ゴリオ爺さん(4) バルザック

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今日はバルザックの「ゴリオ爺さん」その(4)を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
家族に内情をまったく明かさないまま、貧乏学生ウージェーヌ・ラスチニャックは、母親から大金をもらい受けてしまった。これは……マジでやばいだろうと思うんですけど、ウージェーヌ・ラスチニャックは、自分の行動は正しいと思っている。はたから見ると、それは無謀な挑戦にしか見えない。彼はその資金(現代でいうと150万円〜500万円くらいだと思います)でもって、華々しく社交界にデビューしようという魂胆なんです。母親は、まさか社交界にデビューしたいなんて思ってないでしょうねという手紙を送ってきているのに、です。
 
 
この小説を全文は読まないけど、ちょっと知ってみたいというかたは、ぜひこの第4回目の「ゴリオ爺さん 第二章」冒頭を数ページだけ読んでみてください。ウージェーヌ・ラスチニャックがいかに軽率な若者か、よくよく判ると思います。昔こういう友だち、居たなあー、うわあーと思いながら読んでいました。
 
 
母親が大切にしていた宝石を売り払い苦労して作りだしたお金を送金してもらっておきながら、ウージェーヌ・ラスチニャックは、金さえあればやりたい放題だと思い込んでいる。もう、日本語訳の微妙なズレとあいまって、文章からして、おっかしいんですよ。本文こうです。
 
 
  ……彼は以前よりしっかり歩ける。何をやるにもしっかりした根拠を感じ取れた。…………前日までの卑下して臆病だった彼なら虐めを受けていただろう。一夜明ければ、彼は相手が首相であろうと一撃を与えかねない存在となった。彼の中に途轍もない現象が起こったのだ。彼の望みは何でもかない、彼はでたらめに欲し、彼は陽気で気前がよく開放的だ。つい最近まで翼がなかったこの鳥はついに完全な翼を身につけたのだった。この学生はそれまでは金がなかったので、わずかばかりの楽しみをしゃぶることしか出来なかった…………
 
 
「翼がなかった鳥」に翼が生えるなんて、ムチャクチャですよ。金さえあれば、なんでもかんでも全部できると思い込んでいる。また、こうも書いています。
 
 
  パリは完全に彼の手の内に入った。何もかもが輝き、きらめき燃え上がる人生の一時期! 
 
 
すこぶる間抜けな男……というような描写が続きます。本文、こうなんです。
 
 
  「あー! パリの女達がここに僕がいるのを知っていればなあ!」ラスチニャックはヴォーケ夫人が出してくれる一個一リアルの焼き梨をほおばりながら思った。「今頃は彼女達が僕を愛してくれてるはずなんだが」……
 
 
何を言っているんだと思うんですが、お金の魔力を見事に言い表しているような気がしました。ただ、彼は家族からの愛ある助力に、心から喜んでいるんだろうなあと、思えるわけで、このなんというか、ユーモアからヒューマニズムに転化するようなバルザックの文体に魅了されました。
 
 
大金を手に入れた途端に、謎の人物ヴォートランが鋭く切りこんでくるのが圧巻でした。本文にはヴォートランは「肩に前科の焼印を押されてい」て、「ライオンのように血気盛んで」「糞ったれの地獄」に住んでいる男だと記されているんです。ヴォートランは海賊まがいの人生を歩むことを勧め、こう語ります。
 
 
  「いいか、よく聞くんだ! 不幸せで惨めな哀れな娘の心はそこを愛で満たすことに飢え切ったスポンジのようなものなんだ。乾き切ったスポンジは僅かな感情をそこに落とすだけで、すぐさま膨れ上がるのさ。孤独と絶望に沈んでいる若い女に言い寄るんだ、しかもその娘はいかにも貧しげなんだが、やがて財産が手に入ることに気付いていない! 馬鹿なこった! それはストレート・フラッシュを手の内に持ってるってこと、宝くじの当たり番号を知ってるってこと、インサイダー情報を知っていて株に投機するってことだ。あんたは基礎杭の上に壊れようもない結婚を打ち立てるんだ。……」
 
 
ヴォートランは、同じマンションの住人であるヴィクトリーヌ嬢と恋愛をするように、学生ウージェーヌ・ラスチニャックにしきりに勧めるので、ありました。
 
 

 
 
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■主要登場人物
・ゴリオじいさん………娘たちを愛するあまり破産した。
・ウージェーヌ・ラスチニャック………うぶで野心家の学生。
・レストー夫人………ウージェーヌが一目惚れした美女で、ゴリオじいさんの実の娘。
・デルフィーヌ………銀行家の妻で、ゴリオじいさんのもう一人の娘。
・ボーセアン夫人………ウージェーヌの遠い親戚のお金持ち。
・ヴォートラン………謎のお尋ね者。
・ヴィクトリーヌ・タイユフェール嬢………主人公たちとおなじマンションに住む、かつて孤児だった悲しげな目の美少女。母は亡くなり、父とずっと会えぬまま生きてきた。
 
 
(作中[1][2][3]などの数字表記があります。その箇所を解説した訳註はこちらをご覧ください。)







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 ここからは新サイトの「ゲーテ詩集」を紹介します。縦書き表示で読めますよ。
 幼かった頃の夢想のことを、ゲーテは「黄金の空想よ」と記します。ゲーテの詩には、神話的なものと理知的なものが混在していて、これが魅力のように思います。ゲーテはゲルマン神話と、とくにギリシャ神話の影響が色濃いようです。
 この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。

  

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