今日は夏目漱石の「それから」その5を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
代助は、平岡の夫婦を助けようと思って、金を工面しようとするんですよ。ところが、働いていないから金が無い。それでいつも親しい兄に、金を用立ててくれないかと、頼みに行った。すると、兄はそういうことは止めておいて、静観していなさい、と言った。このやりとりは、なかなか興味深いものでした。
あの、上田敏が『海潮音』という詩集で、いちばんはじめにとりあげた詩人ガブリエーレ・ダンヌンツィオのことを、漱石も書いているんです。このダンヌンツィオというのがやばい男で、wikipediaによると、イタリアのファシズムの先駆者だった……そうなんです。
歴史的にはそういう位置づけとなったので、大戦後には彼の詩や小説も、ほとんど読まれなくなった、ということらしいんです。しかし、100年前にはずいぶんすごい人気だったらしく、上田敏、漱石の弟子の森田草平などがこのダンヌンツィオに心酔していたことが明らかなわけです。
漱石は、戦争が嫌いなもんだから、そのダンヌンツィオへの心酔に疑問を投げかけているのであります。代助は、こういうことを考えます。原文はこうです。
……不図ダヌンチオと云ふ人が、自分の家の部屋を、青色と赤色に分つて装飾してゐると云ふ話を思ひ出した。ダヌンチオの主意は、生活の二大情調の発現は、此二色に外ならんと云ふ点に存するらしい。だから何でも興奮を要する部屋、即ち音楽室とか書斎とか云ふものは、成るべく赤く塗り立てる。
代助は何故ダヌンチオの様な刺激を受け易い人に、奮興色とも見傚し得べき程強烈な赤の必要があるだらうと不思議に感じた。代助自身は稲荷の鳥居を見ても余り好い心持はしない。出来得るならば、自分の頭丈でも可いから、緑のなかに漂はして安らかに眠りたい位である。
どうも、ダヌンチオという男は、ブレーキをかけるべきところで無理にアクセルを踏み込んでいるようである。
漱石が現代の状況を見ていたら、どういう疑問を呈したか、ほんとに聞いてみたいなあと思いました。
平岡夫婦は、主人公の住んでいる家の、すぐそばのところに引っ越してきた。どうなるんですかねえ、これ……。三角関係なのにこんなに近くでこう、漱石の「こころ」の友人なんてもう、主人公とふすま一枚しかへだたってない。すっごい近いんです。近い近い。すぐ側で男女3人が密接していたんですよ。
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ここからは新サイトの「ゲーテ詩集」を紹介します。縦書き表示で読めますよ。
幼かった頃の夢想のことを、ゲーテは「黄金の空想よ」と記します。ゲーテの詩には、神話的なものと理知的なものが混在していて、これが魅力のように思います。ゲーテはゲルマン神話と、とくにギリシャ神話の影響が色濃いようです。
この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。
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