今日は楠山正雄の翻訳したイギリス童話『ジャックと豆の木』を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
この話を聞いたことがない人はたぶん誰も居ないと思いますが、登場人物とできごとの順序を正確に覚えている人は、もともと記憶力の良い人か、あるいは最近ぐうぜん読んだのか、またはなにか専門的に児童書や物語に関わっている人だけではないでしょうか。
記憶力の良い人は、このずいぶん昔に読んだ内容を、一つも順序を間違わずに憶えているのでしょうか? この童話を読み始める前に、ちょっと、この話のあらすじをうろ覚えで書いてみました。ジャックがこうして。ジャックがどうなって。それからこうなって。という感じのメモを。それから読みはじめてみると、まるで記憶違いで驚きました。
では、僕のうろ覚えの記憶を記してみます。
[ctrl+a]ボタンを押すと、僕のうろ覚えの記憶が読めますよ。
ジャックはお母さんのためにまいにち働いていました。ジャックのお家は貧乏ですが、病気のおかあさんのために畑を耕し、にわとりを育てていました。ある日、ジャックがたいせつに育てた豆の木がどんどんどんどん大きくなって、天まで高く育ちました。ジャックは思いました。「うーん、この豆の木をのぼってゆくといったいどこにつくんだろうか」ジャックはお母さんに見送られながら、豆の木をずんずんと登ってゆきました。いくら登っても、どこまで行っても豆の木のてっぺんはみえません。山登りでも見たことのない風景が広がります。ジャックはついに雲の上までたどりつきました。こんなに高く育つなんてすごい。ジャックは雲の上を歩きます。するととんでもなく大きな神殿がありました。ジャックはこわい番犬をさけて、雲の上の神殿に入りました。そこには財宝がたくさんありました。家族のために、ジャックはたからものを手に持って豆の木を下りてゆきました。すると、雲の上に住む巨人が怒りはじめました。「こらきさま! だれにことわってたからものを盗んだ! ゆるさんぞ!」巨人が豆の木を下りるジャックを追いかけてきます。さあたいへん。ジャックは豆の木を急いで下りて、家に帰り着き、斧を手にして豆の木を切りました。豆の木はずうんと倒れ、雲の上の世界と地上の世界の通り道はふさがりました。ジャックは家族としあわせにくらしました。
ぼくのうろ覚えの記憶は、どうにも間違いだらけのものでした。まあ、読んだのが絵本ですからこれよりももっと子ども向きのストーリーのやつを憶えていたんですが。それにしても間違いが多かったです。とくに、にわとりの卵というのを忘れていましたし、なんども宝を盗もうとするという話を失念していました。これはようするに「仏の顔も三度」までということを物語化しているんですね。
肝心なところを見逃していました。というかジャックと豆の木というお話しはちょっと危ない話しなんですね。びっくりしました。これはイギリスの童話です。窃盗を繰り返したり他国の人間を倒す、というのはどこか暗い歴史と共鳴しているようにも思えます。僕はイギリスの哲学者を何人か調べていったことがあるんですが、その哲学と暗い歴史とがやはり共鳴していたように思えてならないんです。そう言えば、ハリーポッターの作者であるJKローリングもイギリスの作家ですね。
イギリスといえば、ディケンズが有名です。ディケンズといえば最近ディズニーでも映画化された『クリスマスキャロル』が有名です。ほかに『オリバーツイスト』や『二都物語』等があります。
ロシアの詩人ヨシフ・ブロツキイが、イギリス作家のディケンズのことを高く評価していて、このように述べています。
「たいそうなことを言うつもりはありませんが、少なくとも、ディケンズの小説をたくさん読み耽った者にとって、いかなる理想のためであれ自分と同じ人間を撃ち殺すことは、ディケンズを読んだことのない者にとってより難しいだろう」
ヨシフ・ブロツキイは『私人』という講演録において、旧ソビエト連邦での体験を踏まえて、読み書きや教養よりももっと重要なことがあると述べています。高い教養を持った人物が、あれやこれやの政治論文を読んだ後で、自分と同じ人間を殺し、しかもその際に信念の歓喜を味わうということさえ充分にありえるのだ、と警告しています。ブロツキイはそれに対抗するために創作者たちは「文化の連続性が持つ効力を再生させ」てゆくべきであると述べています。文学についてブロツキイはこのように述べています。
「自分は他者と違う存在であることを示すこと。そして同語反復を避ける、つまり『歴史の犠牲』という栄誉ある別名で知られる運命を避けること。人間のこういった営為を助けてくれる点にこそ、文学の功績のひとつがあります」
「国家の哲学も、国家の倫理も、国家の美学も、常に『昨日』です。それに対して、言語や文学は常に『今日』であり、『明日』にもなります」
ブロツキイは、美学というものが倫理を築きあげるためにとても重要であり、個人の美的体験こそが倫理の母であると告げています。それぞれの美的体験を通して、各個の揺るぎがたい倫理を築き上げねばならない、とブロツキイは述べています。詳しくは『私人』をお読みください。
記憶力がそんなによろしくない、という人は大切なことをメモして、時折読み返すためのノートがあると良いんじゃないかと思います。ちょっとした日記の書ける、すてきな手帳とかが手元にあるとそれなりに記憶が整理されてゆくのではないかと。明かりの本では忘れかけた良書の再読をお薦めしています。図書館や本屋を使うのが一番だと思いますが、明かりの本でも良書が読めますよ。右上のカテゴリーに好きな作家名があればクリックしてぜひお読みください。今はまだハロウィンの季節ですが、ディケンズの『クリスマスキャロル』も読めますよ。
ところで『ジャックと豆の木』という童話はイギリスの民話から変化していったもので、原作者が誰なのかはよく判りません。
https://akarinohon.com/migration/jack_to_mamenoki.html (ページ数 約30枚)
明かりの本は新サイトに移行しました!
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明かりの本 新サイトURL
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appleのmacやタブレットやスマートフォンなど、これまで縦書き表示がむずかしかった端末でも、ほぼ99%縦書き表示に対応し、よみやすいページ構成を実現しました。ぜひ新しいサイトで読書をお楽しみください。
ここからは新サイトの「ゲーテ詩集」を紹介します。縦書き表示で読めますよ。
幼かった頃の夢想のことを、ゲーテは「黄金の空想よ」と記します。ゲーテの詩には、神話的なものと理知的なものが混在していて、これが魅力のように思います。ゲーテはゲルマン神話と、とくにギリシャ神話の影響が色濃いようです。
この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。
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(総ページ数/約10頁 ロード時間/約10秒)
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