与謝野晶子詩歌集(31)

今日は「与謝野晶子詩歌集」その31を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 

なにとなく君に待たるるここちして出でし花野の夕月夜かな

……というすてきな歌をよんでいて思ったんですけど、人生を確実に歩めた人はこう、空想がそのまま将来の現実にうまく繋がっていっている、ように見えます。ダメ人間が恋の歌を歌うと、ただのストーカーだと思われてしまう。心の内部の部分では、おそらく与謝野晶子のように美しくてウキウキするような世界がたいてい広がっていると思うんです。でも現実には上手くいかないから、内面もダメであぶない人なんだと誤認されてしまう。文学は作者の思いを読むこともできるわけで、その機能についてなんだか考えていました。「だやさしきは明日あすの時」という一文が印象的な詩も美しかったです。
 
 
むつかしい言葉を調べてみました
 
 
おばしま



 
 
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 幼かった頃の夢想のことを、ゲーテは「黄金の空想よ」と記します。ゲーテの詩には、神話的なものと理知的なものが混在していて、これが魅力のように思います。ゲーテはゲルマン神話と、とくにギリシャ神話の影響が色濃いようです。
 この詩集は生田春月が翻訳をした作品です。ゲーテは政治家としても活躍し、かのナポレオンからも尊敬されていた作家で、その言葉を詩で楽しめるというのは、なんだか嬉しいように思います。

  
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自信のあるなし 宮本百合子

今日は宮本百合子の「自信のあるなし」を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
近代文学の魅力のうちのひとつに、掌編のエッセーがいっぱい読める、というのがあると思うんです。これは紙の本や新聞が日本中に普及し始めた時期ならではの、あたたかさと熱量と新しさがあったからだと思います。新聞が日本で普及しはじめたのは明治の文明開化ごろだそうですけど、それ以前には日本中に文章を普及させることなんてムリだったし、紫式部や鴨長明やあるいは漱石のように、パイオニアにしか作品を他者に送れなかった。現代で言うと10年前にSNSが登場してきた頃の楽しさみたいなものが、近代のエッセーにはあるんじゃないかと思います。
 
 
これはほんの2ページほどの随筆で、宮本百合子の教え諭すようなところと、鼓舞するような発言が興味深かったです。十五年戦争の不安な世相も伝播してくるんですけど、自信があるかないかを考える時に……
 

行為の動機の誠実さに自分の心のよりどころを置く
 
という言葉が印象に残りました。
 
 

 
 
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白痴(39) ドストエフスキー

今日はフョードル・ドストエフスキーの「白痴」その39を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
今回から最終章なんです。あと11回で完結します。ドストエフスキーが今回言及しているゴーゴリの『結婚』というのはこの本です。
  
 
ドストエフスキーは……ごく普通で、平凡すぎる人を、物語に登場させないというのが、小説空間から「真実らしさを失うことになる」し「奇怪な、架空の人物のみによって満たすのは嘘らしくもなり、しかもおそらくは、おもしろくもなくなるであろう」と作中で言及しはじめるんですけど、僕が読んだ範囲では、ドストエフスキーの登場人物はみんな奇怪きわまりないと思います。
 
 
とくにぼくはガーニャという男が異常なんだ、この異常さはちょっとえげつないと思ってたんですけど、作家ドストエフスキーはなんと、ガーニャが普通で平凡すぎて魅力の無い男なんだと明記してるんですよ。ウソでしょと思いました。wikipediaの人物評にも、ガーニャのことを『イヴォルギン将軍の長男。エパンチン家の秘書。腹黒く欲張りで、癇癪持ちの羨望家。7万5000ルーブルを手にするためナスターシャと政略結婚をしようとしている』って書いてるんですよ。本文には、もっとひどいことを書いていたり、意外と男らしいところがあってかっこ良かったりして、おもしろい男なんですよ。
 
 
おそらくドストエフスキーの人生では、完全に破綻した男(死刑囚や賭博負債者)というのが近くにほんとうに居たんだろう、と思いました。ガーニャや美女アグラーヤというのは、いつの時代にも居る、なんというか自滅しないで生きていける人間だとは思うんですよ。だから友人にガーニャそっくりなところを見出すことはありえると思うんです。
 
 
主人公ムイシュキンや暴漢ロゴージンや、ヒロインのナスターシャは、どうやっても普通には生きられないところがある。そういう点でオリジナルな人間性がある。ドストエフスキーは今回、最終章の冒頭なのに作者として登場して一人語りをしているんですけど、破綻していない普通の人間への批判として、彼らは「偏狭」である、ということを言ってるんです。ハッとしました。平凡な人のうちですてきな人には聡明さがあって幸福を掴みうるけれども、いっぽうで偏狭な人は、自分では持っていない非凡さや独創的人間性を発露しようとして、よりいっそう思想の無い偏狭な、ニヒリストの人生になってしまう。うわー、辛辣な指摘だと思いました。ドストエフスキーみたいな独創的な創作を出来るわけが無い自分たちとしては正論すぎて反論できない。ドストエフスキーによる無思想な人への批判はこうなんです。
 

心の中に何か人類共通の善良な気持を、ほんの露ほどでも感ずれば、社会発展の先頭に立っているという感じは自分以外の人にはわかるまいと、すぐに思い込んでしまう。また、何かの思想をほんのちょっとでも聞きかじるとか、何かの本の一ページでもほんのちょっとめくって見るとかすれば、もうこれは『自分自身の思想』であって、まぎれもなく、自分自身の頭の中に生まれたのだとさっそく、信じてしまう。
 
こういうことを思うことはたしかにあるよなあと、恥ずかしく思いました……。ゴーゴリもこういう男のことを描いているんだと、ドストエフスキーは述べます。ガーニャは「偏狭でニヒリストな普通人」というよりかはもっと良い「聰明な普通人」なんだそうです。
 
かような人たちは非常に長いあいだ、若いときから相当の年輩に至るまで、時おり、実にばかなまねを続けたりする

長いこと、これからもばかなことをしてゆかなくてはならない自分には才能がないという深刻な、絶ゆることのない自覚と、同時にまた、自分はきわめて独立的な人間なのだと信じようとする押さえがたい要求は、ほとんどまだ少年のころからひどく彼の心を痛めつけていた。
 
ドストエフスキーの述べる平凡で普通な人って、ロシア全土くらい範囲が広いんだなと思いました。壮大すぎてワケが分からないんですけど、ドストエフスキーにとって非凡というのはどういうもんなんだよと思ったら、ダイナマイトを発明するノーベルかアメリカを発見するコロンブスみたいな人だそうです。ガーニャは、地位の高い女性と結婚をして、貧困の人生から抜け出したいと思っている。しかし卑劣なことを実現してまで先に進もうとは思っていない。

アグラーヤが自分のような身分の低い者のところへ来ようなどとは、いまだかつて本気になって考えたこともない
 
ぼくはガーニャが、ナスターシャから押しつけられた不正な金というのをもらった時に、これを苦渋の決断をして受け取らなかったことに感動をしたんですけど、本人はこう思っています。

公爵にこの金を返したことを、あとになって彼は何百ぺんとなしに、後悔した。そのくせ彼はこのことを絶えず誇ってもいたのである。が、あのときペテルブルグに公爵が残っている間の三日間というもの、彼は本当に泣き通し……(略)……彼は職務をすてて、悲哀と憂鬱とに沈むばかりであった。
 
さらには同情してくる公爵を、憎んだりもした。けれどもけっきょくは自分の生き方をちゃんと続けられる。ガーニャには気の強い妹ワーリヤがいるのですが、彼女は家のためにエパンチン家で仕事をしているんですけど、そこで諍いが起きていて、さらに悲しい兄妹ケンカに発展している。妹はどうもほんとにムイシュキン公爵が、エパンチン家の娘と結婚することになりそうだ、という噂を聞く。ガーニャはこう考えている。父は「泥棒で、酔っ払い」で、自分は「乞食」で「妹の亭主は高利貸し」。ワーリヤは、アグラーヤがどうしてムイシュキン公爵と結婚しようとしているのか、そのことをこう読み解いています「あの人は公爵のことで、家じゅうの者を悩ましているだけでも楽しいんです」
 
 
ガーニャは家族や他人への悪態しかつかないし、作者のドストエフスキーから平凡で普通の能力しか持っていない人間だと批判されているし、良いところが無いように思うんですけど、どうも読んでいて共感するんです。彼は破滅しかねないギリギリのところに、辷り落ちかねない。そこでなんとかまっとうに生きていこうとしているように見えます。
 
 
ガーニャの行く末が妙に気になるんです。彼には華々しい成功はたぶんありえない。破滅もしない、地味な人生になりそうなんですけど。なんだか気になります。悪人ほどの行動力や意思はなくって、悪いことばっかり考えている。病者イッポリットに対しても不快な心理を抱いているし、もっとも愛すべき存在のはずの妹にも悪い感情ばかりを吐露している。読んでいて良いこと無しなのに、ぼくはどうもこのガーニャが好きなんです。そのガーニャの居所に、災いを抱えた人々が次々に押しかけてきた。次回に続きます。

 

 
 
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与謝野晶子詩歌集(30)

今日は「与謝野晶子詩歌集」その30を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
与謝野晶子の初期作品や、あるいは樋口一葉の小説を読んでいると古語がむつかしくって、子どものころに漢字が分からなくて意味がいまひとつ理解できなかった頃のことを思いだすんですけど、分からない部分を分からないまま楽しんで、一度きりで終わらないようにしておくのが良いのかもしれない、と思いました。今回の4つの歌はすんなりと理解できるものなんですけど、これだけで美しい長編小説になりそうだと思いました。
 

それから「鳥を追ふとて」という詩もすてきでした。

 
むつかしい言葉を調べてみました。

うしほ





 
 
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白痴(38) ドストエフスキー

今日はフョードル・ドストエフスキーの「白痴」その38を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
今回で第三編というか第三部が完結します。
 
 
三通の手紙を、ムイシュキン公爵は手にしている。ドストエフスキーが時折さしはさむ夢の世界の描写は、シュールレアリスムよりもさらに進んで現代美術的というか幻想的で印象に残ります。静謐な映画でも見ているかのようなんですけど、不思議なことに、ドストエフスキーは風景を描かずに美的な場面を書くんです。絵の無い絵画とでも言えば良いのか、なぜそこに美しさを感じるのか謎だというくらい、情景を描かずに、ただ人のことだけを書くんです。人物を多様に描き分けています。人物画だけでここまでのことが出来るのかと衝撃を受けるんですよ。本文こうです。
 

今、…………一人が眼の前で女になる。また女から小さな、奸智かんちけた、いやらしい一寸法師になる、——すると、……(略)……
 
夢の中のじつに奇妙な人物画が展開し続けます。ドストエフスキーの芸術観はちょうど四季と自然を描写することにその中心がある日本の俳句と、きれいに真逆のところに居るように思うんです。信じがたく長い長文ばかりを描きますし、風景や季節をとにかく無視しようとする。
 
 
それはおそらく、ペテルブルグやシベリアが過酷で偉大で鴻大すぎて、俳句で恋を詠むという日本の感性の真逆の精神が培われたんじゃないかなあーと思いました。シベリアのオムスクで流刑に処されたような人生なわけですし、四季を愛でている場合じゃ無い性格になった気がします。それでドストエフスキーにとっては自然界は、北極点にまで連なる果てしない濃霧みたいなもので、人間だけしか目に見えてこない。前後不覚で、環境が目に入ってこないんですよ。自然界が見えないのだ、というのが物語のはしばしになんでもないように記されているんです。たとえば野外を移動しているときも、風景が極端に消えている。本文こうです。
 
…………日の暮れに一人でぶらつきながら(時とすると、自分で自分がどこを歩いているのか、気のつかないことがあった)
 
あるいは「身のまわりのものは何もかも夢ではないかと思われた」と記している。そういう眼差しが、ビル街と快適な地下道に包まれて、天変地異でも来ないかぎり自然界が見えなくなった日本の人間中心的な現代社会と、ちょうど響きあうようになったのではないか、と思います。ドストエフスキーのまなざしの独特さには非常に引き込まれるんです。
 
 
ヒロインのナスターシャが奇妙な手紙をアグラーヤに送った。彼女は悪夢のような空想を訴えている。その悪夢には「痛々しいほどに真実な何ものかが潜んでいた」その手紙の内容が記されていくんですが、それまでの他人を蹴倒して進むようなナスターシャとはかなり異なる、悩める心の内と、奇妙なへりくだりの態度が記されているんです。
 
 
なぜかナスターシャは、アグラーヤに「わたしはあなた様を愛しているのでございます。」と告白する。ドストエフスキーはのべつまくなしに愛を記す作家じゃ無いんですけど、今回この「白痴」の中盤では、この愛の吐露が連発されて、読んでいて惑うんです。いったいこの物語の登場人物にとって愛ってなんなんだろうと思う。ナスターシャは、アグラーヤとムイシュキン公爵が愛で結ばれるべきだと主張している。その上でまだこういうことも手紙に書いている。

あなた様が、わたしを愛してくださるようにさえも思われる

アグラーヤがナスターシャを愛する? レズビアンではないのだし、いったいこの人たちにとって愛ってなんなのかさっぱり判らなくなる。

天使には人を憎むことはできません、また人を愛しないでもいられません。ありとあらゆる人々を、ありとある隣人を愛するということはできますことでしょうか?

敵意を持たない、というのを愛と思ってるんだろうか、と。ここからキリストと幼子の存在について論じられてゆきます。それからナスターシャ自身の美貌や運命について語られるのですが、もはや常軌を逸している。タイトル通り「白痴」の世界なんです。ナスターシャは不吉なことを書きます。

わたしはもうほとんどこの世のものではなく、それをよく承知しているものでございます。

それで、ナスターシャのきわめて強引な提案はこうなんです。

あのかた(※ロゴージン)がわたし(※ナスターシャ)をひどく愛して、そのためにわたしを憎まずにはいられなかったということを、わたしはよく存じております。あなたがた(※アグラーヤとムイシュキン)の御結婚とわたしの結婚はごいっしょに——わたしはあのかたにそうするようにと申しました。(※カッコ内は補足)

天使のような男女の結婚と、悪夢そのものの男女の結婚を、同時に行おうと言うんですよ。読んでいてのけぞりました。悪夢のほうの描写がえげつなくて、叫びたくなるような話しなんです……。芥川や太宰が描こうとした悪夢というのは、ドストエフスキーの見出した悪夢の続きだったのかもなあ、と思いました。


ナスターシャの狂気は、あることを求めている。自分の中に保つことの出来なかった善心を、他人である公爵が持っていることにたいする純粋な悦びがあって、それが保たれることを願っている。

 

 
 
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与謝野晶子詩歌集(29)

今日は「与謝野晶子詩歌集」その29を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 
 
作中に記された荻野綾子というのは、フランスに留学した歌姫です。
 

話は春の雪の沙汰さた
しろい孔雀くじやくのそだてかた、
巴里パリイの夢をもたらした
荻野をぎの綾子あやこの宵のうた
我子わがこがつくる薔薇ばらはた
 

 
 
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自由なる空想 小川未明

今日は小川未明の「自由なる空想」を公開します。縦書き表示で全文読めますよ。
 

小川未明は児童のための文学を数多く描いたんですけど、今回は理論的な随筆を書いています。小川未明は社会主義者だった時期もあって、戦時中は転向せざるを得ず、戦後も生きて作品を作った童話作家なのですが1956年の74歳の時に、
 

雲の如く 高く
くものごとく かがやき
雲のごとく とらわれず

という詩碑を残しています。


未明の童話の美しい文体からはかなりかけ離れた、なんだかギョッとする文章が記されているのですが、すてきな芸術論でした。
 
我々は、常に、思想の自由を有している。空想し、想像することの自由を有している。外的関係が、心までを萎縮するとはかぎらない。

 
 
「笑わない娘」「王さまの感心された話」「赤い蝋燭と人魚」を併せて読んでみました。
 
 

 
 
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