今日は夏目漱石の『門』その17を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
漱石文学の最大の特徴は、第一文目がほんとうにすごいなと、ゲーテにもドストエフスキーにも無い特徴は、第一文目の秀逸さのように思えてきました。第17章目のはじまりがまた鮮やかなんです。こういう文章です。
宗助と御米の一生を暗く彩どった関係は、二人の影を薄くして、幽霊のような思をどこかに抱かしめた。彼らは自己の心のある部分に、人に見えない結核性の恐ろしいものが潜んでいるのを、仄かに自覚しながら、わざと知らぬ顔に互と向き合って年を過した。
この、書き出しに迫力のある文体は、おそらく新聞連載というのを漱石が定石化したからなんだと予想します。100年前の新聞に小説を載せるには、やはり見出しのような第一文目が小説の要所になるんだろうなと思いました。漱石が現代小説のはじまりを作った、とよく言われるんですが、たしかにそうだなと、読んでいて思います。自分の場合は、すごいなあと思って、それで終わっちゃうわけなんですけど、ここからいろんな現代小説の進化が始まったんだろうなあーと思いました。
宗助夫婦は、裏切ってしまった旧友の消息をずっと気にしていた。旧友が順調に生きていると聞くと、ホッと胸をなでおろしてきた。彼ははるか彼方の満洲で、盛んに働いているらしかった。ところが、宗助は旧友が、とつぜん隣人宅を訪れることになったことを知り、恐れおののいてしまった。
宗助にとっては、旧友はまるで過失致傷事件における被害者のような存在で、親友でもあったが、害を与えてしまった相手でもある。宗助はすっかり気が動転してしまい、気晴らしに見にいった寄席さえも、まるで上の空になってしまって、ぼう然とし続けている……。この2つの文章が印象に残りました。
坂井が一昨日の晩、自分の弟を評して、一口に「冒険者」と云った、その音が今宗助の耳に高く響き渡った。宗助はこの一語の中に、あらゆる自暴と自棄と、不平と憎悪と、乱倫と悖徳と、盲断と決行とを想像して、これらの一角に触れなければならないほど………
…………
夜は戸ごとの瓦斯と電灯を閑却して、依然として暗く大きく見えた。宗助はこの世界と調和するほどな黒味の勝った外套に包まれて歩いた。その時彼は自分の呼吸する空気さえ灰色になって、肺の中の血管に触れるような気がした。
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ここからは新サイトの「ゲーテ詩集」を紹介します。縦書き表示で読めますよ。
幼かった頃の夢想のことを、ゲーテは「黄金の空想よ」と記します。ゲーテの詩には、神話的なものと理知的なものが混在していて、これが魅力のように思います。ゲーテはゲルマン神話と、とくにギリシャ神話の影響が色濃いようです。
この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。
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