卍(まんじ) 谷崎潤一郎(4)

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今日は谷崎潤一郎の「卍 まんじ」その4を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
前回、綿貫の子を妊娠をし、産まない選択をした光子さんだったんですが、その堕胎の方法に誤りがあって、光子さんは病に陥った。……ということだったんですが、どうもこれが狂言であって、ウソであると。ウソで恋人園子さんの気を引いて、はなしが二転三転して、いったいなにが事実だったのかどうも判らないし、なによりも、光子さんはどういうまごころがあるのか、もはや五里霧中である。
 
 
園子さんと光子さんの壊れてきた恋愛を描写しているわけで、こういう状況というのはなんというかじつにリアルで、読者に響いてくるなと思いました。二人は一時的に仲直りして、梅田から奈良へデートをする。
 
 
園子さんとのデート遊びと、綿貫との結婚を、光子さんは両方とも得たいと考えている。両立は出来ると考えている。女二人での密会デートに相応しい場所を探しつづけて、以前事件が起きた、宿屋に籠もることになった。園子と光子と、美男子綿貫3人で会ったりもしている。△関係がもつれにもつれているところなんです。
 
 
密会を夫にごまかすために、光子さんは妊娠中で手伝いが必要だというようなことになっていたりする。ウソが雪だるま式に脹らんで行ってる最中なんです。ウソだらけで混乱をしてしまって、恋敵同士だったはずの、美男子綿貫と(お姉さんと呼ばれている主人公の)園子さんは、2人で美女光子さんの謎について語りあうんです。本文こうです。
 
 
  「いったいお姉さんは、僕とお姉さんと孰方どっちが余計愛されてる思います。…………ほんまに僕を愛してるのんなら……結婚してくれたらええやありませんか。」(※……は省略)
 
 
さらには、妊娠劇というのがじつはウソだったんではないのかとまで疑らざるを得ず、主人公の園子さんはこう考える。「そしたらやっぱり光子さんはほんまに妊娠してはるのんやろか」まるで推理小説のように、事実が行方不明になっていて、わけがわからない。真相はいったいどうなんだろう、と思いつつ読んでいます。
 
 
恋人である光子さんが妊娠したかどうか、園子にも綿貫にも判らない。恋人が2人も居るのに、彼女の真相がわからない。すごい状況ですよ。光子さんは「妊娠した」と言っていたり「妊娠していない」と言っていたりする。どちらかでウソを言っているわけなんですけど、ウソをつく動機が多すぎるので、もはや事実が行方不明になっている。
 
 
ようするに園子も綿貫も2人とも、光子さんとの将来設計が出来ていなくて、貧乏人だとか同性愛だとか、触れてほしくない所が多すぎて、いちばん見えているはずの事実さえ見えなくなっていると。事実どころか、心もつかみきれなくなっている。恋愛だけに専念していたのに、なぜか心も行方不明になっている。
 
 
園子さんとしては、やっぱり綿貫が頼り無さすぎるので、こういういざこざになったんだと考える。ついに出血さわぎでさえ、なにかしかのトリックだったのではないかという疑いまで起きる。まるきり恋愛推理小説みたいになっている。恋愛の推理小説っていままで読んだことなかったです。
 
 
女性同士が恋愛をして、結婚をして、親戚や病院を通して妊娠の計画をして、子どもが産まれて女二人で子育てをするというのはかなり自然なこう、事態だと思うんですけど、100年前の社会だとこれはもう無理だなと思いました。ただ結婚生活は無理であっても、恋愛は出来るとここの登場人物たちは考えている。本文こうです。
 
 
  同性の愛やったらどんな男と結婚したかて、続けて行かれる。夫が何人変ったかてちょっとも影響せえへん、そしたらお姉さんと光ちゃんの愛は夫婦の愛よりも永久不変やいうて……
 
 
ほかにもこう書いています。
 
 
  ……なんにも嫉妬することあれへん。ぜんたいあんな綺麗な人たった一人で愛そいうのんが間違うてる。
 
 
思わず、なるほどそういう人間関係もあるのかと、真に受けてしまいそうになりました。美男子綿貫は、園子と契約書まで交わしあって、三人で協力しあって、光子と恋愛を積み重ねてゆこうと考えている。
 
 
まんじを全文は読まないけど、内容をちょっとのぞいてみたい方は、こちらの3ページだけを読んでみてください。
 
 
このあとに出てくる契約書の内容がヤバくて、三人で恋愛を続けるために、一人の恋愛が終わってしまったら、もう一方も同時に恋愛を辞めると言うんです。さらには二人目の子どもも園子としては辞めてほしいと契約書に書かせた。そんなバカなという感じです。
 
 
ただ、恋愛における骨肉の争いが無くなるというところには意義がある。園子はこれに同意して署名した。血判まで捺した。うわー、というところで次回に続きます。
 
 

 
 
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 幼かった頃の夢想のことを、ゲーテは「黄金の空想よ」と記します。ゲーテの詩には、神話的なものと理知的なものが混在していて、これが魅力のように思います。ゲーテはゲルマン神話と、とくにギリシャ神話の影響が色濃いようです。
 この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。

  

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