今日はバルザックの「ゴリオ爺さん」その(12)を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
今から読み終える予定の方は、こちらのリンク先から本文をまるごと読めます。下記の文章は完全にネタバレとなってしまうので、ご注意ください。
ゴリオ爺さんは意識不明に陥る寸前に混乱してしまって、誤ったことを考えてしまう。過去幾度となく父と娘とで愛を確認しあってきたのに、ゴリオ爺さんはそれを事実では無かったのだと考えた。錯乱して恐ろしい言葉を投げかけてしまう。お爺さんは、もはやほとんど見えない目で、娘の幻を見るんです。本文こうです。
……きっと涙に触れて勘違いしたのであろう、ゴリオが彼の最後の力を振り絞ってベッドの両端に向かって手を伸ばし、その手は学生達の頭に出会った。その手は激しく髪の毛をつかんだ、それから微かな声が聞こえた。「ああ! 私の天使!」
おじいさんの物語はここで終わるんです。ただ、この後の描写がすごいんです。意識不明に陥ったゴリオ爺さんのもとに、娘がなんとかたどり着いた。本文はこうです。ヒロインのニュシンゲンの言葉です。
罪を悔いている貴方の娘を祝福するために、ほんの一瞬だけでもこの世に戻って下さい。私の言うことを聞き届けてください。ここにいるのはひどい娘です!
貴方の祝福だけが私がこれからこの世で受けることの出来る唯一の祝福なのです。皆が私を憎むでしょう、貴方だけが私を愛して下さいます。
貴方の手で私を導いて下さい、私は貴方を愛します、私は貴方のお世話をします。彼にはもう聞こえないのに……………
ゴリオ爺さんはその言葉を聞くことが出来たのか……詳しくは本文をご覧ください。
このあと誰一人として遺体を引き取りには来なかった。主人公の学生ウージェーヌ・ラスチニャックは、娘たちや親戚に、葬儀の手配をするように願い入れるのですが、なぜかどうしても連絡がとれなくなってしまった。ウージェーヌ・ラスチニャックは、手持ちの金全てを使いはたして、血の繋がりの無いたった二人のご近所さんだけで小さな葬儀を執り行った。ウージェーヌ・ラスチニャックはお爺さんの埋葬を終えて、一人きりになる。本文こうです。
二人の墓堀人は土くれを何回か棺にかけて覆うと、体を起こし二人ともラスチニャックの方に向き直った。そして彼にチップを要求した。ウージェーヌはポケットの中を探し回ったが、一銭もなかったので、彼は仕方なくクリストフから二〇スーを借りた。そのこと自体は些細なことだったが、ラスチニャックの中で恐ろしいほどの悲しみの発作が突き上げてきたのだった。
彼は日没を眺め、若者としての最後の涙もその場に埋葬したのだった。
この涙の一滴は地上に落ちた後、跳ね上がって天空にまで届いた。彼は腕組みをして、じっと雲を見つめた、そしてそのまま眺め続けていた。クリストフは去っていった。ラスチニャックは一人残って、墓地の高みに向かって少し歩いた。それから、セーヌ川の両岸に沿って曲がりくねって横たわるパリを眺めた。
結びは、明るく記されているんです。ヒロインとラスチニャックが、それからどうなるのかは、明記されていない。ただ主人公ラスチニャックには、強い思いがある。それまでの彼の行動と結果から予測すれば、良い未来にたどり着けるだろう、と想起させるものでした。
残念ながら無料で読めるバルザックはこれで全てです。バルザックの饒舌な言葉を、もっと読んでゆきたい、と思いました。
以下の「シンプル表示の縦書きテキスト」をご利用ください。(縦書きブラウザの使い方はこちら)
https://akarinohon.com/migration/goriot_jisan12.html
(約100頁 / ロード時間約30秒)
★シンプル表示の縦書きテキストはこちら
(横書きはこっち)
■主要登場人物
・ゴリオじいさん………娘たちを愛するあまり破産した。
・ウージェーヌ・ラスチニャック………うぶで野心家の学生。
・レストー夫人………ウージェーヌが一目惚れした美女で、ゴリオじいさんの実の娘。
・デルフィーヌ・ド・ニュシンゲン夫人………銀行家の妻で、ゴリオじいさんのもう一人の娘。ラスチニャックと恋愛。
・ボーセアン夫人………ウージェーヌの遠い親戚のお金持ち。
・ヴォートラン………謎のお尋ね者。
(作中[1][2][3]などの数字表記があります。その箇所を解説した訳註はこちらをご覧ください。)
全文通読はこちら(12回で完結です)
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明かりの本 新サイトURL
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appleのmacやタブレットやスマートフォンなど、これまで縦書き表示がむずかしかった端末でも、ほぼ99%縦書き表示に対応し、よみやすいページ構成を実現しました。ぜひ新しいサイトで読書をお楽しみください。
ここからは新サイトの「ゲーテ詩集」を紹介します。縦書き表示で読めますよ。
幼かった頃の夢想のことを、ゲーテは「黄金の空想よ」と記します。ゲーテの詩には、神話的なものと理知的なものが混在していて、これが魅力のように思います。ゲーテはゲルマン神話と、とくにギリシャ神話の影響が色濃いようです。
この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。
(総ページ数/約10頁 ロード時間/約10秒)
『ゲーテ詩集』全文を読むにはこちらをクリックしてください
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