白痴(7) ドストエフスキー

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今日はフョードル・ドストエフスキーの「白痴」その7を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 

ムイシュキン公爵は、初対面のあいての人格を突如言い当ててしまうという奇妙な力を持っている。ちょっと占い師みたいに、極端に飛躍した直感的な思索が繰り広げられるんですよ。
 

彼は何事かを思い起こしたように、ふと立ち止まって、あたりを見回し、窓の光のさすほうへなるべく近く寄り添って、ナスターシャ・フィリッポヴナの写真を見つめ始めた。
 
ここから先の、ヒロインの表情や美に関する公爵ムイシュキンの考察がすてきなんです。ナスターシャの顔は女性から見ても、驚かれるほど美しい。「こういう美しさは力ですわ」「こんな美しさをもっていたら、世界をひっくりかえすこともできるんだわ!」と熱心にアデライーダが述べるんです。
 
 
それから人びとはさまざまな話しを続けてゆく。この物語「白痴」の主人公ムイシュキンと一緒に、知らない事情を垣間見てゆくわけなんですけど、ちょっと初見では、よく判らないわけです。これが上手い仕組みになっているように思えて、異邦人というか通りすがりのような存在であるムイシュキンの聖性というか闖入者としての存在感というか、そういう性質が、この物語をのぞき見ている読者にも同時に付与されているように思うんです。
 
 
ドストエフスキーは、題名どおりに「白痴」の魅力を書き記していて、「罪と罰」では知を突き詰めた犯罪者の心理を垣間見ていったわけですが……今回は聖性を伴う愚が描かれてゆく。ドストエフスキーのカメラワークと人物配置が、読者を未体験の感覚にいざなってゆくんです。
 
 
あと、小説には良くある「お使い」の場面がある。これはしかし、どういうことなんだかちょっと、唐突すぎてよくわかんない。
 
「ガヴリーラ・アルダリオノヴィッチさんが、これをあなたに渡してくれとのお頼みでした」と、公爵は書面を渡しながら言った。
 アグラーヤは立ち止まって書面を受け取ると、なんとなく不思議そうに公爵を見た。
 
ガーニャから届いた手紙を、アグラーヤは他人にあえて見せるんです。そうしてアグラーヤは、ガーニャの抱く不信感について鋭く批判します。
 
ずうずうしくあのひとが嘘をついてるんです。わたしはたった一度、可哀そうだって言っただけなんですからね。それを、あつかましい恥知らずなもんですから、すぐに当てにしてもいいような気になったのですね
 
じつに不思議なところに公爵は入りこむんです。男女の仲が険しいものになっているところの、真ん中に立たされる。ドストエフスキーは、展開をくり返して重層化するんですけど、今回のガーニャとアグラーヤの諍いは、おそらく他のところで別のカップルでくり返されるんだろうと思われます。
 
 
公爵は不和の中間のところに立ってしまう。なごやかな二人の真ん中に猫がすっと入っているみたいなのの、逆の存在というのか、問題のある危険地帯の中間にぐーっと入って行ってしまう公爵ムイシュキン。
 
 
ガーニャはムイシュキンに対してもものすごい敵対心を抱いて直接悪口を言ってくるのに、なぜかムイシュキンは正直に接してしまう。次回に続きます。
 
 

 
 
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