門(15) 夏目漱石

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今日は夏目漱石の『門』その15を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
宗助夫婦は、正月の準備をしている。
 
 
第15章の冒頭100文字くらいがすごい良いんですよ。親戚との付きあいの、果てしない気まずさというのを漱石が描きだしているんですけど、これあの、じっさいの漱石の幼年時代がだいぶこう、反映されているように感じました。
 
 
漱石の、冷えきった人間関係の描写を読んでいて、いったいなんの理由でこの本を読むのが心地良いのか、ちょっと考えていたんですけど、まず漱石はひじょうに知的で自分より賢い。尊敬している人が、自分も経験したことのある冷えた親戚関係について吐露するように文章を書いていると、「ああー、こういうすぐれた人でも、自分が陥っているような難儀にこう、直面するもんなんだなあー」と共感するもんで、それで暗い描写も、すっと気持ちよく読めるんではないだろうかと思いました。ちょっと良くわからんのですが。あるいは作者の平熱の文体や、登場人物の余裕のある態度に、説得力をかんじて物語に引き込まれるのかもしれないです。
 
 
いろいろ難儀について書いてるわけなんですけど、そのあとにスッと、こういう文章を書くんです。「夫婦は日の前に笑み、月の前に考えて、静かな年を送り迎えた」漱石の原文はこうです。第15章の冒頭部分です。
 
 
  この過去を負わされた二人は、広島へ行っても苦しんだ。福岡へ行っても苦しんだ。東京へ出て来ても、依然として重い荷におさえつけられていた。佐伯さえきの家とは親しい関係が結べなくなった。叔父は死んだ。叔母と安之助やすのすけはまだ生きているが、生きている間に打ち解けた交際つきあいはできないほど、もう冷淡の日を重ねてしまった。今年はまだ歳暮にも行かなかった。むこうからも来なかった。いえに引取った小六ころくさえ腹の底では兄に敬意を払っていなかった。二人が東京へ出たてには、単純な小供の頭から、正直に御米およねにくんでいた。御米にも宗助そうすけにもそれがよく分っていた。夫婦は日の前に笑み、月の前に考えて、静かな年を送り迎えた。今年ももう尽きる間際まぎわまで来た。
 
 
冷えきった人間関係でも、彼らはそれぞれに他者への配慮があって、静かに新年を迎えている。15章の後半の、なんでもない描写にしびれました。
 
 

 
 
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