白痴(16) ドストエフスキー

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今日はフョードル・ドストエフスキーの「白痴」その16を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
貧乏な愚者だと思われていた、主人公ムイシュキンなんですけれども、じつは彼には多額の遺産が手に入る可能性があった。調べてみると今ほとんど無一文で住み家さえ無い彼はどうもほんとに、将来的には遺産をもらい受けて、お金持ちになるようである。その書面が出てきた。その時の周囲の描写がこうです。
 

しかししばらくたつうち、一同はほとんど一斉に、ほんの今、公爵が彼女に結婚の申し込みをしたのを思い出した。すると、事件は前より三倍もひどく狂気じみた異様なものになってきた。

主人公ムイシュキンから結婚を申し込まれ、さらに彼がどうも大金持ちになりそうだということが判った、ヒロインのナスターシャの反応がこうです。

ナスターシャ・フィリッポヴナの気がふれたのはこの時からだと後になって人々は主張した。彼女はやはり腰をおろしたまま、しばらくのあいだ何ごとが起こったかわからないので一心になってそれを知ろうとしているようになんだか奇妙に笑い、驚いたような眼つきをして人々を眺め回していた。

それで奴隷を買うように彼女を買おうとしていた強欲なロゴージンと、無垢で愚かな主人公ムイシュキン公爵に対して、ナスターシャはこう言います。

百五十万ルーブル、それに公爵、そのうえ、おまけに白痴だそうですから、これに越したものはありませんわ! 今こそ本当の生活が始まるんです! ロゴージン、遅かったわね! その包みをおしまいなさい、わたしは公爵と結婚して、おまえさんよりずっとお金持になるんだわ!

ムイシュキンは、愚者だと思われているだけあって、自分に資産が有るか無いかということをまったく意に介さないようなんです。それよりも、ナスターシャの不幸についてずっと黙考している。ムイシュキンによれば、彼女には地位や名声や大金が必要なのでは無くって「あなたには親切にめんどう見てあげる人間が入用なのです」と言うんです「僕がめんどうを見ます」と言っている。
 
 
ところがナスターシャは、それが破滅を意味すると判っていながら、ロゴージンと結ばれようとする。
 
 
ナスターシャとロゴージンの混乱を見ていて将軍が「これはソドムだ」と言うんです。wikipediaにはソドムについて、こう記していました。wikipediaとドストエフスキーの組み合わせは、えげつないなと思いました。
 
 
聖書を読み込んでいる人にとって、ドストエフスキーの描きだす悪夢は、よりいっそう重いものとして感じられるのだろうと思います。聖書とドストエフスキーの組み合わせこそが、文学の最奥というかなんというか……。ここから先の、ナスターシャの告白と行動に息をのみました。まさにソドムの住人が描きだされるんです。ナスターシャの僅かに残された善意によっておもわず飛び出た言葉に唸りました。この小説は4部構成というか、4編で構成されているんですが、今回が1番目の終幕なんです。次回から、第2編がはじまります。
 
さよなら、公爵、この世ではじめて人間に会いましたわ!
 
 
それからガーニャが苦渋の決断をするシーンが印象的でした。
 
 

 
 
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 この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。

  
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