老ハイデルベルヒ 太宰治

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今日は太宰治の「老ハイデルベルヒ」を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
題名の『アルトハイデルベルヒ』というのは、古き(良き)ハイデルベルクという意味で、これはドイツのマイアーフェルスターの演劇から引用したものです。古き良き都市ハイデルベルクになぞらえて、伊豆半島は三島の魅力を、太宰治は描きだしています。
 
 
学生時代に、太宰治は、友人佐吉さんのいる伊豆半島の三島が大好きになったわけで、その8年前の町と祭りと、貧しい人びとの様子を描いているのが、この『老ハイデルベルヒ』という作品です。
 
 
なんだか、バルザックの『ゴリオ爺さん』に描かれる、散財をしつくして一文無しになるラスティニャック青年のような、若き日の作家自身の姿を描きだす、太宰治なんです。太宰治はよく、過去の自身をモデルにして小説を書いています。若い太宰とすこし歳をとった太宰とが2人居る感じを描くのが、なんだか印象に残るんです。2人の太宰治が活写されている。
 
 
この『老ハイデルベルヒ』は、1940(昭和15)年3月に出されたもので、このころに『駆込み訴へ』や『走れメロス』などの名作を出しています。
 
 
作中に「八年間」と書いているので1932年ごろの三島を書いているはずなんですが、太宰治の正確な年表を調べてみるとこれは、1934(昭和9)年の25歳の夏の思い出を、描いています。略年譜には『夏、静岡県三島市の坂部武郎方に約一ヶ月滞在、「ロマネスク」を執筆。』と書いているので、この頃のことを今回書いていることは間違いないです。
 
 
太宰治にとって、三島はとても思い出深い町なんです。作中こう書いています。
 
 
  私のそれから八年間の創作は全部、三島の思想から教えられたものであると言っても過言でない程、三島は私に重大でありました。
 
 
太宰治はどこまで現実の模写をして、どこから先が小説の幻想なのか判らないような書き方をするんですけど、1934年と1940年との落差を描いている……というようにも読める。太宰は何よりも、佐吉さんという人が好きで、その明るい生き方を活写しているわけで、それが1940年の三島にはもう居ない。佐吉さんとの思い出が、この物語に活写されている。太宰治はこの小説の序文で「人間は誰しも、思ひ出のハイデルベルヒを持つてゐる。」と書き記しています。
 
 
祭りの日を描きだした場面が印象深いです。本文こうです。
 
 
  お祭の当日は朝からよく晴れていて私が顔を洗いに井戸端へ出たら、佐吉さんの妹さんは頭の手拭いを取って、おめでとうございます、と私に挨拶いたしました。ああ、おめでとう、と私も不自然でなくお祝いの言葉を返す事が出来ました。
 
 
ここから10数行の描写がじつに美しかったです。
 
 

 
 
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 この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。

  

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