

今日は夏目漱石の「彼岸過迄(3)風呂の後(後編)」を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
先輩森本の北海道で野営しつつ測量の仕事をした、という物語がはじまります。伝聞の伝聞の伝聞みたいなハナシになって来たんですけど、漱石は実体験の無い、北海道の野宿生活のことを記しています。こういう又聞きの又聞きみたいな挿話は、漱石はわざと意識してやってるんじゃなかろうかと思います。友だちの友だちのハナシが怪しすぎておもろい、というのは実人生でも良くあることのように思えます。じつに曖昧模糊とした冒険譚で、暖簾に腕押しをするようなアドベンチャーが記されているんです。本文こうです。
朝起きて見ると、蝮蛇がとぐろを巻いて日光を鱗の上に受けている。それを遠くから棒で抑えておいて、傍へ寄って打ち殺して肉を焼いて食うのだと彼は話した。敬太郎がどんな味がすると聞くと、森本はよく思い出せないが、何でも魚肉と獣肉の間ぐらいだろうと答えた。
「谷川へ下りて、何とかいう川魚を掬って帰った」と書いていたりして「何とかいう魚」って、なんなんでしょうか。輪郭のぼやけた文章がなんだか乙なんです。他にも「やくざ」のことを「不中用」と中国語で書いたりして、このひょうひょうとした文体は、漱石の初期作品が甦っているような感じだなと思いました。
先輩森本は、ある日とつぜん、冒険譚の話の途上であるにも関わらず、急に行方不明になって、音信不通になってしまう。しばらくして、失踪した先輩森本から、手紙がとどくんです。これが……彼は中国は長春の賭博場で今働いていて、日本にはしばらく帰らないから元居た部屋のモノはぜんぶ売り払って欲しいのだという。手紙の結びに、簡潔にさよなら、と書いている。これが妙に記憶に残るんです。
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(約50頁 / ロード時間約30秒)
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ここからは新サイトの「ゲーテ詩集」を紹介します。縦書き表示で読めますよ。
ゲーテは詩心についてこう記します。
わたしがどんなに迷ひ、どんなに努めたか
どんなに悩み、どんなに生きたかは
ここなる花輪の花となる
さうして老境もまた青春も
徳も不徳も集めて見れば
また捨てがたい歌となる
(総ページ数/約10頁 ロード時間/約10秒)
『ゲーテ詩集』全文を読むにはこちらをクリックしてください
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