白痴(44) ドストエフスキー

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今日はフョードル・ドストエフスキーの「白痴」その44を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
アグラーヤとその家族は、ムイシュキン公爵を社交界にデビューさせようとしている。ただ公爵は世間知らずで学力もとぼしい。本文こうです。

とにもかくにも、おそかれ早かれ、公爵を社交界へ出さなければならぬ。なにしろ、公爵は社交界というものには、とんと不案内だからである。要するに、親たちは、公爵を多くの人に『見せ』たい意向をもっていた。

誰も彼もそろいもそろって、公爵という人はまことにおめでたい人で、自分の身の上をみんながこんなに心配しているのに、ちょっとも察しがつかないのだという概念を作り上げてしまっていた。そのために、彼を見ては、誰もが心ひそかに憂えていた。
 
アグラーヤは、公爵のことをとても尊敬していて好きなわけですけれども、公爵の特殊な行動というのを止めさせたいという強い願望を持っています。ちょっと前に公爵がさまざまな議論をしたことを、良いことだとはまったく思っていないんです。夜会の席で、ムイシュキンがおしゃべりになることを禁じたがっているんです。具体的にはこう述べています。

「もしもあなたが、何か死刑だとか、ロシアの経済状態だとか、『美が世界を救う』だとか、そんな風なことをしゃべりだしたら、そしたら……わたしはもちろん、喜んで、さんざん笑ってあげますけど、しかし、前もって御注意しておきますが、今後はもうわたしの眼の前には出ないでくださいね!いいでしょう、わたしまじめに言ってるの!今度こそまじめに言ってるんだわ!……(略)……それじゃ黙ってらっしゃい。神妙に坐って黙ってらっしゃい」
 
彼は、それが上手く出来そうにない性格なので、公爵はもう、公爵のための夜会に、出席しないのがいちばん良いのではないかとさえ言ってしまう。
 
 
非常に親密なはずのアグラーヤから困惑する注文を受けて、主人公ムイシュキン公爵はなぜか、暴漢ロゴージンとあって話しをしたくなる。このなんでしょう、細やかな伏線のみごとさというのか、複層になった人物相関図の織り込み方の鮮やかさが、読んでいてたのしかったです。中盤で気になる記述がありました。こういうのです。
 
アグラーヤがどうしたわけか(『嫉妬しっとのためだ』と公爵はひとり言を言ったが)、非常な不安と、なみなみならぬ逡巡と、激しい苦痛におそわれている

ぼくはほとんどまったく嫉妬を感じないこう、人間性に乏しい日常をすごしているんですけど、たとえば折口信夫は「万葉びとの生活」の中で嫉妬の重要性を説いている。ぼくは価値のある嫉妬の感情というのが分からないなあと、長らく思っていたんですけど、そういえば文学でたのしいと思うシーンは、嫉妬が深く関わっていることに、今回はじめて気が付きました。このドストエフスキーの白痴を読みすすめると、登場人物が嫉妬をしている。そこにとても共感して、こういう人間性があるのかと感心するところがありました。
 
 
嫉妬がないというのは世間との関わりが薄い、ということだと思うんですよ。アグラーヤとナスターシャを比べると、愛しい人が別の人のところへゆくことに対して、態度がまったく逆なんです。アグラーヤには健全なこう心のありようがあって、たびたび嫉妬をしています。
 
 
ガーニャの父親であるエパンチン将軍はもう寿命が近く、病に臥していて、息子のガーニャとコーリャは動揺しています。……それから公爵をもてなす社交界の夜会がはじまった。ちょっとこの場面だけバルザックが描くフランスの社交界みたいに華やかなんです。脇役の描写も浮ついた感じで面白く、元ドイツ人で異国に移住した詩人が出てきたりしてなんだかハイネみたいで、どうもフランス的な夜会の描写なんです。本文こうです。

……有名な、色男のN公爵があった。これはヨーロッパじゅうの女を悩殺するほどの人で、また女ごころの征服者でもあった。

……そこにはもう一人、文学者で詩人である人さえもいた。元はドイツ人の出であるが、今では立派なロシアの詩人で、そのうえ、きわめて礼儀正しい……(略)……
例のドイツ系の詩人は、非常に愛想よく、つつましやかにふるまってはいたが、しかも、ほとんど自分の訪問によって、この家に対して名誉でも与えたかのようなつもりになっていた。ところが、公爵はこうした裏面の事情には、全く気がつかなかったのである。
 
 
アグラーヤは、社交界で華々しい姿を見せている。ムイシュキン公爵もなんとかその場に馴染みつつあるところで、突然なにか………………というシーンで次章に続きます。



 
 
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