が本来もっている無意識の整合性を大切にすることで、また老子には差別思想が無い。そうして老子は非戦論を説く。哲学の講義のようでもあり、また実用的な処世訓でもある。老子の思想は茶碗についだ米のようなものである。腐った米を食べれば食あたりするが、きちんと食べればこれほど味わい深く美味しいものは無いのである。
 
 
僕が感じた老子の魅力は、知りすぎるということはけっこう危険なことなんだ、ということや、空っぽであることが大切であるということや、幼子のような人の本能はとても妥当な判断力を持っている、そして飢えを意識しすぎて自分を無理に満たし続けようとするよりも、静かにじっくりと生きることを大切にしよう、ということを老子の思想から感じました。
 
 
明かりの本で老子を読んでみて、これは本格的に読んでみたいと思ったら、ぜひamazon図書館で老子の本を探してみてください。読みやすくて判りやすい入門書から、細部まで正確に解説した評論までたくさんあります。




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 幼かった頃の夢想のことを、ゲーテは「黄金の空想よ」と記します。ゲーテの詩には、神話的なものと理知的なものが混在していて、これが魅力のように思います。ゲーテはゲルマン神話と、とくにギリシャ神話の影響が色濃いようです。
 この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。

  

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レ・ミゼラブル(13) ユーゴー

 
今日はビクトル・ユーゴーの『レ・ミゼラブル 第二部 コゼット』
『第五編 暗がりの追跡に無言の一組』を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
前回、ゴルボー屋敷というのが登場しました。ゴルボーという名の由来は、ラ・フォンティーヌという詩人が書いた童話の「カラスのゴルボー」からとった名前だそうです。そこにジャン・バルジャンと幼子コゼットが立ち入り、暮らしはじめます。
 
 
亡命生活の気配が濃厚な物語になってゆきますが、これがなぜかというと、作者のユーゴー自身が政府を厳しく批判して国外追放の刑に処され、長いあいだ亡命生活を余儀なくされていたからなんです。ユーゴーは民主主義と人権尊重を強く主張した作家ですから、ナポレオン3世による帝政復活に激しく対立したんです。それで
1851年12月2日のクーデター以降のフランス第二帝政の時代には、ナポレオン3世のもとで言論や出版の自由などが規制されたりしていて、ずっとパリから亡命していた。投獄されるよりも遙かにマシですが、時の権力者から追放を命じられての亡命生活というのはそうとうしんどいことだと思います。ユーゴーはもともとパリに住み「ノートルダム・ド・パリ」などを描いた作家ですが、そこから19年間もの長き間追放されてしまう。イギリス海峡にほど近いガーンジー島に暮らし、そこで本格的な作家生活をするようになる。日本で言ったら、原発と政府に激しく反発し、沖縄に移住する感じでしょうか。
 
 
ジャンバルジャンにはややロリータコンプレックスの気配があります。ジャンの幼い頃の貧しい記憶と、コゼットの母親についての記憶が混じりあって、幼子を正しく育てたいという情熱へ結びついています。
 

ユーゴーはこのように書きます。

 

     そして彼は前夜のようにコゼットの顔をながめはじめた。その目つきには喜びの情があふれて、親切と情愛との表われは今にもはち切れそうであった。小娘の方は極端な強さか極端な弱さかにのみ属する心許した静安さをもって、だれといっしょにいるのかも知らないで熟睡し、どこにいるのかも知らないで眠り続けていた。ジャン・ヴァルジャンは身をかがめて、子供の手に脣をあてた。九カ月前には、永の眠りについたその母親の手に彼は脣を当てたのであった。その時と同じような悲しい痛切な敬虔な感情が、今彼の心にいっぱいになった。彼はコゼットの寝台のそばにひざまずいた。


ジャンバルジャンは、子どもはまず自由であることが大切であると考えているようです。ジャンはかつて25年間誰をも愛したことが無く、そうして孤立していました。かつての家族との記憶も、その家族が探し出せないことが判ると、あるべき青春の思い出とともに、深遠のうちに消滅してしまったのでした。
 
 
かつてジャンは、ミリエル司教という人から、生まれてはじめて誠実さというものを学びました。そうして今度はコゼットという幼子から、愛の必然性を学ぶのです。ジャンは幼子に、ものを読むその方法と、そうして遊ぶことの大切さを教えるのでした。
 
 
第一部では、身元を隠しマドレーヌと名乗って、商売と治世に夢中だったジャンバルジャンだったのですが、今回は多くの資産を手元に置き、ひっそりと暮らすことを生活の基本としており、町では貧しい身なりで歩くためにときおり女たちから小銭のほどこしを受け、そうして不幸な者に出会うとジャンは銀貨を密かに与えることが多かったので「施しをする乞食」と呼ばれているのでした。
 
 



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『春と修羅』昴 宮沢賢治

 
『春と修羅』宮沢賢治
 
 
 風の偏倚
 昴
 
 



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田端日記 芥川龍之介

 
今日は芥川龍之介の「田端日記」を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
ぼくは、インターネットとは異なるオフラインの日記を書いています。何のために日記を書いているのか自分でもよく判らないのですが、あとから思い出せない人名を思い出すのに、検索機能を使って探したり、1年前のある日は、いったい何をしていたのか調べるために日記の日付を検索したりします。今日のことで言えば、ここ最近洪水と大雨がはげしかった地域があったということを知って、それで自分は大雨の時どういう気分で文章を書いているのかと知りたくなって、そのワードで検索をしたりします。日記を記していると、自問自答することになります。今ここでこうしている私自身とはいったい何なのか、ということを自分なりに考えるための、良い道具だと思います。
 
 
日記と言っても、思想的なものや天候の記録といったものなど、多種多様にあります。ぼくが一番好きな日記は、ウィトゲンシュタインの哲学宗教日記です。
 
 
日記を書きはじめると、思考が変わったように思います。文章構造に似た、理路整然とした思考に近づいていった気がするんです。むかしはもっとデタラメなものを好んでいたのですが、日記を書くようになると、読みたい本や見たい映画が変化するんですよ。『書いてダイエット』という方法を使ってダイエットが出来るという話がありますよね。ただただ食べたものを書くだけで、食べすぎないで済むんです。あれは本当だと思います。むかしは出来が悪い暴力映画とかを好んで見ていたのですが、読書録をつけながらコンテンツに接するというクセをつけると、デタラメな作品を見ながら感想を書いている自分自身がバカバカしくなるんですよ。
 
 
あまり読んだことが無いのですが、文学者の日記はかなりたくさん残されています。作家のエッセーを読むと、書いて読む、読んで書く、ということを基本としているんだなと思いました。
 
 


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青猫(6) 萩原朔太郎

 
今日は萩原朔太郎の詩集「青猫」その6を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。「青猫」はこれで完結です。
 
 
萩原朔太郎ってどんな人なのか、調べてみたので書いておきます。出典は《中野重治は語る/平凡社/P57〜59》からです。
 
 
萩原朔太郎は、1942年に五十五歳で亡くなられています。中野重治氏はこう語っています。
 
 

戦争の初めのうちに、あの非常に大きな、そこから引きだすべき問題がまだ完全には引きだされていない大きな敗戦というもの以前に萩原は亡くなっています。ですから、日本の受けた猛烈なあの爆撃、沖縄の惨状、広島と長崎、それからきた日本の敗戦、さらに敗戦に引きつづく大都市その他の戦時以上に悲惨だった飢餓状態、さらにその後の被占領時代における日本の全変形、こういうものを、萩原は見ないで、それを体験しないで死んでいます。ですから、あれらをとおしてその後へ生きた人びととでは、問題の見方、考え方にそこばく違いがあるように感じます。

 
 
では萩原朔太郎は、そのような過酷な未来が待っていることをまったく知らずに生きていたのかというとそんなことはありません。中野重治氏はこう記しています。
 
 

     萩原朔太郎という人は、もともと世事にうといような人でしたから、敗戦ののちになお生きたとしてどんな観察をしたか、そこからどんな藝術を引きだしたかはわかりませんが、事実としてあの鋭い神経で感じとったものには一九四五年以後を通ってきた人びとのに比べてどこかのんきなようなところがある。これはもちろん、萩原として非難されることでは毫もありません。
     ただ、あの人が軍国主義的なものに強い反感を持っていたことは明らかだと思います。また日本の現状を非常にありきたりないもの、しばしば許しがたいものとしたことも、詩にも文章にも書いています。



中野重治氏は、萩原朔太郎を、革命を信じる人間と言うよりは、反逆者やアナーキストに近かったと論じています。萩原朔太郎は《現在秩序にたいする否認の気持ち》というものを持っていた。そして、軍国主義や専制主義には強い反感を持つけれども、軍隊の行進する姿というようなものについ引き込まれてしまう、アンビバレントな感情を持っていたようだ、と中野重治氏は推測しています。


萩原朔太郎の、「烈風の中に立ちて」という文章を公開します。


     私が『同志』と呼び、親しき友情を感じ得るものは、今の文壇でただ無産階級派の作家あるのみだ。彼等の仲間だけが、よく私の気質を知り、私の思想を了解してゐる。何となれば彼等の情操の本質には、いつもポオとニイチェの混血児が棲んでゐるから。尤もプロレタリア作家といふ中には、社会主義者の一派も居るが、彼等は私にとって例外である。社会主義そのものは、精神的に私と気が合はない。彼等は私の敵であつて仲間でない。私の言ふのはアナアキストの一派であり、或はニヒリストであり、或いはダダイストのことである。思ふにすべて此等の思想は、私の第一詩集『月に吠える』の中にその『情操の起源』を有してゐる。




中野重治氏は、こう記します。
 

    究極のところ、朔太郎という人は人が他を理不尽に圧迫するというようなことには耐えられなかった。これは全作品、全生涯について見られると思います。










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 幼かった頃の夢想のことを、ゲーテは「黄金の空想よ」と記します。ゲーテの詩には、神話的なものと理知的なものが混在していて、これが魅力のように思います。ゲーテはゲルマン神話と、とくにギリシャ神話の影響が色濃いようです。
 この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。

  
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レ・ミゼラブル(12) ユーゴー

 
今日はビクトル・ユーゴーの『レ・ミゼラブル 第二部 コゼット』
『第四編 ゴルボー屋敷』を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
前回、モンフェルメイュでの水汲みをしていたこの物語の2番目の主人公コゼットが、テナルディエという悪い男にこき使われていたのでした。テナルディエ夫人がコゼットをこき使う姿はあたかも鬼婆のようであった、と記されています。児童は、これを酷使してはならないのであります。子どもを困らせ、それを改めないような大人はイカンのであります。
 
 
テナルディエというのは、作者ユーゴーによれば、悪しき男なのであります。支配的な世の善に抵抗する意思を持つような、迫力のある悪人では無いんです。狡猾で、嫉妬深く、罪を人になすりつけてばかりの、たちの悪いやつなのでありました。鬼のような夫人と、テナルディエとに二重の責め苦を受けるコゼットは、常に怯えながら仕事をやりおおすのでした。コゼットは水汲みや掃除洗濯など、暮らしのすべてをつかさどる仕事をしているのです。ユーゴーはこの架空の登場人物コゼットに対して、こう記します。
 
 

    あわれな娘は、何事をも忍んで黙っていた。

 
 
 「あわれ」という言葉には「共感する」という意味が込められてあって、それは「悲しい女」と述べる時と明確な違いがあるそうなのです。辞書を調べてみると、広辞苑には「あわれ」がこう記されています。
 

3.心に愛着を感ずるさま。いとしく思うさま。
源氏物語(空蝉)「この人の何心なく若やかなるけはひも、あはれなれば」
源氏物語(帚木)「下臈に侍りし時、あはれと思ふ人侍りき」

6.気の毒なさま。かわいそう。
源氏物語桐壺「命婦は、まだ大殿ごもらせ給はざりけるをあはれに見奉る」

7.悲しいさま。はかないさま。さびしいさま。
源氏物語桐壺「かかる別れの悲しからぬはなきわざなるを、ましてあはれにいふかひなし」

 
 
また、《感動、愛情、人情、情趣、悲哀》を意味したり、《ものに感動して発する声》であったり、《ああなんとかして。ぜひとも》という意味で使われることもあります。レ・ミゼラブルとはまったく別のことを書きますが、さいきん、「もののあはれ」ってなんなのか少し調べてみたので、メモしておきます。「かなし」と「あはれ」には大きな違いがある。本居宣長は「もののあはれ」というのが、日本文学の要点である、と述べています。「もののあはれ」というのは、折に触れ、目に見、耳に聞くものごとに触発されて生ずる、しみじみとした情趣や哀愁のことです。「ああっ」と思う瞬間のこと。
 
本居宣長を研究した学者の大野晋氏の「源氏物語のもののあはれ」にはこう記されています。

アハレといえば、「気色」にせよ「けはひ」にせよ「さま」にせよ、その対象が現に存在している。場合によっては、対象は道端の行き倒れの人でもある。それを外から見ている。そこに生じてくる気持ちである。そして、対象を目で見ているだけではなく、基本的に対象に心の底の共感を抱いている。



 
和辻哲郎はこう書いていますよ。

「もののあはれ」とは畢竟この永遠の根源への思慕でなくてはならぬ。…「物のあはれ」とは、それ自身に、限りなく純化され浄化されよとする傾向を持った、無限性の感情である。すなわち我々のうちにあって我々を根源に帰らせようとする根源自身の働きの一つである。


とても神秘的な表現ですね。永遠の根源への「思慕」のことを、「もののあはれ」と言う。
 
 
文学者や思想家によれば、この「あはれ」と「かなし」の違いを感ずることで、文学理解が深まる可能性がある、と指摘されています。
 
 
ぼくがまず理解したのは「かなし」というのは大きなへだたりがある歎きのことで、「あはれ」というのは対象との距離が近くて、思慕の念や共鳴というのが起きている。
 
 
「あはれ」と「かなし」の違いは、現代語にも伝承されていて「悲しい」というのは、そのつらい出来事に対してもはや何もしてやれることが無い時に言う。「逢えなくて悲しい」と思うのは、それは対象と距離が出来てしまっていることからくる歎きです。大きな距離が出来てしまって「かなし」と感ずる。いっぽうで、幼い子が苦しんでいるのを見て、ぼくたちはそれを「あわれ」だと感じる可能性がある。それは、その幼子に対して、何かしてやれることがあるはずだと心の奥底で感じているから、思いが共鳴して「あわれな娘は、何事をも忍んで黙っていた」という記述になるのです。
 
 
つらかろう、と思う時に、自分の過去や未来と照らしあわせて、自分の苦と響き合って、「あはれ」という記述になるのです。ですから、《第二部 第三編 死者への約束の履行》において、この作者のユーゴーや、翻訳者の豊島与志雄は、この架空の登場人物コゼットに対して、愛しく思ったり、なんとかしてやりたい、状況を変えてやろうと思いながら「あわれな娘は、何事をも忍んで黙っていた」という文章を書き記しているんです。
 
 
このレ・ミゼラブルは、「あはれ」や「かなし」といった苦の描写と、明るく知性的なおもむきを伝える「をかし」の両方がバランス良く物語に編み込まれていっているように思います。
 
 


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ランボオ詩集5

 
今日は中原中也が翻訳した『ランボオ詩集』のその5を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
1〜4まで紹介したんですが、残りの5〜11までをこれから紹介してゆこうと思います。
 
 
イギリス出身の詩人ウィスタン・ヒュー・オーデンによれば、「あらゆる詩は、その実際の内容がなんであり、みた目の関心事がなんであろうと、想像的畏怖に根ざしているもの」であり、また詩はあらゆる感情を喚起できる特別なものであるがゆえに、「その存在と生起をほめたたえることのできるすべてのものを、詩はほめたたえねばならない」義務があるのだというのです。すごいことを言いますね。


ちょっと正確に引用してみます。ドイツがポーランドに侵攻した時に「1939年9月1日」という詩を書いたオーデンが、戦後の1956年6月11日、オックスフォード大学の詩学教授に就任した時の講演の一部抜粋です。引用元はこちらです。
 
 

 詩人に詩を書こうという衝動が起こるのは、想像力と聖なるものとの出会いからです。ことばのお蔭で、彼はみずから望まぬ限り、直接、この出会いに名前をつける必要はありません。彼は、その出会いを他の出会いの言い方で記述し、私的、非理性的あるいは社会的に受け入れられない言い方を、理性と社会に受け入れられるようなものに直すことができます。聖なる存在——そのために詩が書かれた聖なる存在——について直接的に書かれた詩もあれば、そうでない詩もあります。後者の場合は、その詩を書く衝動を与えた、もとの出会いがなんであったかは、読者にはわかりません。おそらく、詩人自身にもわからぬでしょう。詩人の書く詩はすべて、彼の過去全体を包含しております。たとえば、あらゆる恋愛詩は、去った愛人という戦利品で飾られています。戦利品のうちには、実に奇妙な品物が含まれているかもしれません。現在の美しい女性は、その先輩のなかに、上掛け水車を数え入れるかもしれません。しかし、新しい出会いにせよ、過去を思い出して新しくされた出会いにせよ、詩人が出会いを経験しなければ、本物の詩は書けないのであります。あらゆる詩は、その実際の内容がなんであり、みた目の関心事がなんであろうと、想像的畏怖に根ざしているものです。詩には、多くのことができます-喜ばせ、悲しませ、心をかき乱し、ひまをまぎらせ、教えることができます。詩は、情緒の考えられるあらゆる度合いを表現できるでしょう、考えられるあらゆる種頼のできごとを描けるでしょう。しかし、あらゆる詩がなさねばならぬことが、ただひとつあります。その存在と生起をほめたたえることのできるすべてのものを、詩はほめたたえねばならないのです。

 
 
オーデンは戦争の最中、音楽を止めるわけにはいかないんだ、と述べ、このような詩を書き記しています。
 
 
  宵闇の中で無防備に
  世界は昏睡して横たわっている
  だが正義がメッセージを交し合うところ
  そういうところではいたるところ
  点々と光が交差して
  まぶしい耀きを放っている
  俺もエロスと泥から作られており
  同じく否定と絶望に
  付きまとわれている限りは
  この光の交差のような
  肯定の炎を放ってみたいものだ
  
 
このランボオの詩には、《わしらはお前の祖先だ/絵をごらん/花をごらん/そうすると墓の中からわしらはかえってくるのだよ》という詩があります。死者は生者の思い出の中を住み家にして、今生きている人々を見つめているのだ、とランボオは語りかけます。ランボオは古人ですけれど、中原中也の中で生きつづけたし、今これを読むぼくたちの心の中にも、ほんの少しだけ顔を覗かせてくれる瞬間があるように思います。
 
 


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