ゴリオ爺さん(11) バルザック

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今日はバルザックの「ゴリオ爺さん」その(11)を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
ゴリオ爺さんは、次回で完結です。おじいさんは、終幕の寸前まで、彼の仕事をつづけようとしていた。娘たちのために、金を工面することに心を砕いている。ベッドの中にあっても、さいごまで金を作ることを考え続けている。どこまでも父の仕事をしようと思っている。娘に富をもたらしてやることが、彼にとっての人生最高の仕事で、それは終幕が近いことを悟ったあとであっても、変わらなかった。
 
 
娘へ尽くすことを、ゴリオ爺さんはさいごまでやり通そうとしながら、もはやベットから一歩も歩き出せぬ状態にある。その最中で、彼はかつてやっていた仕事をもう一度はじめることを夢想している。
 
 
父が危篤であることを知らぬ娘は、看病をしている恋人にこんな手紙をよこした。
 
 
  〈貴方は一体何をなさってるの? ほとんど愛されることもなく、私はもう飽きられてしまったの? 貴方はこの心から心へ溢れ出した打ち明け話の中で、感情には如何に多くの微妙な違いがあるかを見知った時、いつでも忠実であり続ける人間でいるには余りにも綺麗過ぎるその魂を、まだこの私にお示しくださいませんのね。…………
 
 
ヒロインのデルフィーヌ・ド・ニュシンゲン夫人と、主人公ウージェーヌ・ラスチニャックは、ボーセアン夫人の舞踏会という大舞台に、きっとゆくという約束をしていたのですが、ここでゴリオ爺さんが倒れてしまって、どうにもならなくなっている。デルフィーヌは状況が判らぬまま、主人公に手紙でこう告げている。
 
 
  もし二時間以内に貴方が私の傍へいらっしゃらないなら、私は貴方の裏切りを許せないでしょう。
 
 
不倫の泥沼。家族の不幸。富の乱高下。と次々と崖の崩れるような異変が起きている。本文こうです。
 
 
  ウージェーヌはビアンションが見守る中でゴリオ爺さんと内密の話をした。それから悲しい報せを持って、ニュシンゲン夫人に知らせるべく下宿を出た。その時の彼の心は家族としての義務感がしみ込んでいたので、この報せで楽しみなどは総て中止されるものと思っていた。
「ねえ、彼女にはいつも通り楽しんでくるように言ってくださいよ」ラスチニャックが出てゆく時、それまでうとうとしているように見えたゴリオ爺さんが起き上がって坐った姿勢で彼に向かって叫んだ。
 
 
おじいさんの遺言は、こんな願いになるかもしれない。「ねえ、彼女にはいつも通り楽しんでくるように言ってくださいよ」
 
 
ヒロインは、ちょうどシンデレラと逆さの状況になっている。輝かしい舞踏会への唯一の機会があって、恋人とともに出かける寸前に、その夢が破れ去ろうとしている。父が危篤であるということを知らされるんです。ところが彼女は、父のことはもう放っておいて、ダンスに出かけようと言うんです。
 
 
ラスチニャックは社交界における絶望がどういうものかを、そこでまのあたりにするので、ありました。本文は、こうです。
 
 
  彼はまるで汚泥の海のような社交界を目の当たりにした。そこに足を踏み入れたとたんに、人は皆そこで首まで浸かってしまうだろう。「卑しい犯罪の他に何があるんだ!」彼は思った。「ヴォートランの方がよほど立派だ」
 
 
だが彼はもう、そんなことを口に出して言わないし、利己主義の大切さを学んでしまっていた。これ、物語の終幕寸前とは思えない、めくるめく展開でした。舞踏会には、あらゆるシンデレラたちがあつまってそれぞれに自分たちの最後のダンスとパーティーを楽しんでいるかのような、情景なんです。
 
 
バルザックはこの物語で一言も、十数年前に起きたフランス革命でなくなっていった人々への追悼の辞は述べていないんです。ただ、そういう倫理性が物語の内側からどうしたって滲み出してくる。バルザックは革命の最後の年に生まれていて、ちょうど父がその時代を生きたことになる。正確には、バルザックは革命後の自由な競争社会における悲劇や混乱を描きだしている。近代文明の発展と共に生きた人びとや、工業化後の社会の混沌を描きだしているんです。
 
 
青年ウージェーヌ・ラスチニャックは、彼女をけんめいに説得して、病床にある父の枕元に行くように願うのでした。
 
 

 
 
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(約100頁 / ロード時間約30秒)
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■主要登場人物
・ゴリオじいさん………娘たちを愛するあまり破産した。
・ウージェーヌ・ラスチニャック………うぶで野心家の学生。
・レストー夫人………ウージェーヌが一目惚れした美女で、ゴリオじいさんの実の娘。
・デルフィーヌ・ド・ニュシンゲン夫人………銀行家の妻で、ゴリオじいさんのもう一人の娘。ラスチニャックと恋愛。
・ボーセアン夫人………ウージェーヌの遠い親戚のお金持ち。
・ヴォートラン………謎のお尋ね者。
 
 
(作中[1][2][3]などの数字表記があります。その箇所を解説した訳註はこちらをご覧ください。)







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 この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。

  

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