白痴(8) ドストエフスキー

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今日はフョードル・ドストエフスキーの「白痴」その8を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
ガーニャとはいったい何者なのか、wikipediaの登場人物表にはこう記されています。 
 

ガヴリーラ・アルダリオノヴィチ・イヴォルギン (ガーニャ)
イヴォルギン将軍の長男。エパンチン家の秘書。腹黒く欲張りで、癇癪持ちの羨望家。7万5000ルーブルを手にするためナスターシャと政略結婚をしようとしている。
 
なんだか悪いことを考えている男なんです。ところがドストエフスキーはそういう脇役的な悪人を主人公と同じように扱い、細部まで丹念に追ってゆくんです。これが……ドストエフスキーの文学性で、読んでいて疲れ果てる原因だと思うんです。心理描写まで徹底していて、知りたくない悪意を脳に書き込まれてゆく感じがあって、重苦しい。さらに彼の家族は意外と心やさしいことが細密に描かれてゆく。
 

作中に「この家の中ではいっさいのものが狭くるしく込み合っていたのである。」って書いているんですけど、まさにドストエフスキーの小説がそういう構造になっている。その毒に中毒性があって、読んでいて止められなくなる。サンマの内臓の苦い味みたいですよ。
 
 
そういう家の中にガーニャから「白痴」と罵られてしまった主人公のムイシュキン公爵が、ただの通りすがりのような存在だったのに、住み込むようになる。こういう息苦しさを、ムイシュキンはかなり無視をして行動しているようである。通常ならば、もっと別のところに住もうとしますよ。それを家の中に完全に住み込んでしまう。内臓を内部から観察しているような情景ですよ。
 
 
作中には「公爵はガーニャの非難をいまいましく思って」いて「二人の間の関係は明らかにいよいよ険悪になってきた。」と記されています。
 
 
それからほんとにあまたの登場人物が次から次にでてくるので、登場人物表を使って読んでいます。ガーニャの父のイヴォルギン将軍というのが、とんでもないウソを言ってワケが判らない。主人公の死んだ父について、次から次に存在しないデタラメな過去を述べてゆく。しかも生老病死という重大なところを偽るんです。この虚言はおそろしい。ちょっとしたウソって誰でも言うんですけど、普通ならぜったいに言わない問題についてイヴォルギンは、言ってしまう。
 
 
慣れの問題なのかもしれないんですけれども、不気味な男のその犯罪だけを見るというのは、新聞やテレビで繰り返し見てきたわけで、とくになにも思わなくなるんですけど、不気味な男とその家族との親交をみると、もっと根源的にこう、犯罪っていったいなんなんだろうとか、悪はどういうところから生じるのかとか、考えざるを得なくなるように思うんです。ドストエフスキーはこういった物語を記しながら、加害者の心理に(我々読者よりも)もっとより深く分け入ったように思えました。
 
 
そこにヒロインのナスターシャが現れるんですけど、これがとんでもない。よく、アニメとかマンガは、破天荒だというイメージがあって、近代文学は落ちついているという印象なんですけど、こんな現れ方は……映画でも漫画でも、とにかく見たことが無いなという、荒々しい登場シーンなんです。
 
 
ちなみにwikipediaではヒロインのことをこう紹介しています。
 
ナスターシヤ・フィリッポヴナ・バラシコーワ (ナスターシャ)
悲劇のヒロイン。美貌の女(ひと)。借金まみれだった退役士官の父が領土焼失し、孤児になったところをトーツキイに拾われ愛人となる。時に威圧的、時に自虐的な2面性を持つ。
 
ヒロインのナスターシヤは、初対面の主人公にたいして、出会い頭で突如悪態をついて押しのけてしまう。主人公とかヒロインとかいう言葉では言いあらわせない2人なんです。嵐の最中のあばら屋みたいな荒れようだ、と思いました。次回に続きます。
 
 

 
 
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 幼かった頃の夢想のことを、ゲーテは「黄金の空想よ」と記します。ゲーテの詩には、神話的なものと理知的なものが混在していて、これが魅力のように思います。ゲーテはゲルマン神話と、とくにギリシャ神話の影響が色濃いようです。
 この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。

  
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