今日はフョードル・ドストエフスキーの「白痴」その2を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
ロシアのイメージというと、なんとなく冷戦時代のアメリカ映画が造り上げた、仮想敵国としての厳格な雰囲気、というのがあるんですけど、ドストエフスキーはまったく異なるロシアのペテルブルクを描きますよ。時代も違うんですが……ドストエフスキーは、エパンチン将軍を紹介するのにこう書いています。
彼は自分の頭の中に専制的な気持をもった人間としてよりは、むしろ他人の理想を実行する者「お世辞なしに他人に従順な」、あまつさえロシア人らしく人なつこい人間という風にさえも自分を見せかけるのが好きであった。
ドストエフスキーによれば、典型的なロシア人って、人なつっこい人なんですねえ。
現代ロシアにも通底していることが書いてあって「ロシアには、死刑ってものがない」と記されている。と言っても作者のドストエフスキーは死刑宣告を受けたことがあるんですけど……。
ドストエフスキーが生きたのは1821年から1881年。調べてみると、ドストエフスキーが生まれる70年くらい前に女帝エリザヴェータが死刑を禁止(1744年)してこれで20年間死刑が執行されなかった。ところがドストエフスキーの生きているころは暗殺や死刑がおおくって、彼の死後1910年ごろや1920年ごろには死刑執行が激増し、1940年前後のスターリン時代がもっともひどかったそうです……。で、現代ロシアでは死刑が禁止されている。ドストエフスキーは死刑のことについて、こんかい作中でこう書いています。
死刑たるや魂の凌辱にほかならない、ただそれだけだ。『殺すべからず』と聖書には書かれています。それだのに、人が人を殺したからといって、その人を殺してもいいものでしょうか? 断じて、そんな法はない。僕は死刑の場を見てから一か月になるけれど、いまだにまざまざと眼に見えるようです。もう五度も夢みたほどです
それから「宣告文を読んで人を殺すのは、強盗が人を殺すことよりも、もっと、比べものにもならないほど恐ろしいことです。」とムイシュキンに言わせているんですけれども、ロシアのドストエフスキー後の歴史をちょっと調べてみると、この文学の射程がとても長い……100年以上読者を魅了しつづける文学の魅力を感じました。
あとギロチンの話題などがありました。wikipediaと同時に読んでいると、なんだかすごい人類の歴史を学んだ……ような気分になりました。ムイシュキンは死刑にされる者の苦しさについて、ついに「キリストもいっています」とさえ言ってしまう。このあたりの饒舌は、聖なる愚者という気配があって迫力がありました。
物語はこう進展します。「将軍の三人の娘たち」は「三人が三人とも美人」で「娘たちについては賞讃すべきことが、数かぎりもなく伝えられている」……ドストエフスキーは、ベタなところも深いところも、両面を備えているのが特徴で、主人公ムイシュキンは、こういった家族のところに「お近づきになろうと思って」やって来る。主人公ムイシュキンとエパンチン将軍夫人は、とおい親戚なんです。
ムイシュキンは、初対面でもしょうじきにいろいろ話してしまう男で、「おめでたい人」だと思われてしまったり、かなり好かれつつイライラさせもする性格をしている。ムイシュキンは、エパンチン将軍にはじめて面会することになった。次回に続きます。
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幼かった頃の夢想のことを、ゲーテは「黄金の空想よ」と記します。ゲーテの詩には、神話的なものと理知的なものが混在していて、これが魅力のように思います。ゲーテはゲルマン神話と、とくにギリシャ神話の影響が色濃いようです。
この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。
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