今日はフョードル・ドストエフスキーの「白痴」その14を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
「フィリッポヴナさん」というのはヒロインのナスターシャ・フィリッポヴナのことです。ドストエフスキーの小説は、愛称やミドルネームがいろいろ変化して、あまたの脇役が大活躍するので、登場人物表と照らし合わせて読むと、かなり読みやすくなるんですが、それでも人名が多すぎてわけがわからなくなることがあります。その場合は、主人公ムイシュキンとヒロインのナスターシャという名前だけ見てれば良いのかと思います。それぞれ悪行について白状してゆこうというゲームの中で、こういう話しになります。
本文とあまり関係無いんですけど、完全に合法に生きようとすると、車の時速は50キロ以上出したらいけなくなるし、アイドルの顔写真や文章を許諾無くコピペしちゃいけない。完全に合法な人生はむつかしい。
ところが、フェルデシチェンコの窃盗事件はほんとにムチャクチャなんです。ここまで意図的に悪いことをするのかと、衝撃を受けました。盗んだすぐあとに、他人に濡れ衣を着せて、無実の者を罪人に仕立てあげた。その描写がえげつない。
ナスターシャは、ひどい人間関係を憎みつつそれを望んでしまうところがある。これがこのヒロインの最大の特徴なんだと思います。いちばん親しくしているはずの相手が低劣で、ナスターシャは心底、怒ってしまう。本文こうです。
この「人生でいちばん悪い行いを告白する」ゲームは、すこし懺悔に近いところはある。だが参加した人々がみな傷つくというところがまったくちがう。次は将軍が話す番なんです。「皆さん、僕もみんなと同じように、僕の生涯においてきわめて下劣な行為をしたことがあるのです」と将軍が語りだした。
将軍の告白を読んでいて、ああー、と唸りました。本文とはちょっと関係無いことなんですけど、権力を持っていてそのぶん幸福なはずなのに、なんで悪いことをしちゃうんだろうと思っていたら、部下との関係性で変なことになったようなんです……。人間関係で力を持っているぶん、人間関係が混じりあってしまって、自分の所在がどこからどこまでなのかが、意識しにくくなる。
将軍の罪の意識の描写は、権力がどうというよりも、配慮をし忘れてしまった時に起きた悲劇なんですが、なんとも不可思議なものでした。そういうことは誰でも人生で経験するのかもしれない。
ドストエフスキーの「白痴」を全文は読まないけれども、ちょっとどういうものか覗いてみたい、という方のために、今回この将軍の告白のところだけを、切り取ってみました。10分で読めますので、気になったらちょっと読んでみてください。
次の告白は、デュマの「椿姫」が引用されていました。wikipediaと同時に読んでみました。椿をどうしても手に入れて愛しい彼女にプレゼントしたかった男と、ちょっとしたイタズラ心でこの恋愛の過程を横取りしてしまった男の話です。
ドストエフスキーの人種感覚が楽しいんですよ。彼によれば「きっすいのロシア人」というのは、その血統によるのではなく、その行いによって決定づけられる。
それから、ヒロインのナスターシャが、じつに奇妙すぎる告白をする。それは、ムイシュキン公爵の判断だけに従って、成金で強欲なロゴージンとナスターシャが結婚するか否かを決める、そのようなゲームを提案して、ムイシュキン公爵はこれに「い、いけません……しちゃいけません!」と答えた。ナスターシャは、それではロゴージンと結婚をするのは辞めましょうと決めたのでした……。キャラ立ちがすごい、と思いながら読みすすめました。

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ゲーテは詩心についてこう記します。
わたしがどんなに迷ひ、どんなに努めたか
どんなに悩み、どんなに生きたかは
ここなる花輪の花となる
さうして老境もまた青春も
徳も不徳も集めて見れば
また捨てがたい歌となる
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